第381回「こんな夢を見た」

[2012.1.10 ]

 『こんな夢を見た…。an弾手がピアノを弾いている。
 レストランの一角に置かれたピアノ。窓の外は明るい光の中に木々の緑がそよいでいる。お昼過ぎ、ランチタイムらしい。
 ザワザワとお客さんの声がする。弾きながらお客さんの席の方はあまりよく見えないのでちゃんと聴いてくれているのかよく分からない。でもそれでいいのだ。自分のピアノを真剣に聴いてもらうために弾いているのではない。食事をしながら、おしゃべりをしながら、ピアノのBGMで何となく心地よくなってもらえればそれが一番なのだから。
 曲目は自分でもよく分からないが静かな癒し系の曲だ。弾いていて自分自身が癒されるようなピアノが弾けたらいいなあ。そしてその気持ちがその場にいる人にも自然に伝わっていくようなピアノが弾けたらいいなあと思う…』

 あ、すみません!変な書き出しで始めてしまって!何だかナルシストっぽくて気持ち悪くなかったですか(笑)
 昨年の最後が、「こんな夢を見た」で始まる夏目漱石の「夢十夜」語りライブのレポートだったので、ついつい今年の夢を語るのに「こんな夢を見た」というタイトルで悪乗りしてしまいました。

 皆様は新しい年にどんな夢を描かれましたか?私が上に書いた「こんな夢〜」の話は何だか地味で分かりにくかったかも。ということでちょっと解説させてくださいませ。理屈っぽくて退屈かも知れませんがちょっとだけお付き合いくださいね。

 そもそも私がピアノを始めた40代。クラシックの自己流楽譜丸暗記奏法に行き詰まり、その後コード奏法に出会って『楽譜に弾かされるのではなく、自分の気持ちでピアノが鳴ってくれる』という感覚に感動したのが今のan弾手の原点。そして下手な自分でも何とか人前で弾けるのが嬉しい第一段階。続いて、このコラムの連載やピアノ教本の執筆・出版などを通じて全国のたくさんの人に大人ピアノの共感の輪が広がっていく喜びの第二段階。その間、ミニライブや色々なイベント、パーティー等での演奏の機会を頂いて人前ピアノの経験を多少は積ませて頂いたのですが、夜の街(?)以外ではいずれも自分から積極的にそのような場を作っていくというより、受け身でたまたま声を掛けて頂いた機会をありがたくお受けしてきたというのが正直なところでした。
 そんな中、次第にもう少し自分なりにan弾手流ピアノを意識してみたらどうか、そのための場を自分なりに作って自分を追い込んでみようか、という気持ちが出てきました。自分の演奏のテーマを意識する第三段階というところでしょうか。

 まだ漠然と思っているだけで具体的な構想も何もないのですが、一つの形として冒頭に書いたようなレストランやラウンジなどでの定期的な演奏などもあるのかな、と妄想しているところです。

 もちろん、本の執筆というテーマもまだまだ継続中です。一昨年、昨年と講談社の新刊に時間を取られて、もう2年越しで待っていただいている某出版社の宿題も今年は形にしないといけませんし。

 それから、気が付くとこのコラム、2002年8月の第1回から数えて今年は10年目になるんですね!何だかあっという間だったような気がします。書いている内容も最初の頃のホントに素人おじさんのドタバタエピソードから、コード奏法実践法の紹介「アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる(!)ためのコード奏法超入門講座=アナ鼻ピアノ」、そして最近のピアノ雑感(?)と、少しずつ変わってきたようです。
 それにつれて、読んで頂いている方もそれなりに入れ替わりがあるような気がします。an弾手宛に頂くメールのアドレスを保存しているのですが、ずっと以前の方の中にはアドレスそのものが既に使われていなくて送信不可の方も結構いらっしゃいます。でも、その代わりと言いますか、新しくメールを頂いてご縁が繋がる方もいらっしゃって嬉しいです。
 そんな皆様からのお便りやご意見が、私が足掛け10年もこのコラムを続けてこられた大きな原動力になっています。本当に感謝の気持ちで一杯です。

 10年目の2012年、今年も皆様のお声に支えられながら、このコラムや本、そして人前ピアノなどを通して、皆様に少しでもお役に立てる情報や自分なりの思いを発信できればと思っています。

 どうか、引き続きよろしくお願い申し上げます。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 2012年も、もう10日ですね。去る7日が七草、そして明日は鏡開き。我が家の隣の畑には寒風の中、小さな青い芽がズラッと頭を覗かせています。麦の芽。これから日一日と大きく伸びていくことでしょう。
 そんな風景に励まされながら、私も新しい気持ちで走り始めなければと、自分に言い聞かせているところです。

 
−an 弾手−


第382回「スリリングなオープニング」        

[2012.1.17]
 「あ、an弾手さん、今日のオープニングのことで相談があるんだけど」
 その日は阿蘇方面での仕事を終えて熊本市内へと急ぎ、何とか開場30分前に会場のホテルに着いて控え室に入ると、毎年司会を務めている女性から声を掛けられました。
 「今年はオープニングでキャンドルサービスをしようかと思って。6時からan弾手さんにウェルカムピアノを弾いてもらうでしょ。で、6時半になったら会場を暗くしてキャンドルを持った二人が入ってきて会場を一周するの。その時なにかクリスマスソングを弾いてくださいませんか?」

 すみません、もう1月も2週間以上過ぎたのに今さらクリスマスネタで。毎年恒例になっている12月23日、某喫茶店のクリスマスパーティでの話しです。その日は祝日なのにたまたま本業の仕事が入って何時に熊本市内に戻って来れるかもはっきりせず、いつも弾かせてもらっているウェルカムピアノの段取りも司会者と事前の打ち合わせをしていなかったのでした。

