インタビュー
 今、輝いている熊本ゆかりの舞台芸術家の素顔に迫ります。
 
写真(山下 靖喬) 津軽三味線の素晴らしさを世界中にアピールしたい
津軽三味線奏者 山下靖喬(やましたやすたか)
 
  津軽三味線との出会いは、小学校2年生のころです。民謡歌手の母の舞台リハーサルがあり、その伴奏が今の師である福居慶大先生だったんです。初めて福居先生の演奏を聴いたその時、すっかり津軽三味線に魅せられました。独特の力強さだけでなく、繊細さも持ち、聴かせどころが何カ所もあるんです。その時の興奮が冷めず、福居先生への弟子入りを志願し、両親に相談したところ「どうせ、長続きしないから」という反対を押し切り、3カ月後に入門を果たしました。
 5年生のときに、全国津軽三味線コンクールの大阪大会が再開され、初めてチャレンジしました。津軽三味線のコンクールは、コンクール独特の緊張感が漂う中にも、三味線を愛する仲間が全国各地から集まってくるという感じで、とても和気あいあいとしています。先生も「他の出場者をライバルではなく、仲間と思いなさい。そして演奏を楽しんでおいで。」と、送り出してくれました。
 初めて挑戦したコンクールでは思いがけず5位に入賞し、その後も大阪大会で優勝することをひとつの目標にして毎年挑戦し続けました。やればやる程、津軽三味線の奥深さや面白さに惹かれ、もっと上達したいという思いで日々練習を重ねました。津軽三味線の魅力は、表現の幅が大きいところです。長唄や民謡などに使われる三味線は“弾く”といいますが、津軽三味線では“叩く”という奏法も加わります。即興で弾くことが多く、演奏者の個性によって、静かに弾いたり、激しく叩いたり感情移入が自在なので、コンクールでもいろんなテクニックを使って表現の幅を広げることを心がけてきました。昨年のコンクールでは、先生のアドバイスもあって、津軽の厳しい冬景色を感じるような演奏を目指しました。結果、優勝することができて、本当に嬉しかったです。
 将来はプロの演奏家を目指していますが、大好きな津軽三味線の楽しさや魅力が聴いている人に伝わるような演奏をしたいです。そして津軽三味線の素晴らしさを世界中の人にアピールして、ピアノと同じくらいメジャーな楽器にするのが夢です。

プロフィール(山下 靖喬)
平成3年、熊本市生まれ。現在、錦ヶ丘中学校2年。平成11年、民謡歌手の母の勧めで熊本県民謡民舞大会に出場し、少年の部で「牛深ハイヤ節」を唄って優勝。同年、母の舞台で伴奏を務めた熊本在住の福居慶大氏の津軽三味線に強く惹かれて弟子入り。平成14年、全国津軽三味線コンクール大阪大会の少年少女の部で5位となり、翌15年には3位、16年には2位、そして17年には念願の優勝を果たす。今年4月、同コンクール東京大会に出場するために猛練習中。
 
熊本県立劇場広報誌「ほわいえ」Vol.59より

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