第421回「熊本県立劇場OBOG会パーティー演奏・完結編」

[2012.11.6]

 長過ぎず短過ぎず、自分のピアノ演奏の持ち時間、1st Set 30分、2nd Set 50分ぴったりに弾き終われるよう、約28曲の演奏時間と数曲毎のアドリブタイム(緩衝時間)を時刻表のようなリストにして本番当日の会場へ持って出かけたan弾手でしたが…。
(前回、第420回の続きです)

「はい、今日はこの予定で進めますから」
と、その場で渡された本番用の進行表を見たら…。
ガーーン、当初6時40分から7時30分とお聞きしていた2nd Setが、6時47分から7時30分、となっているではありませんか。まあ、たった7分短くなっているだけですが、それでも曲数にしたら2〜3曲分になり、用意した曲目リスト時刻表通りに弾いていったら2〜3曲残して7時30分が来てしまう。それも、予定曲を弾き残して終わるだけならいいとしても、演奏の途中で7時30分になってもそこで急には終われないし、一旦弾き始めた曲を最後まで弾いていたら予定の7時30分をオーバーしてしまうかも知れない。
どうしてこんな細かいことにこだわるのかと言うと、今日は自分の演奏のためにこのパーティーがあるのではなく、パーティーの和やかでスムーズな進行のために自分の演奏があるのですから、現場の進行時刻表に自分の演奏をピッタリ合わせるのが自分の役目だと思うんです。

空いたテーブルをさりげなくお借りして、持参した曲目リスト時刻表の修正を始めました。当初予定より7分短くなっているので、思い切って2曲削除!これで4分20秒短縮。あとまだ2分40秒オーバー。これは途中の時間調整用に3回入れているアドリブタイム部分で時間短縮しよう。
そして、改めて最初の曲のスタート時刻を6時47分に変えて、順次経過時刻を書いていき、最後の曲の長さが3分11秒の予定なので、7時27分ちょうどに最後の曲を弾き始めるように曲目リスト時刻表をガーッと手書きで修正っ!(11秒は弾きながら何とかなるだろう)。
本番では、ピアノの上に置いたデジタルウォッチとこの時刻表とを見比べながら、無事、時間ぴったりに弾き終えることが出来ました。
ぴったりに弾き終える重要性は、演奏の後に次のプログラムがビッタリ入っているからです。7時30分からは参加者の方が1人ずつマイクを取って近況報告をされるプログラムになっていて、それが約60分は必要らしい。たとえ1〜2分でも私の段取りミスで演奏が延びて後の予定がずれるのは避けなければなりません。かと言って演奏が予定より数分も早く終ってしまっては、何だか演奏者としては手抜きしているみたいだし(笑)。

という訳で、修正時刻表を使ってウラの重要任務・時間管理は何とか出来たのでしたが、もう一つ肝心なオモテの重要任務、演奏の出来はどうだったのか、というと。
まあ、いつもの事ながら、途中チョロチョロとミスタッチはありましたが。それでも何とか曲の流れを切らすことなく、よく言えば臨機応変に、悪く言えば誤魔化しながら(笑)、最後まで何とかつないで行けた、かな?

演奏が終り参加者の自己紹介タイムも終り雑談タイムに入ってから、久し振りにお見掛けする懐かしい方の席へ数ヶ所、ご挨拶。
「最初しばらくは誰が弾いているのか分かりませんでしたよ。今日はプロの生演奏が入っていてリッチだなあ、なんて思ってました」
って、いきなりの社交辞令から会話が始まったり。
「よかったです!癒されました〜」
って、逆に私が癒されるような言葉を掛けて頂いたり。
「本買いましたよ!まだちょっとしかやってませんけど」
なんて、思いがけず私の本の読者の方がいらっしゃったり。
和やかな雰囲気の中で、私もすっかり楽しませて頂きました。

いつもハイレベルなプロの演奏に接していらっしゃる熊本県立劇場職員の方のパーティーでピアノ演奏なんて、本当にこの様な機会を頂いたことに感謝です。また何かありましたら、是非お声を掛けてくださいませ!(って、営業トークで締めくくり?)
いえいえ、今回の様に追い込まれて切羽詰らないとなかなかまとまった練習もしないもので。今年はこの後年末にかけて多分数回は人前ピアノが入る予定だし。今回、秋冬の季節に違和感の無い曲を30曲近くまとめて練習させて頂いたお陰で、しばらくはこの持ちネタで行けそうです(笑)



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 だいぶ途中時間が経ちましたが、7冊目となる私の次の本の最初の校正(初校)が出版社から送られてきました。レイアウトされて本のページの形になったものを見ると、ページの区切りの都合でスペースに空きがあったり、ここはもう少し説明を追加した方がいいかな、と思うところがあったり、総ページ数にまだ余裕があるので参考曲を追加できるかな、とか、まだまだ手を入れないといけないところがたくさんありそうです。
校正待ちでしばらく手を離れていた執筆作業ですが、出来上がりの本の姿をイメージしながら、大変だけどやりがいのある作業をまた再開します。