 「クリスマスソング…ですねぇ。ぱっと思い付くのは『きよしこの夜』位ですかねぇ」と私。
 「あ、それでいいです。それ弾けますか?」
 「そうですねぇ…、弾けるかどうか少しピアノで確認してみないと…」
 という訳で、急遽会場に行ってピアノリハ。先に会場でリハーサルをしていたベンチャーズバンドの人達にちょっとだけ中断してもらってピアノの前に座ります。きよしこの夜は確か1年前のクリスマス時にちょっとだけ弾いたような…。それ以来弾いてないけど、割と単純なメロディーなのでまずは右手1本でメロディーの確認。続いて両手でコードの確認。あまり奇をてらわなければ、シンプルなスリーコード(C、F、G7)にちょっとEmを混ぜる位で何とかなりそうです。
 念のためにメモ用紙にコード進行を記録して、とりあえず準備完了?かな。

 「キャンドルサービスの後は、司会の私からan弾手さんの紹介をしますから、その後2曲弾いてもらえますか?」

 えっ?例年通り開会前30分間のウェルカムピアノは今年も曲名と進行時間を書いたメモを作って来てるけど、開会後の演奏は1曲しか用意してないよ〜。しょうがない、ウェルカムピアノの予定曲の中から1曲を開宴後の演奏に廻し、ウェルカムピアノは途中の時間調整用コード進行アドリブの時間をちょっとずつ引き延ばしてつじつまを合わせることにしよう。

 という訳で、用意していた秒単位の進行メモに控え室で急遽時間変更を書き込んだのがこれ(PDFで開きます)。
 本番では、このメモとピアノの上に置いたデジタルウォッチを見ながらピッタリ30分のウェルカムピアノで何とかお勤めを果たすことができたのでした。

 …と、思ったら。何と!
 続くキャンドルサービスタイムでいきなり会場の照明が全部消えて真っ暗に!さっき書いたきよしこの夜のコード進行メモはもちろん、鍵盤も(自分の手さえ)全く見えないじゃないですかぁ!!!会場のドアが開いてキャンドル持った二人が入って来たというのに、これじゃピアノ弾けないよ〜!真っ暗い中で必死に司会者へ身振り手振りでピアノ周りの照明がほしい、って訴える私。しばらくしてやっとピアノにスポットが来て、ちょいとタイミングのズレた『きよしこの夜』になってしまいました。

 本番では何が起きるか分からないとは言え、今回も中々スリリングなクリスマスパーティーのオープニングだったのでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 今日は熊本は朝から抜けるような青空が広がっています。ここ数日どんよりとした天気が続いていたので気持ちがいいです!
 昨年から国内外とも暗いニュースが続いていて、身の周りにもあまり明るい話題は少ないような気がするのですが、それでもきれいな青空を見上げると何か気持ちが軽くなるから不思議ですね。
 1月も既に後半、明るい気持ちで流れを作っていきたいと思います。

 
−an 弾手−


第383回「1年がかりの大作。80代の男性から届いた1枚のDVD」        

[2012.1.24]
 10日ほど前になりますが、私宛に1枚のDVDが届きました。差出人は大阪の中川貴さん。このan弾手コラムや私の本の読者でいらっしゃいます。お歳は確か80代半ば。
 70代から先生に付いてピアノを始められ、一度は「もうやめよう」という思いも抱かれたようなのですが、たまたま私の本でコード奏法に出会われ「これならもう少し続けられるかも」という気持ちで先生のもとにその本を持参され、弾きたい曲に自分独自のコードアレンジを工夫しながら、引き続きその先生のご指導を受けられているようです。

 昨年12月5日に頂いたメールです。
 『懸案の発表会が昨日終わりました。今回が最後だと言うことで、それなりに力を入れて準備して来ました。1年余りをかけて、「トロイメライ」のメロディ-にコードを付け、変形し、コードにはないが「トロイメライ」らしい音を加え、幾らかでも原曲に近ずけようとし、また、私の想いの中にあるイメ−ジを再現出来たら、と思ってやって来ました。〜(中略)〜DVDが出来上がったら御送りします。惨状をご笑覧下さい。ピアノは続けますので、これからもご指導下さい』 

 あの「トロイメライ」をご自分でコードアレンジし、12月の年一回の発表会で演奏されたようです。その様子を収録したDVDを送って頂いたのでした。

 事の始まりはもう1年以上前、2010年12月3日に頂いたメールでした。

 『〜(前略)〜ところで、1日のレッスンに私が弾いた(?)のは、トロイメライのメロディ-に勝手にコードを付けた、謂わば”トロイメライ風”とでも言うような代物でした。2ヵ月かかったのですがやっぱり散々でした。でももう少し続けて見ようと思います。
 なんで突然気が狂ったようなことを思いついて始めたのか、自分でもよくわかりません。シュ−マン生誕200年は全く関係は有りません。しかし私の心の中に70年余り住み着いていた曲であることは確かです。というより、曲のどの部分を聞いても曲名が判るクラシックの曲はこれしかありません。私の生まれ育った社会、そして時代は、ごく一部の特殊な人を除けば、クラシックに接することは殆どありませんでした。童謡、唱歌、歌謡曲、そして軍歌(軍国歌謡曲と言うべきかもしれません)が大勢を占めていました。そんな中で、最初に、そしてその後数十年の間を通して、唯一馴染んだ曲がトロイメライだったのでした。しかも、それは私が尋常小学校から中学校に入った時期でした。昭和14年ですから、お蔵で探しても見つからないでしょうね。当時は、中学生は大人として扱われたし、また、その自覚も持って(と思い込んで)いないといけなかったのですから、小学生とは住む世界が全く違う感じでした。そうした感覚の下地の上に、またそうした自覚を育てる関係で耳にした曲でしたので、2、3度聞いただけですが、体の中に沁み込んでしまったのでしょうね。富士山の伏流みたいに、70年経って突然地上に顔を出したのでしょう〜(後略)』

