平成21年 10月1日 身をほそめとぶ帰燕あり月の空(川端茅舎)
 10月2日 今日の月馬も夜道を好みけり(村上鬼城)
 10月3日 名月や故郷遠き影法師(夏目漱石)
 10月4日 十六夜もまだ更科の郡かな(松尾芭蕉) 
 10月5日 大寺の木木の深さや小鳥来る(鈴木泰子)
 10月6日 ほろほろとぬかごこぼるゝ垣根哉(正岡子規)
 10月7日 沈む日のたまゆら青し落穂狩(芝不器男)
 10月8日 秋灯や夫婦互に無き如く(高濱虚子)
 10月9日 水底の石動かして水澄める(東千秋)
 10月10日 待ちかねて雁の下りたる刈田かな(小林一茶)
 10月11日 松風の里は籾摺る時雨かな(服部嵐雪)
 10月12日 あみだ仏ぶつぶつと泣く柚味噌哉(松瀬青々)
 10月13日 身にしむや宵暁の舟じめり(榎本其角)  
 10月14日 粟刈るやふもと宿場とさびれつつ(長谷川素逝)
 10月15日 物干にのび立つ梨の片枝かな(広瀬惟然)
 10月16日 彼一語我一語秋深みかも(高濱虚子)
 10月17日 つつましや秋の袷の膝頭(前田普羅)
 10月18日 からすみや己一人の茶の煙(松瀬青々)
 10月19日 人ごみの中手みやげの枝葉柿(瀧井孝作)
 10月20日 耶馬溪の岩に干しある晩稲かな(杉田久女)
 10月21日 墓地の空小さくあけて木の実ふる(井芹眞一郎)
 10月22日 蘆の穂に家の灯つづる野末かな(富田木歩)
 10月23日 ある時は新酒に酔うて悔多き(夏目漱石)
 10月24日 淋しい寝る本がない(尾崎放哉) 
 10月25日 露けしと思へばゆかしなにもかも(あまの樹懶)
 10月26日 鵙鳴くやいつも夕餉の支度どき(萱嶋晶子)
 10月27日 からすうり熟れてやうやく烏瓜(安田かしこ)
 10月28日 大風に傷みし木々や渡り鳥(河東碧梧桐)
 10月29日 薬掘蝮も提げてもどりけり(炭太祗)
 10月30日 相槌の打てぬ話を聞く夜長(成定ちえ)
 10月31日 冬瓜のころげて荒るる畠かな(村上鬼城)