 
−an 弾手−


第422回「7冊目のan弾手の本、追込み中!」

[2012.11.14]

 ふぅ、やっと完了!
挨拶状を1枚添え、大きな封筒の口をガムテープで閉じ、宅配便の送り状を書き、集荷依頼の電話をしてひと段落です。

私の7冊目となる次のピアノの本。出版社から1週間ちょっと前に最初の校正(初校)が届いて赤字入れと追加原稿を急いでいたのがやっと完了。昨日までその作業を優先していたので、こちらのan弾手コラムの原稿になかなか掛かれず、今回は更新が1日遅れてしまいました。
初校が完了、とはいってもまだ巻末に追加する参考曲の最終選曲と原稿作成作業が残っています。最終的に巻末に使えるページ数が見えてきたので、この後出版社と打合せしながら詰めていきます。

という訳で、2004年10月に最初の本、「お父さんのためのピアノ教室」が出てからあっという間にもう8年経ったんですね。これまで教本、曲集、読み物など計6冊の本をドレミ楽譜出版社と講談社から出していただいたのですが、おかげ様で今回7冊目の本ということになりました。今度の出版社はドリーム・ミュージック・ファクトリー(株)という、楽譜専門の出版社です。
大人になってからピアノを始めた素人おじさんが、まさか自分でも思いもしなかったようなピアノ関連の本をこのように何冊も出させていただけるというのも、これまで私の本を買っていただいた全国の沢山の皆様のお陰です。一つの本が売れる度に、出版社からも次の本のご相談をいただくことが出来たのだと思います。
本当にありがとうございます!

ところで、今度の本の内容は?ということですが。
基本的に、私はあまり高度なことは書けません。それに高度な話しであれば既に沢山の著名な先生方が立派な本を書かれていますし、今さらan弾手なんかが割り込んで書く分野でもないのかなと思っています。
私に書けるとしたら、やっぱり自分と同じように、大人になってピアノを楽しみたいと思っている人達が気ままに楽しくピアノと遊べるような世界を提供することでしょうか。
「ふーん、まぁそれは分かったけど、じゃ何冊も本書いて、今度はこれまでの本と何が違うの?」
って突っ込まれそうですね(笑)

はい、基本的には同じです(爆)
でも、基本は同じでも伝えたい事は沢山あって、その中から1冊の本で書ける範囲は限られているんです。本の最初から最後まで話のストーリーが1本きちんと通るようにするには、他に関連することで書きたいことがあっても必死で我慢しながら書いているんですよ。
言いたい事をあれもこれも書いてしまうと、それぞれは正しい事でも話が混乱して、結局分かりにくくなってしまうんですよね。ですから、100ページ前後の本の中に書ける事はどうしても限られてしまいます。
そして、同じ理論を説明するのにもアプローチの仕方は色々あって、一つの本の中では一つのアプローチでしか書けません。

そんなこんなで、分かっている人が見たら
「結局、言ってる事は同じじゃん!」
と言われるかも知れませんが、今回の本ではこれまでの本には書けなかった切り口も色々取り入れてみました。

このコラムでもずっと以前に書いたことがあるんですが、教本って1冊だけを丹念にマスターするのももちろん素晴らしいのですが、それとは別に、似たような本を沢山手にして、たとえつまみ食いでも色々やっているうちに「そうだったのか!」と気付く事がよくあるんですね。同じ事をちょっと違う切り口で学ぶ事で、これまでしっくり来なかった事がスーッと体に入ってくる、みたいな。
私の本も、そんなノリで使っていただけたら嬉しいなぁ、と思います。

今回は出版社からのご提案で、巻末に新しい発想の参考楽譜と解説を載せることになりました。いえ、変な使えないような「新発想?楽譜」じゃないですよ。私よりちゃんとしたプロのアレンジャーの方が書いた普通の立派な楽譜なんですが、その弾き方(使い方)を本書の内容に沿ってan弾手流に解説してみよう、という企画です。
そんな本、私もこれまで見たことないし、きっと業界初の企画になるのでは(笑)

って、少々大げさですが。
これからその部分の追加原稿書き、楽しみです!