 その後、昨年の2月、5月、7月、10月にも途中経過のメールを頂きました。

★2011年2月7日
 『〜(前略)〜最近或る発見をしました(と、言うほどのものではないですが)。トロイメライコード練習に少し慣れてきた頃ですが、或る日、疲れて何となく譜面を見ていたのですが、コードを分散させたら原曲とどの位違うのだろうか、と言うことに興味を持ちました。各小節ごとに当ってみたのですが、すると、意外にも(?)よく似ている部分がかなりあることがわかりました。面白くなって転回形にしたり、部分的に抜いたり、加えたり、飛ばしたり、又、コードには無いけれどもトロイメライを特徴付けていると思われる音を加えたり、難しいところの誤魔化し方を考えたりしたところ、何とトロイメライ風に近ずいてきたではありませんか。と、一人で悦にいっても、傍から見たら馬鹿みたいでしょうが。とりあえずは、自己満足、今はこの譜面で練習して、2月のレッスン日に臨みます。〜(後略)』

★ 2011年5月2日
 『もう5月になってしまいました。”ロマン溢れる”当初の計画も先細り状態進行中、夢も希望も、霧のかなたに消えてしまいそうな毎日です。
 どうも、大変な曲(勿論、私にとって、です)を選んでしまったような気がしてきました。澄んだ音を、柔らかく、流れるように弾く、なんて芸当は、初めから私にはむりだったんです。でも、今更引き返すこともできず、毎日が「石抱き」「算盤攻め」です。
 コード作りを面白がっていたときは幸せでした。判らないなりにも、少しずつ形が出来ていくのが、確認できたからです。コードに随って弾き始めたときも、頭や指のドジさ加減をを呪いながらも、「これは俺の曲だ」との思いが心を楽しませてくれました。
 そして、今、です。前回「構想」なんていって、あとで「心構え」なんて言い直したアレです。想いだけではどうにもならない、技術的な未熟さが、もう、モロに出てしまうんです。皆さんに聴いて頂こうなんて助平根性も出てきたりするもんですから、稚拙な上に独りよがり、もう、聞けたものではありません。出来るものなら止めたいくらいです。でも、悔しいですねえ今やめるのは〜(後略)』

★ 2011年7月12日
 『中断していたトロイメライ、最近になってやっと始めました。所が、弾いていて違うんです。素直に曲に乗っていけません。そんな中でフト思いました。今更色あせた若かりしころの想いを、無理やり引っ張り出して、形を作ったとして、それが今の俺に何の意味があるのか、と。彼ら(※)を含むわれわれの世代の歩いた道は、戦争、戦後の荒廃、虚飾に振り回された繁栄、そして浪人、やがて、葬送行進曲序章である。もういいのではないか進まなくったって、と思い始める。トロイメライがリクイエム、これまでの人生に対する、いとおしみをこめたリクイエムだっていいじゃないか、と。〜(後略)』
 (※an弾手注:この頃、中川さんは身近な方や親しいご友人を相次いで亡くされたご様子でした)

★ 2011年10月31日
 『〜(前略)〜ホロヴィッ、ランラン、ユンディリ−などの演奏を聴いて真似出来るところはないか、と虫のいいことを考えたのですが、見当違いもいいところでした。そんなレベルの問題ではないことがはっきり分かりました。でも、これらの曲を聴いて気のついたことが、一つだけありました。それは、三人とも弾き方が全く違うということです。夫々の方が自分流に曲を捉えて表現していると言うことが分かりました。これまで、音楽の世界とはかけ離れたところで生活していましたから、同じ曲を複数の人の演奏で聴いたことはありませんでしたから、同じ譜面でも、弾く人によってこんなにも違うということを初めて体験しました。これは本当に驚きでした。(本当に初心者丸出しです)
 そこで、「我流でもいいんだ」と半分納得したのですが、半分は「その納得は安直過ぎないか」とあきれています。技術レベルの違いと個性感性の違いを一緒にしたんでは、シュ−マンも泣くに泣けないでしょう。
 後一ヶ月余、出来ても出来なくても、頭の中にあるイメ−ジを追い続けて見ようと思います〜(後略)』

 そして、冒頭の12月5日のメール。若かりし頃に耳にされ想いのこもった曲を、70余年の時を経た今、ご自分なりのコードアレンジと練習で1年がかりの試行錯誤を経て人前演奏されたのでした。

 DVD聴かせて頂きました。あっ、まんまとだまされた〜!と思いましたよ。事前のメールであまりにご謙遜されていたので、私もついそんな気になっていたのですが、中川さんの演奏、素晴らしかったです!何が素晴らしいかと言うと、聴いていて中川さんの気持ちがジワッと伝わってきたこと。よく発表会等で見かけるような、楽譜を上手に練習してきました、うまく弾けました、というのではなく、中川さんがご自分の言葉で演奏されているのがよく分かりました。中川さんの様々な人生経験やそこから来る曲への想いがこもっているように思えました。私には人様の演奏技術や表現力を云々するスキルはないのですが、それでも聴いていて気持ちに響くものがありました。もちろん、コードアレンジも素人の方のオリジナルとは思えないほど綺麗で、演奏のテンポや曲の聴かせ所もしっかりしていて安心して聴けました。

 中川さん、1年がかりの大作お疲れ様でした。私も1年間、中川さんの取り組みや曲への想いをずっと横で拝見させて頂いて貴重な経験をさせて頂きました。7月のメールで、身の回りの方達の相次ぐご不幸の中で自分がトロイメライを弾く意味を自問自答されているご様子には、私も深く考えさせられるものがありました。私自身、折に触れて「人生のピアニストを目指す」、みたいな事を言っているのですが、改めて自分がピアノを弾く意味に思いを巡らす機会を頂いたような気もしています。ありがとうございました。
 今年もまた、中川さんの新たなピアノワールド、楽しみにしています!