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 先週から、会合やらライブやらで夜の街続きです〜。先週末はこのコラム第390回「私は女優?」で書いたヴォーカリストさんのライブで、以前と見違えるようにすっかり「女優」に成り切った彼女のステージに感無量(笑)でしたし、今週は月曜から異業種交流パーティーやら文化芸能関係者のパーティーやら、今夜はお取引先様との会食やら。
まだ忘年会モードじゃないんですがちょっとハード?体調管理に気を付けなきゃ。

 
−an 弾手−


第423回「目に見えない力に導かれた?青木カレンLIVE」

[2012.11.20]

  「じゃ、これからジャンケン大会をしたいと思いま〜す!皆さん、いいですかぁ〜!」
一昨日の日曜日に出かけたライブ会場。ヴォーカルの青木カレンさんがマイクを持って叫んでます。
「賞品はですね〜、ひとつはこのクマさん!チョコレートも付いてま〜す!もうひとつはこの鳥の羽のアクセサリー!男女どちらでも使えるようにユニセックス的な色で、このお店のオーナーでデザイナーのアコさんに作ってもらいました〜!」

そう、その日のライブはアクセサリーショップの店内に椅子を並べた会場。キラキラと輝くお洒落な女性用アクセサリーの陳列棚に囲まれたそう広くない店内は、ぎっしり50人程のお客さんで埋まり、最前列と出演者の間が人ひとり通れるかどうか!?みたいな膝突き合わせた熱気ムンムンのライブでした。

L’oiseau bleu presents「青木カレンLIVE」。
私、申し訳ないことに青木カレンさんのこと何も知らないまま、知人に頂いたチケットで「ん?青木カレンさん?誰?」みたいな気持ちで出かけたのでしたが…。

狭い会場にギターの音が流れ始め、やがて青木カレンさんの歌が始まった途端、ゾクッとして「あ、プロだなぁ!」と思ってしまいました。プロだなぁ、なんて失礼な言い方ですが。青木カレンさん、ライブ途中の自己紹介やその後私がネットで調べたところによると、数々のテレビ・ラジオ番組のレギュラー出演、映画の挿入歌、沢山のCDアルバムリリース(最近は舘ひろし氏とのデュエットも)、各地のライブツアーなどで活躍中のすごい人でした。ギターの田辺充邦さん(こちらも私は存じませんでしたが)も数々の有名な女性ヴォーカリストとの共演をされているみたいで、最近では八代亜紀さんのジャズCDのギターを担当されたそうです。

そんな経歴は別にしても、狭い会場で聴く素敵なジャズヴォーカルとギターのDuo。ラブ・ミー・テンダー、サマー・タイム、クライ・ミー・ア・リバー、スマイル…。私にも耳馴染みのあるスタンダードも沢山あって、すっかり癒されたひと時でした。

で、そのライブの途中であったジャンケン大会なんですが。
青木カレンさんと会場のみんなとの勝負。「最初はグー!ジャンケンポンッ!」みたいに手を上げてジャンケンしながら青木さんに勝った人だけが残っていくんですが、なんと最後の3人まで私も残ってしまって、いよいよ次のジャンケンポン!私以外の2人のお客さんはグーとチョキ、私がパー。で、青木さんは?…「グー」。
なーんと!私が勝ち残ってしまったのでした(こんなジャンケン大会でこれまで勝った記憶なんてないんだけどなぁ)。
という訳で、素敵な鳥の羽のオリジナルアクセサリーGet!

上質な歌とギターに癒され、素敵なアーティストに出会い、その上プレゼントまで頂いて。帰宅してから、チケットをくれた知人(その日は主催者側で会場のお世話係?)にお礼のメールをしたら
「今片付けを終わって帰ったところです。今回は場所の都合でピアノが無くてちょっと寂しかったですが、いつもと違う貴重なライブだったかも。やっぱり音楽はいいですね!それにしてもジャンケン大会はさすがan弾手さんと思いました。きっと音楽で繋がる何かの力が働いたとしか思えません。よかったです!」
と、嬉しいメールを頂きました。

何も分からずに行った、とあるビルの2階の不思議な空間でしたが、帰りにはすっかり癒されてハッピーになった自分がいました。
目に見えない力に導かれた(と信じましょう)素敵な出会いに感謝です。ありがとうございます。



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ちょっと、ひと言。

 昨日、今日と、熊本は穏やかな天気です。仕事でちょっと郊外まで車を運転していると、車窓の風景がとても穏やかに見えました。ローカル郊外電車のホームのベンチに掛けているおじいさん。バス停に立ってスマホを覗いている女子高生。民家の壁に差す柔らかな午後の陽。片側1車線で渋滞ぎみの道も、不思議とイライラせずに走れました。
師走で先生方が走り出すまでのあと僅かの時間。息を整えて過ごしてみるのもいいかもです。

 
−an 弾手−


第424回「恋と革命とピアノ」

[2012.11.27]

 「脳の海馬が活性化し学んだことを自分の知識、能力として身につけるのは、《恋と革命》」。

毎朝、出勤の車の中で聴いているカーラジオ。よく流れてくるのが武田鉄也の「今朝の三枚おろし」という番組です。皆さんもよくご存知かも知れませんが、武田鉄也が気になる本の内容を紹介しながら鉄也流に三枚におろしていく、という趣向です。本の内容紹介はもちろんですが、彼流の解釈、おろし方が面白くていつも楽しみに聴いています。
今回はそんな中から、だいぶ前の放送になりますが「恋と革命」というお話し。

前後の詳しい話は忘れましたので実際の放送内容とは違っているかも知れませんが、an弾手流に記憶に残っているのが冒頭のフレーズ「脳の海馬が活性化し学んだことを自分の知識、能力として身につけるのは、《恋と革命》」。

その1.恋。
そのことに対して《恋》のように心ときめき、想い続け、快感や満足感を得ること?時には想いが叶わず辛い気持ちになることがあっても、それでも理屈抜きに求め続けていくこと?
その2.革命。
たとえ身の危険があっても、既成の枠を超える発想、理想の姿を掲げて突き進む勇気?壁を乗り越えていく工夫、チャレンジ?

そんな時、脳の海馬が活性化するんだって。学んだ事が自分の知識、能力として身につくんだって。まあ、確かにそれだけ強力に思い続けたら脳も活性化するだろうなぁ。それに関わる知識、能力も身につくだろうなぁ。

…と思いながら車を運転していたのですが、ふと、自分のピアノに置き換えてみたんです。
ピアノに対して《恋》のように心ときめき、想い続け、快感や満足感を得ること。時には想いが叶わず辛い気持ちになることがあっても、それでも理屈抜きに求め続けていくこと。
自分の指先から、自分のつぶやきのように音が流れ出てくる時の快感。客観的な上手下手は別にしても、コード奏法を始めてからそんな快感を感じるようになったのは事実です(これを私は「鼻歌ピアノ」と呼んでいます)。想いが叶わず辛い気持ちになることもしばしばですが、それでも一度知ったあの快感は忘れられません。
そして革命。人前ピアノはある意味、革命のようなもの?第一、身の危険がありますから(笑)。何が起こるか、やってみないと分かりません。そんな中で理想の姿を掲げて突き進む勇気、壁を乗り越えていく工夫、チャレンジが必要です(まぁ、大げさな!)。

でも、そんな風に置き換えてみると、何とまあ、ピッタリ当てはまることか!
ピアノに恋をし、革命にチャレンジする。いやいや、そんなカッコいいことじゃなくて。自分のタラタラピアノに酔いしれ、ちょっとした人前ピアノをドキドキしながらやらせてもらう?

まあ、何と平和で楽しいことでしょう。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 今年のゆるキャラグランプリは愛知県の「バリィさん」が1位を獲得したみたいですね。ところで昨年グランプリをとった熊本県の「くまモン」は今やすっかり全国区。その活躍振りは留まる所を知りません。街なかどこに行ってもあちこちにくまモンがいるし、山の中でもバッタリ生きたくまモンに出会ったり。今この原稿を打っているパソコンの横にもくまモンの携帯スタンドが鎮座してます。私の本業でも、随分くまモンが登場する作品を創らせていただきましたぁ。今やくまモンさえくっ付けとけば売れる!みたいなところがありますが。
さて、今年もあとひと月ちょっと。
くまモンもまた一段と忙しく駆け回ることになるんでしょうね〜。

 
−an 弾手−


第425回「ピアノで歌えてる?」

[2012.12.4]

 「あなた、ピアノ始めてから何年位になるんですか?いえ、ちゃんと歌えてるなぁと思って…」

その日、私が3曲弾き終えて席に戻ると、同じテーブルの空いている席に知り合いのピアノの先生が掛けてきて、そう聞かれたのです。
「歌えてる、って?どういうことですか?」
「ピアノでちゃんと歌ってる、ってことですよ。これがね、普通なかなか出来ないんですよ」

その日は来年3月に開催される「第4回オハイエくまもと・とっておきの音楽祭」の実行委員会と交流会。私も前回の第3回の時からボランティアとして少しお手伝いをさせていただいているのですが、今年はなかなか実行委員会やオハイエ音楽隊の練習指導に顔を出す時間がなくて、やっとこの日の交流会に参加したのでした。
広いライブレストランで開かれた交流会では、プロのミュージシャンの方も何人も来られて演奏で盛り上がり、私も会長から「あなたも何か弾いてよね」と声を掛けられて。この会の皆さんの前では初めてピアノを弾かせてもらったのでした。
この会の皆さん、実はピアノの先生や楽団員など音楽関係の人も多く、私もそんなプロの皆さんの前で少し緊張しながら弾いたのですが。弾き終わって席に戻るとキャリアの長いピアノの先生から冒頭の言葉、「歌えてますね〜」という言葉を掛けていただいて、ちょっと嬉しくなりました。
というのも、日頃から自分が感じていたことを言い当ててもらったようで。