 (今回のコラムは中川さんのご了解のもと、頂いたメールの一部を引用させて頂きました)





(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 昨夜はある人の出迎えのために熊本空港に行きました。到着ロビーには私と同じように出迎えに来たらしい人たちが沢山。便が着く度にゲートからどっと人が出て来て、あちこちで声が上がったり笑顔があったり。
 と、その中に見覚えのある顔が。東京の某有名高校を受験すると聞いていた中学生の親子。声を掛けると「合格しました〜」とお母さん。おめでとうございます!
 あ、また1人知っている人だ。受付カウンターに行って何か物を受け取っている様子。そう言えばさっき館内アナウンスで「○○便の座席にお土産の忘れ物がありました。お心当たりの方は〜」と言っていたっけ。あの人だったのかな。戻ってよかった!
 アタッシュケースを提げて早足に通り過ぎて行くビジネスマン風の男性。そして、乗務を終えたらしいキャビンアテンダントの人たちがキャリーバッグを引き談笑しながら通り過ぎていきます。
 何だか色々な人の色々な仕事や生活、人生のドラマが目の前を流れていくようで、ちょっとだけ不思議な時間を過ごした夜の空港でした。

 
−an 弾手−


第384回「母のベッドの横でキーボード」         

[2012.1.31]
 2階の窓から、建物の前の広〜い芝生の広場が見えます。その真ん中に一本の大きな木。木の名前は私には分かりませんが、『♪あの〜木、何の木、気になる木〜』の小型版みたいなカッコいい木がシンボルのように立っています。
 その窓に面したテーブルの上にキーボード。傍らのベッドにいるのは私の母。

 ここは某老人ホームです。母が1年前に自宅で骨折して入院、自分で歩けなくなったので退院後ここにお世話になっているのです。私は週1回は顔を出すのですが、狭い部屋に2人きりになると毎回そうそう新しい話題がある訳でもなく、ある時思い立ってキーボードを持ち込んだのでした。以前、衝動買いをしてしまった確か1万円前後くらいの小さいのが家にあったので。

 母は歌が好きで、昔の唱歌などは歌詞もよく覚えています。
 「何か、知ってる歌はある?」
 と聞いても
 「さぁ〜、聞けば分かるけどね」
 という返事。
 私も思い付きで『朧月夜』とか『早春賦』とかを探り弾きで弾くと、合わせて歌い出します。歌い始めると、2番や3番の歌詞まで出てくるのにはびっくりします。調子に乗ってくると
 「ほら、天皇陛下万歳♪〜、とか知っとるかい?」
 なんて聞かれたりもしますが。ごめん、私、戦後生まれなので、そんな歌聞いたことないんですけど(笑)

 このキーボード、ダンパーペダルがなくてピアノサウンドでは音がブツブツ切れて弾きにくいので、ストリングスサウンドにして弾きます。これだと多少残響っぽい響きがあって、ペダルなしでも音がつながって自然に聞こえます。それに唱歌などの叙情的な曲にはぴったりのサウンドになりますね。
 唱歌だとコード進行もあまり複雑なものは出てこないので、楽譜がなくても探り弾きで何とかなりそうです。基本のスリーコードにたまに特徴的なコード(ノン・ダイアトニック・コード)が混じるようなパターンが多いので、弾きながらメロディーに合わせて即興的にコードを入れていく感覚の確認にもなりそうですね。

 という訳で、自分でもキーボード結構楽しんでしまいました。母はというと、こちらも歌うのが楽しいらしく、歌っていると表情が生き生きしてくるような気がします。

 さて、もうすぐホールに集まっておやつの時間の様だし、私はそろそろ引き上げることにしましょうか。
 週末の穏やかな午後。柔らかな冬の陽射しが、窓の外に広がる茶色の芝生と一本の木に差していました。


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ちょっと、ひと言。

 昨日は私が参加している異業種交流会の卓話で、最近のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)についての話を聞きました。facebook、twitter、mixi、等々…。ある自治体では、これまでの公式ホームページを廃止してfacebookだけにしたらアクセスが以前の数百倍に増えたとか。実は私も数年前にmixiから始めて、その後twitter、facebookと(漫然と?)体験してはいるのですが、自分自身、それらの使い方にいまひとつ筋が通っていないので、最近は開いたり書き込んだりするのも何となく散漫になってます〜(汗)。
 人や情報のつながり、リアルとネットと、あるいはその両方と?。全ては自分の使い方次第なのでしょうが、一体これからどんな風に変わっていくのでしょうか。