いえ、私うまく弾けるんですよ、って言いたいんじゃないですよ。
この「歌う」という言い方、実は同じ様な意味を私はずっと前から意識し、言ってきたのです。その言葉が「鼻歌ピアノ」。
このコラムの第51回から使っている「アナ鼻ピアノ→アナタも鼻歌をピアノで歌えるようになる!」という言葉。これがまさしく「ピアノで歌う」という感覚で、それをズバッと言っていただいたので嬉しかったのです。

この「ピアノで歌う」という感覚を私が最初に意識したのは、ピアノアレンジ譜の丸暗記奏法に挫折した後コード奏法を始めて間もなく、「楽譜に弾かされる」から「自分の気持ちでピアノが鳴ってくれる」という感覚を感じた時です。
ピアノアレンジ譜では弾くべき音が全て音符で書いてあり、弾く時は間違わないようにと集中しながら、音符通りに指を動かしていきます。すると自動的に(?)作曲家(アレンジャー)が意図した音の響きになっていくのですが、弾いている自分としてはどうしても弾かされている、という感覚はぬぐえませんでした。何度も練習して暗譜で弾けるようになっても、やっぱり自分の心の歌には遠いのです。ところがコード奏法では弾くべき音が音符として書いてありません。メロディーとコードだけ、極端な場合はメロディーの表記も無くコード・ネームの進行だけ、みたいなのもあります。最初は戸惑うのですが、少し慣れるとコード進行を見ただけで次の音の響きが自分の中に浮かび、思わず「鼻歌」でも口ずさむように次の音を弾いているのです。するとイメージした通りの響きが自分の指先から聴こえてくる!その快感といったらたまりません。
そんな気持ちで弾くので、「歌えてる」という風に聴こえるのでしょうか。

もちろん、ピアノアレンジ譜でもちゃんと訓練をすれば「歌うように」弾けるのでしょうが、冒頭のピアノの先生もおっしゃっているように「これがね、普通なかなか出来ないんですよ」ってことでしょうね。
それがコード奏法だと、似たような感覚が全く別のアプローチで早い時期から可能になる、というのがスゴイところです。

ただ、歌うことに酔いすぎて独りよがりにならないよう、日頃から自分で弾きながら自分の音を演奏者としてだけではなく、もう1人の他人の気持ちでも聴くように意識しているつもりですが、その「他人」に「歌えてる」と感じてもらえるように、これからも頑張ってみようと思います。鼻歌楽しみながら。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 とうとう12月になってしまいましたね。すっかり冷え込んできて、ついこの前まで「秋だ、紅葉だ」と言っていたのに、もう名実共に冬。今年もあと4週間とは実感がなくて信じられませんが、本業の方でお客様からご依頼頂いているオリジナルデザインカレンダーの納期など、仕事の追い込みも気になっているところではあります。
皆様も風邪などひかれませんよう、元気で年末をお過ごしください。

 
−an 弾手−


第426回「今出来る小さな一歩から」

[2012.12.11]

 「キャ キェ キ キュ キェ キョ キャ キョ、シャ シェ シ シュ シェ ショ シャ ショ…」「お綾や親におあやまりお綾や八百屋におあやまり…」

最近、街なかで変な念仏を唱えながら車を運転している怪しいおじさんが出没してます。
…って、実は私のことなんですが(笑)
何やってるのかと言うと、実は先日から「スピーチトレーニング講座」というのに通い始めたんです。まだ1回だけで、この先来年の5月まで半年間の講座です。で、いきなり宿題を出されたのが口の運動と滑舌(かつぜつ)の練習。次回テストをやるそうで、以来、毎日声出しの練習です。でも人に聞こえる所では恥ずかしいので、ついつい車の中でやってます。この前、信号待ちの停車中にやっていたら、横を通りかかった女子高生が不審げにジーッとこちらを見ていました。1人しか乗っていない車の中で口をパクパクしているのが怪しかったんでしょうね〜。

しかし、何でまたスピーチトレーニングなんかを?とお思いでしょうが。
これもまた「人前ピアノ」のための練習のつもりなんです。これまで何回も人前でピアノを弾かせていただいて、だまってピアノだけ弾く場合もあれば、演奏の合間に何かおしゃべりを挟む場合もあったのですが、自分でも「しゃべりがヘタだなぁ」と思うことが多くてですね。それに、少し疲れている時など普段の会話でも声が上ずっていたり滑舌が悪かったりするのが気になっていました。
きちんと話す、気持ちを伝える、ピアノの演奏も含めたその一瞬のドラマを、聴いてくれている人にちゃんと伝え広げる、というのはとても大切なことかなぁと、以前から気にはなっていたのですが、どうしたらいいのか、なかなか具体的なきっかけがなくてそのままになっていたのでした。
それが先日たまたま新聞の広告で「スピーチトレーニング講座」というのを見掛けて、自分がイメージしているのとは少し違うかなぁ、とか、わざわざ半年も通うのは面倒だなぁ、とか思い逡巡したのですが、最後はいつもの座右の銘「迷った時はやってみる!」に従って、何とか開講日の前日になって申し込んだのでした。

1回目を受講して思ったこと。やっぱり受けてよかった!まだ先は長いですが学ぶことがたくさんありそうです。
口の運動の自主トレ(?)にしても少し続けてみただけで普段の会話も滑らかに声が出るような気がしてきましたし、何となく気持ちが沈んでいる時も繰り返し大きな声を出すことで気分が明るく前向きになれるような気がします。

まあ、他人のことは何かと気付いても自分の姿はなかなか見えにくいもので。このコラム第390回「私は女優?」に書いたように「ステージに立った瞬間、自分は女優だって思い込んでそう振舞うこと」なんて人には偉そうなこと言っても「an弾手さんは人前ピアノの時にはそんな気持ちになって弾いてるんですか?」と聞き返されると、つい「いや、自分の事はまた別で…」なんて口ごもっていましたが、少しは自分自身も変えていかなくてはですね。
単なるトークだけではなくて、気持ちに余裕を持って人前に出ることでピアノ演奏そのものにもいい影響があるような気がしますし。

まずは、今出来る小さな一歩から、ですね。



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 寒いです。いや、全国にはもっともっと寒い地域がたくさんあって「それぐらいで何言ってるんだ!」と叱られそうですが。でも、ここ熊本も寒いです!朝起きると家の隣の畑は真っ白な霜で凍り付いています。先日は平地でも雪が降りました。
でも、寒くても、いえ寒いからこそ、心は暖かくしていたいものですね。

う…、それにしても寒い(笑)

 
−an 弾手−


第427回「出会いの不思議」

[2012.12.18]

 「もしかして、あなた本とか書いてません?」
テーブルの相席になった女性3人組の1人から突然そう聞かれました。
「あ、はい、書いてますけど。ご存知なんですか!?」

古い木造の倉庫を改造したような、そのライブハウス。きしむ木の階段を上った2階がレストラン兼ライブ会場です。レトロな照明が下がったそう広くない空間に木のテーブル。 その日は県外から来たジャズピアニストとギタリスト、それに地元のヴォーカル2人によるライブに行ったのでした。

「奥から掛けてくださいね。後で来た人が中に入れませんから」
入り口でマスターからそう言われて一番奥のテーブルに1人で掛けます。やがてどんどん人が増えてきて私のテーブルにも見知らない人が相席で掛けてきました。その女性3人組も。
3人の会話を聞くともなく聞いていると、一人は少し前までジャズピアノを習っていたらしい。
「最近○○先生に会ったら、また始めてみないか、って言われちゃってね〜」
そんな声が聞こえて来ます。
あれ、○○先生って?私も知ってる〜。知ってるも何も、私も以前ちょっとだけジャズピアノを習ったことがある先生だ。
思わず私が
「その○○先生って、私も以前少しだけ習った事がありますよ」と言ったら。
その女性、しばらくジーッと私の顔を見て
「もしかして、あなた本とか書いてません?」
「あ、はい、書いてますけど。ご存知なんですか!?」
「やっぱり。さっきから何となくそんな気がしていたんですよ。本、持ってますよ」
「えーっ!私の本の読者さんなんですか!?ありがとうございます!」
そう言ったら、隣のもう1人の女性が
「私も持ってますよ」
「え〜〜〜っ!そうなんですか!?で、どの本ですか?いくつかあるんですけど」
「えっと、40歳からのピアノ入門、だったかな」
「ああ、講談社の新書版ですね!で、読まれていかがでした?」
「はい、とても面白かったです」

嬉しいです!(あ、もっとも著者を前にしてつまらなかった、とは言いにくいでしょうけど…)

もう1人、3人目の女性は小さい頃クラシックピアノを習った経験はあるけど、ジャズはあまり聴いたことがないらしく、こんなライブの店にも今日一緒の女性に誘われて初めて来たんだとか。
「私、ジャズってよく分からないんですよ」
「私もやっているのは本格的なジャズじゃなくて、いわゆるコード奏法なんですけどね」
「え?コード奏法って?」
という訳で。ここで突然ですが。
得意気(?)にコード奏法のウンチクを語り出すおじさん(笑)
「ほら、あのピアニスト、ピアノの前には紙一枚しか置いてないでしょ。あれにコードが書いてあって、そのコードを使って自分でアレンジしながら弾いていくんですよ」
「へえ〜、そうなんですか」