 
−an 弾手−


第385回「時の流れ」        

[2012.2.7]
 ステージの上で、老練なピアニストがお洒落なジャズピアノを奏でています。横でマイクを握るのは新進女性ヴォーカリスト。ここはあるジャズクラブです。その夜私は中学時代の同窓会の後、久し振りにその店に足を運んだのでした。
 そこで思わぬ人と遭遇。私と同年代の顔見知りの男性と、同じく顔見知りの若い女性。私は2人とも別々によく知っているのですが、その2人が仲良く一緒にこの店でお酒を飲んでいる、という組み合わせが私にとっては『思わぬこと』で!
 聞くと、その女性がまだ小さい頃、よく自分の家の近くの坂道を三輪車で下って遊んでいた時、その男性が 度々車でその道を通り掛かって『危ないなぁ』と迷惑に思ったり注意したりしていたとのこと。
 へぇ〜、そんな昔からの『知り合い』だったんですね。それにしてもそんな2人が、今こうしてこんな店でジャズを聴きながら親しげにグラスを傾けているなんて。時の流れって不思議なものです。
 「ほら、あのピアニストの人、3〜40年ほど前にあるホテル最上階の展望ラウンジで演奏しているのを聴いたのが最初の出会いだったんですよ」とその男性。
 へぇ〜、そこにも時の流れを感じますねぇ。

 時の流れと言えば。
 実はその日の昼間、とても『時の流れ』を考えさせられる映画を観たばかりだったのです。「ALWAYS 三丁目の夕日’64」。時は1964年、東京オリンピックが開催された年。戦後の焼け野原から日本人が明日を信じてみんな助け合い必死に暮らしを築いていった様子を描いたのがこれまでの第1作、第2作としたら、今回の第3作はいよいよ世界一の東京タワーが完成し、世界一速い新幹線が開業し、東京でアジア初のオリンピックを開催するまでになった、戦後復興の一つのシンボル的な時代。ただ、映画ではそんな日本再生万々歳だけの話ではなく、終戦からの復興を担ってきた世代から、そろそろ次の世代への世代交代が始まる悲喜こもごものエピソードや、新たな社会格差の兆しなどの側面も描かれています。

 で、その時の「次の世代」だった私らなんかが、気が付くと更にそのまた「次の世代」へ世代交代をする時期に来ているのですよ(笑)
 その日の中学時代の同窓会でも、自分たちの年金の話やら、高齢化社会のいびつな人口構成の話やら、結婚しようとしない身の回りの30代の若者の話やらが飛び出し、あの「ALWAYS 三丁目の夕日’64」の世界からまたひと回り次の時代へと時が流れているのをしみじみと感じたのでした。私がちょうど今レッスンでピアノ(コード)を教えている女子中学生が大きな夢を描いてこの春東京に進学するというのも、そう言えばこの映画の当時は私自身が同じ中学生だったんだということに気付いて、不思議な巡り合わせの様な気がしないでもありません。

 …と、そんなことを考えながら自分の身の回りを見回すと、さてさてこれからの自分のピアノライフ、どんな展開になっていくのか、していくのか。
 『時の流れ』に逆らわず、でも決して流されず、自分流に取り込みながら楽しんでいけたらいいなあと思うのですが。
 (な〜んて、変にカッコ付けた締めですみません!)



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 先週土曜日(4日)は立春だったんですね。まだまだ日本列島の各地からは大雪のニュースが流れてきますが、暦は着実に進んでいるんですね。ここ熊本も先週は雪が舞っていましたが、昨日は雨に変わって凍えるような寒さも少しは緩んできたような気もします。
 ところで私の仕事(本業)の方では、この時期になると年度末を意識した見積り依頼やら仕事の相談やらが増えてくるんですよね。そんなせわしなさから春の足音を感じるというのも、まあ風流ではないですが毎年やってくる風物詩のひとつ、なんでしょうかね。

 
−an 弾手−


第386回「春・明日への旅発ち」        

[2012.2.14]
 「はい、それじゃ今日の前半はこれまでの復習でこの3種類のコード進行を両手で弾いてみて。で、後半は曲への応用をしてみようか」

 訪ねて行ったスタジオの一室。その日も中学3年生の女の子とキーボードの前に掛けます。その子のお母さんから頼まれてピアノ(コード)のレッスンを始めたのは去年の9月でしたっけ。それから約5ヶ月経つというのに、レッスン出来たのはその日が6回目。中学生とは思えない多忙な日々でなかなかピアノレッスンの時間が取れなかったのです。
 「次のレッスンはいつにする?この日とこの日あたりだったら時間取れるけど」と私。
 「あ、その週は放課後ずっと予定が入っているので無理です。そーですねー、来々週のこの日だったら多分時間取れるかと思いますけど。とりあえず仮予約ということで、予定が変わったらまた連絡してもいいですか?」
 何だかどっちが中学生でどっちがビジネスマンのおじさんか分からないような(笑)会話をしながらいつも次のレッスン予定を決めてました。

 というのも、彼女は他にも色々な習い事をしていて、レッスンで度々上京したりもしているらしい。そしてこの春からは東京の高校に進学が決まったそうなんです。

 その日、お母さんからお話がありました。
 「実は、もうピアノのレッスンをする時間が取れなくなったんですよ。他のレッスンや4月からの東京での活動の準備もあって」
 「わぁ、いよいよ東京に行かれるんですね。おめでとうございます!頑張ってください」
 当初から、私のレッスンは中学卒業までの半年という事でしたので、もう2月に入って私もあと数回かとは思っていましたが、その日が最後のレッスンになったのでした。

 ところで、彼女のピアノのレッスンって、どんなことをしてきたのかと言うと。
 お母さんの話では、彼女は小学生の時にちょっとだけピアノを習ったことはあるけど、すぐに歌のレッスンが主になって、それからピアノはやっていない。春から東京に進学したら、向こうでの他のレッスン等で忙しくてとてもピアノの練習をしている暇はなさそうなので、熊本にいるうちに今後のための一つの素養として、ちょっと弾けるようにしておきたい、とのこと。
 「でしたら、簡単なコード奏法の入り口でも体験しておけば、今後何かの役に立つかも知れませんね」
という訳でレッスンをお引き受けしたのでした。

 そして結局レッスン出来たのは6回。コードって何?ってところから始めて、右手でのコード進行、左手を加えた両手でのコード進行、そして、簡単な曲への応用。私の「2週間速習ピアノ講座」の本をテキストにしながら巻末参考曲のエーデルワイス、アメイジング・グレイスまで。
 本では「2週間〜」ってことで14日分のステップになっていますが、ほぼ同じような内容を超特急の6回で駆け抜けたのでした〜。

 短期間のレッスンでは伝えきれなかった事も一杯ありましたが、それでも超多忙の時間をやり繰りしてのレッスン、お疲れ様でした。いつも礼儀正しくて帰りにはきちんと笑顔で「ありがとうございました!」と言ってくれる彼女。これから東京に行って、沢山の新しい経験をすることになると思いますが、どうか精一杯吸収して大きく成長してくださいね。応援しています! 



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 そう言えば、今日はバレンタイン・デーでしたね〜!「だから?」と言われれば、はい、別にだから何ってことはないんですが(笑) 数日前から我が家でも、義理チョコ、本命チョコが飛び交っております。ま、詳しくは書きませんけど。
 お菓子業界の作戦と分かっていても、世の中、キラキラと楽しげな話題が飛び交っているのは、それはそれで何となく幸せな気分になれていいものです。
 さて皆様、今日はどんなバレンタイン・デーをお過ごしでしょうか?

 
−an 弾手−


第387回「本番間近!オハイエくまもと・とっておきの音楽祭」その@

[2012.2.21]
 「では、これから2時半までパート練習をお願いしま〜す!3時から全体練習をしま〜す」
その日はオハイエくまもと音楽隊の、月に2回の練習日。練習会場には、音楽隊のメンバーとその保護者の皆さん、そして音楽指導ボランティア計数十名が集まって賑やかです。実は私も実行委員及び音楽指導ということで参加しているのです。

 本コラムの第368回にも書いていますが、この「オハイエ熊本・とっておきの音楽祭」は、もともとは2001年に宮城県仙台市で始まったのがルーツとか。音楽を通して障がいを持つ人と一般の人がともに健康で楽しい生活をしながら、かつ地域において支援の輪を拡げノーマライゼーションを目指すことを目的としています。
その大きな活動のひとつが、街の中心地などで皆が一緒に楽しめる「オハイエくまもと・とっておきの音楽祭」の開催。
 今年が3回目で、3月25日(日)の開催当日は熊本市の市街地9ヵ所で同時多発的に様々な音楽の演奏が繰り広げられます。今年の一般参加出演は総勢87の団体・個人。プロ、アマ取り混ぜて全てボランティアでの出演です。

 私がこのイベントのお手伝いに途中から参加させて頂くことになったのは半年くらい前。要領がよく分からず皆さんの準備の様子を見ていると、会場の選定ひとつにしても地元商店街との調整や警察への届け、行政機関への根回しなどものすごく大変そう。他にも、出演者の募集と会場の割り振り、ボランティアの募集、当日の食事の手配、協賛金や広告の募集、オリジナルグッズの製作・販売、広報誌やプログラムの編集制作…等々、実行委員会のメンバー数十人が全てボランティアで何度も委員会を開きながらこれらの作業を進めています。平行して、オハイエ音楽隊という、障がいを持つ人たちの音楽演奏の指導も。
 私はと言うと、当日9会場のうち、唯一屋内の会場である熊本市現代美術館の会場担当と、音楽部会メンバーとしてオハイエ音楽隊の音楽指導がお役目なのです。

 その日、私が指導担当になったのは鉄琴とミニキーボードを弾く小学生位の小柄な女の子。
 「じゃ、この楽譜を見ながら少し弾いてみようか」
 そう言いながら鉄琴の前に2人で座ったら、ちょっと恥ずかしそうな目で微笑んでくれました(次回へ続く)。



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ちょっと、ひと言。

 一昨日の日曜日、熊本市では第1回「熊本城マラソン」がありました。4キロ、30キロ、フルマラソンの3コースに全国から約1万人のランナーが参加し、城下町熊本のコース沿いはランナーと応援者約15万人の人で埋め尽くされたようです。
 ようです…、と人ごとみたいに言ってますがぁ。実はその日は今週のコラムに書いたオハイエ音楽隊の練習日で、私は交通規制の道路を避けながら練習会場に行ったのでした〜。
 熊本では初めての大規模な市民マラソン大会だったので事前には事故やけが人などの心配もありましたが、実際はそんなニュースも無く、とても盛り上がったみたいで良かったです。来年は、自分では走らないまでも何らかの形で一緒に楽しめたらいいかなあ、なんて思っています。

 
−an 弾手−


第388回「本番間近!オハイエくまもと・とっておきの音楽祭」そのA

[2012.2.28]
 オハイエ音楽隊の練習指導に行ったその日。私が指導担当になったのは鉄琴とミニキーボードを弾く小学生位の小柄な女の子でした。
 「じゃ、この楽譜を見ながら少し弾いてみようか」
 そう言いながら鉄琴の前に2人で座ったら、ちょっと恥ずかしそうな目で微笑んでくれました。