思わぬところで私の本の読者の方との出会い。ありがたいことですね。
知らないところで、誰か知らない人が私の本を手にとって下さっているという不思議。読んで何かを感じて下さっているという奇跡。どこか知らないところで、誰かの小さなお役に立っているかも知れないという幸せ。

そんな目に見えないつながりが確かに存在するということを、改めて実感させていただいたその夜でした。



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ちょっと、ひと言。

 先日、車で夜の街に出たら街なかの駐車場がどこも満車!道路も裏道まで渋滞で、やっと出庫中の車を見つけて駐車出来るまで1時間近くもかかってしまいました。歩行者も深夜まで歩道にいっぱい溢れていて、どこが不況?って感じですが。
あと2週間、この調子であっという間に過ぎていくんでしょうね。さて、資料が溜まっているデスク周りの整理もいい加減進めなくては。

 
−an 弾手−


第428回「今年もありがとうございました!」

[2012.12.25]

 本当に一年が過ぎるのが早過ぎです!
もう12月も25日。来週の今日は2013年の元日なんですね〜!信じられません。

今年もこの「an弾手のピアノ奮戦記」や私の本の読者の皆さま、本当にありがとうございました!こうして毎週コラムを更新出来るのも、今もこうしてこのページにアクセスして読んで頂いているあなたのお陰です。次の新しい本の構想や原稿に掛かる意欲が湧いてくるのも、どこか私の知らない所で私の本を手に取り、何かを感じて頂いているあなたのお陰です。
だいぶ前にも同じ様な事を書きましたが、一人パソコンに向かって原稿を打つ作業はどことも知れない宇宙に向かって独り言を言っているようで不安なのですが、読者の方から色々なメールを頂いたり、お会いした人から「読んでますよ」と声を掛けて頂ける瞬間、「ああ、繋がっているんだなぁ」という実感が湧いてきて、また次の原稿に取り掛かる勇気を頂いています。本当にありがとうございます!

そんな訳で。今年は5月29日にこのコラムも400回を迎える事が出来て、400回感謝特別号を出させて頂きました。それに今年はこのコラムを書き始めてから10周年という節目の年でもありました。
5月といえば、ゴールデンウィークには清和高原の新緑の中で「季節の彩・an弾手ピアノTime」と題して昼から夜まで演奏させて頂きました。その後は夏の同窓会でのバンド演奏、知人の結婚披露宴でのジャズヴォーカルの伴奏、熊本県立劇場OB・OG会でのソロピアノ演奏など、色々なシーンでの演奏の機会を頂きました。ありがたいことです。まだこの後も残りの1週間、演奏の機会があるかもしれませんが今年の最後を楽しく締めくくれればと思っています。

そして延び延びになっていた私の7冊目の本の校正もいよいよ大詰め。昨日も出版社の方と電話でこの後の予定の打ち合わせをしたところでした。大人の初心者のためのコード奏法入門書、という位置付けはこれまでのan弾手既刊本と同じなのですが、出版社の方も「こんな切り口を入れたコード奏法入門書はこれまで見たことがない」と言われるような、新しい、それでいて初心者なら誰もが疑問に思いそうな盲点?をフォローする解説を盛り込んだつもりです。多分、年明けのあまり遅くならない時期には出版になるのではと思っています。私にとって、新年のまず最初の大きなイベントになりそうです。

不思議なご縁で、ピアノというキーワードで繋がったたくさんの皆さまと、これからも楽しいピアノライフの輪が広がっていきます事を、楽しみにしています。
どうか皆さま、風邪などひかれませんようご自愛の上、師走の残りの日々を有意義にお過ごしください。そして、新しい年が皆さまにとって素晴らしい年になりますように!

この一年間、本当にありがとうございました!



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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ちょっと、ひと言。

  コラム本文にも書きましたように来週火曜日は1月1日。という訳で、来週は本コラムの更新はお休みさせて頂きます。次の更新は1月8日の予定です。
ところで、今日(25日)は私が尊敬する作曲家・ピアニストの志娥慶香(しがけいこ)さんとアルトサックス奏者・三浦穣さんのクリスマスライブ。2人とも米国バークリー音楽院卒で数々の実績を積まれている実力派です。夕方定時までに仕事を片付けて行って来ます〜!