 オハイエ音楽隊は、障がいを持つ子供たちが中心になった音楽隊。鉄琴、木琴、トーンチャイム、鍵盤ハーモニカ、キーボード、それに数種類のパーカッション等の編成で、基本的にメンバー1人に1人ずつ指導員が付いて練習します。その日の練習は、音楽祭当日のオープニングとフィナーレの時にセンターコート野外ステージで演奏するサウンド・オブ・ミュージックとエーデルワイス、それにドレミの歌。私が付いた女の子はサウンド・オブ・ミュージックとエーデルワイスを鉄琴で、ドレミの歌をキーボードで弾くのですが、楽譜も読めるし家でもだいぶ練習してきていたようで、私がほとんど口出しすることもないくらい上手で、楽でした(笑)。
 メロディーとは違うパートが担当なので、パート練習では何の曲を弾いているのか自分でもよく分からないのですが、全体練習で皆と合わせたらなかなかピッタリはまって気持ち良かったです。

 さてさて、いよいよ本番まであと3週間ちょっと。その間の私の役目は、音楽隊の練習指導があと2回、実行委員会が1回、出演のミュージシャンに集まって頂いての事前説明会1回、ボランティアの皆さんへの事前説明会2回、私の担当会場の熊本市現代美術館へ提出する書類作り…等々。もちろん、他にも私以外の沢山の委員の皆さんがそれぞれに膨大な準備作業をされているようです。

 そう言えば、この前の土曜日に小さなライブハウスのライブに行ったのですが、出演していたヴォーカリストの人が、所属しているグループでこのオハイエ音楽祭に出演するとのことでした。ライブの後、「次はオハイエ目指して頑張ります!」というメールを頂きました。当日は、オハイエ音楽隊の他にプロ・アマ取り混ぜて87の団体・個人のミュージシャンがボランティア出演で観客の市民の皆さんと一緒に音楽祭を作り上げます
 色々な立場の沢山の人達が、このイベントがきっかけで出会い、音楽を通して心を通わせ、絆を深めることでしょう。
 そんな取り組みに、私もささやかながら参加させて頂ける事に感謝です!

【「オハイエくまもと・とっておきの音楽祭」は下記の要領で開催されます】
●平成24年3月25日(日)
●10:15〜 オープニング(熊本交通センター・センターコート)
●11:00〜15:00 ストリート演奏(センターコート、熊日会館びぷれす広場、熊本パルコ店頭、下通りZARA前、下通りわくわく市場前、下通り三国屋前、熊本市現代美術館、城彩苑、熊本市国際交流会館前)
●16:00〜18:00 フィナーレ(熊本交通センター・センターコート)



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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ちょっと、ひと言。

 2月も明日まで。2月は逃げるってホントですね(あ、使い古されたネタでスミマセン)。ついでに3月は去るって(シツコイッ)。
 年頭に描いた今年やる事、まだほとんど手付かずのまま日々に追われてちょっと焦っております。自分の人前ピアノの企画やら本の原稿書きやら、3月が去る前に少しは見通しを付けないとですね〜。
 一週間後は啓蟄。寒さも少し和らいできたような気がするし、虫さんにあやかってもうちょっと気持ちのアクセル踏んでみましょう。

 
−an 弾手−


第389回「海辺のカフェテラス」

[2012.3.6]
 そう言えば、あれから随分長いこと行ってないなぁ…。三角西港(みすみにしこう)。

 バックナンバー第59回「ここで弾くべきか?弾かざるべきか?」に書いた、あの三角西港です。熊本市内から西へ車で1時間余、天草の島が目の前に迫ってくる岬の先端。そこに明治20年、オランダ人技師ムルドルの設計で造られた港、三角西港があります。当時の日本が近代国家の威信を懸けて築いた明治三大築港のひとつと言われています。
 今は現役の港としては使われていませんが、当時のままの石積みの埠頭や水路、ノスタルジックな洋館群など、当時の都市計画がほとんど無傷のまま残っていて、平成14年、国の重要文化財に指定され平成21年には世界遺産国内暫定一覧にも記載されたそうです。

 コラム「ここで弾くべきか?〜」の舞台になったのは、そこの洋館を改装したカフェレストラン。高い天井の梁、縦長の大きな窓、テラスに出ると目の前に静かな海が広がります。

 思えばもう10年近くも前になるんですね…。
とある女性と天草までのドライブの途中に立ち寄ったそのカフェレストラン。店の隅に置かれたグランドピアノを見つけて、ついつい弾かせてもらった穏やかな午後のひと時。あの時の、ゆったりと流れていた時間…。ノスタルジックな三角西港の空気とともに今も懐かしく思い出されます。

 オイオイ、何を一人勝手にバカみたいな回想にふけってるんだっ、と叱られそうですが(笑)
 実は先日、ある人から「海辺のカフェテラス」というタイトルのCDを紹介していただいたんですが、それがこの三角西港をテーマとしたヒーリングピアノだったんですよ。
 1. 三角西港の朝
 2. スナメリは来ないかな
 3. 洋館に入って
 4. 海辺のカフェテラス
 5. 貝がらの恋
 6. ひだまり
 7. 芝生の上で
 8. みずあかり
 9. 夕暮れの海
 10.三角西港の歴史
 これらの曲名を見ただけでも、あの、時が止まった様な三角西港の風景と空気が彷彿としてきて、すぐにAmazonで注文したのでした。作曲・演奏は山口りえこさん、という方。何と熊本にお住まいとか。オリジナルのヒーリング音楽を手掛け、CDを制作されて熊本県内の店舗ほかAmazonその他の通販サイトで全国に販売されている、というのもビックリです。メール(facebookのメッセージ)でお話したのですが、以前、あの三角西港のレストランで5時間も弾かれていた事があるとか。私はたった1曲弾いただけでしたが、同じあの店の同じあのピアノで〜、というだけでもすっかり身近に感じてしまいました。

 送られてきたCD,ジャケットのデザインや三角西港の写真もお洒落。さっそく車のCDデッキに入れてドライブ中に聴いています。静かなソロピアノのバックに、遠い潮騒のようなシンセサイザーのストリングスも入っていて癒されます。
 聴いていたら「そうだ、私もまたオリジナルの曲を作ってみたいなぁ」という気持ちになりました。「また」って、私はずっと以前に「そよ風の微笑(ほほえみ)」という曲(って言えるのかな?)を遊びで作ってみたっきりだったからですね(恥ずかしながら、バックナンバー第74回に楽譜らしきものを載せております〜)。
 
 山口さんは今、2枚目のCD制作に掛かっておられるとか。こんな方が熊本にいらっしゃるんですね。何だか嬉しくなります。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 昨日から今朝まで、熊本はシトシトと雨。でも、ちょっと前までの冷たい雨と違って、どことなく「春の雨」って感じですね。仕事で車を走らせながらワイパー越しに流れていく街並みも心なしか穏やかに見えます。
 来週からまた寒くなると天気予報では言ってましたが、それを過ぎるといよいよ桜の話題になることでしょう。そろそろお花見の計画も立てなくっちゃですね!

 
−an 弾手−


第390回「私は女優?」

[2012.3.13]
 「ステージに立った瞬間、自分は女優だって思い込んでそう振舞うことじゃないかなぁ」

 その日顔を出したライブハウス。出演はギター、ウッドベース、ドラムのトリオに女性ヴォーカル。トリオの3人はプロですがヴォーカルはどちらかと言うと素人さん。とは言っても彼女、レッスン歴も長いベテランです。
 「後でアドバイスお願いしますね。辛口で」
 開演前、その女性ヴォーカリストにそう声を掛けられました。
 「あなた、随分辛口だって聞いてますから」
 …えっ?いえいえ、私甘口ですよ〜(笑)

 ライブが始まります。オープニングのインスト(楽器のみの演奏)の後、いよいよヴォーカリストの登場です。ステージに出てマイクを取る彼女の姿は実に絵になります。ちょっと小柄でスラッとしたスタイル、そして清楚で美しい顔立ち。大人の恋をテーマにしたジャズのナンバーを歌いながら、曲の合間に挟んでいくMC(トーク)。
 私は聴きながら、音程とか発声とか技術的な要素は自分があれこれ言えるスキルもないけど、何かアドバイスできるとしたらこれかな、ということに思い当たりました。

 「ステージに立った瞬間、自分は女優だって思い込んでそう振舞うこと」

 彼女、恋の歌を一曲終わってMCに入ると、とたんに素に戻るんですよ。見た目はとても女性的で綺麗で清楚なんですが、口を開くと突然男っぽい口調!それもちょっと照れながらの普段着トークになってしまうんです。
ライブの後、そんな話をしたら。
 「あっ、やっぱりそうですか。それって10年前に歌のレッスンを始めた頃にも当時の先生に同じようなこと言われたんですよ。それに、最近プロフィール用の写真を撮ってもらったカメラマンには『あなた、しゃべったらイメージ壊れるから黙ってなさい』って。でもこれが本来の自分だから。それを無理に変えて見せるのも何だか騙してるみたいな気がして」
 確かに。気の置けない仲間内のカラオケ大会ならそんな素の自分で盛り上がるのもいいかもですが。でも、ライブの店で、チャージなりチケット代払って聴きに来てくださるお客さまの前ではそれは失礼でしょ。そこにお客さまが求めているのは『非日常の世界』。ステージの上に繰り広げられるもう一つのドラマ。だからステージに立った瞬間、そんなドラマを演じる女優になり切ることが必要じゃないかなぁ。そうすればMCだけじゃなくて肝心の歌にももっと気持ちが込められるんじゃないかという気がします。

 なーんて、偉そうなことを言ったら
 「an弾手さんは人前ピアノの時にはそんな気持ちになって弾いてるんですか?」
って聞き返されてしまいました。
 あっ、いえいえ〜、自分のことはまた別の話で(汗)。演奏の後で「緊張してたでしょ」とか「挨拶はもっと笑顔で話さなきゃ」とか、私も散々言われてます〜。自分で自分のことはなかなか分からないんですよね。だから、他人の批評やアドバイスって貴重です。

 考えてみれば、これって何もステージに限ったことではないような気がします。かっこよく言えば『セルフ・ブランディング?』。なりたい自分、こうありたいという理想の自分の姿をしっかりと思い描いて、そうなるように努力する。時には既にそうなってしまったかの様に自分を信じ込ませて振舞ってみる。他人からこう見てほしい、という自分に自分を変えていく。それはビジネスの世界でも結構大切なことかも知れません。

 私も偉そうに人の世話ばっかじゃなくて(笑)。自分自身のことも、もっと意識して努力しなくっちゃですね!



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 一昨日は3.11。テレビも新聞も大震災一色でしたね。街なかでも、あの日と現在の被災地に思いを馳せ、明日への復興支援を目指す催しがたくさんあったみたいです。
そんな1周年を迎えて、自分は一体何をやってきたのだろう、という思いが改めてつのります。何かしなければと思いながらも、ささやかな募金くらいしか出来ないまま時は過ぎていきます。
 それでも自分までが暗く落ち込むんじゃなくて、自分に出来る身の回りからでも元気を広げていくのがまずは大切なのかな。そんな気持ちでこれからも頑張っていきたいと思います。

 
−an 弾手−
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