 
−an 弾手−


第429回「これも人前ピアノの度胸訓練?」

[2013.1.8]

 暮も押し詰まった去年の12月27日。
その日はこのコラム第426回で書いた「スピーチトレーニング講座」の第3回目、他の受講生の前でスピーチをやる、という実践訓練でした。課題は「嬉しかった事、感動した事、感激した事、など、自分の実体験を2分間で話す」というもの。時間オーバーはダメ、原稿丸暗記もダメ、という条件。
話の構成や事前準備の要領、実際に話す時のポイントなど、なるほど〜!と思うようなことを講義でたくさん教わったのですが、有料の講座ですしその内容をネット上で詳しく書くのはルール違反になると思いますので、具体的には書けません。
ただ、その時私が取り上げた話のテーマが自分のピアノネタだったので、自分がスピーチした内容だけならこ こでご紹介してもいいかな、と思いまして。

実はスピーチの準備期間は2週間あったんですが、「まだ2週間ある〜」と思っているうちに師走のバタバタにまぎれてあっという間に日にちが過ぎ、気が付いたらもう講座の前日!(ん?何か人前ピアノの準備と似てる)
ヤバッ!急いでテーマを決めて話す内容を考えなくては!と焦り、このコラムのバックナンバーで何か使えそうなネタはないかと探したのでした。ここに書いているのは全部自分の実体験なので。
で、何とか2分間スピーチのネタになりそうかな、と思ったのがちょうど1年前の第384回「母のベッドの横でキーボード」でした。

原稿丸暗記はダメ!と言われていたのですが、2分間スピーチってどの位の長さなのかも分からないのでとりあえずスピーチ原稿にしてみました。
かなり短か目にまとめたつもりで試しに読んでみたら…。あれっ、3分越してしまう〜!3分の2以下にしないとダメだ、ってことで。短く短く削りに削って何とか2分ぎりぎりで納まる長さにしてみたのですが、起承転結を付けて2分以内で話す、というのはほんと難しいですね。

話の中身は第384回とほぼ同じですが、それを2分間スピーチにした下書きを載せてみますね。

『あれは確か、今から2年前の、まだ肌寒い早春の出来事でした。
高齢の母が1人で歩けなくなり、老人ホームに入居することになったのです。
入居した部屋の窓から外を見ると、目の前に広〜い広場があり、その真ん中にすっかり葉を落とした一本の大きな木が立っていました。
私が母に「ほら、あの木、形がいいね〜」と言うと、母も「そうね、いい形してるね」と言っていました。

それから毎週、私は週末になるとその部屋を訪ねては母と話をしながらその木を眺めるのが楽しみになりました。
ある時思い立って、自分の家にあった小さなキーボードを持って行きました。
母のベッドの横にキーボードを置くと、ちょうど目の前の窓から広場の木が見えます。私はその木を眺めながら、母が知っていそうな曲を思いつくままに弾いてみました。すると母は曲に合わせて次々に歌ってくれました。歌っている時、母の顔は少し明るくなった様な気がしました。

やがて広場の木には新緑が芽吹き、うっそうとした緑になり、そのうち黄色くなって、また裸の枝ばかりになっていきました。
そんな風景の移り変わりがふた周り過ぎて、母はもう94歳になりました。

あと何回、この風景を一緒に見ることが出来るのだろうと思いながら、今も週末になると母の部屋へ行っては、キーボードを弾いています』

実際はこれをもう少し自然な話し言葉にしてスピーチしたつもり(?)ですが、途中でつかえたり、言い回しが変わって長くなったりして、やっぱり2分間で収めるのは至難の業でしたぁ。

また次回の講座(もう明後日!)でも別のテーマでの2分間スピーチをしないといけません。大変ですけど、これも多少は人前ピアノの度胸訓練になるかなぁ。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

  もう年が明けてから1週間が過ぎましたが、新年最初のコラム更新です。
明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします!
皆さま、どんな新年をお迎えでしょうか。私はいよいよ次の本の最後の詰めの段階です。巻末の参考曲で少し時間が掛かっていますが、ここを過ぎれば一気に刊行の予定が見えてくるのではと思います。はっきりしましたらまたご案内いたしますので、どうかよろしくお願いいたします。
また、しばらくご無沙汰していました東京「弾手の会」の皆さまからも新年のメールを頂きました。嬉しいです。今年はまた久し振りに交流の機会が持てればいいなぁと思っています。

 
−an 弾手−


第430回「プロ・アレンジャーとan弾手の初コラボ!?」

[2013.1.15]

 …っと言っても、ライブやる!って訳じゃありませんから(汗)。
次の本の話です〜。

もう2ヵ月経ってしまいましたが去年の11月14日。コラム第422回で「7冊目のan弾手の本、追込み中!」を書いてましたね〜。それなのに、実は昨日までの3連休はまたまた家にこもって追加原稿に追われてました〜。
「え?まだ何やってるの?」
自宅の電子ピアノ横のテーブルに楽譜や書き掛けの原稿を広げてゴソゴソやってたら、家人からそう言われてしまいました(笑)。

いえいえ、2ヵ月前は初校を戻した話でしたが、その後出版社からその修正をした第2稿が送られて来て、その修正指示も12月に戻しました。で、最後に懸案として残っていたのが、今回新しい試みとして巻末に入れることになった参考楽譜の件。今回の編集作業を進める中で、出版社の方からこんな相談があったんです。
「コードでの弾き方を学んでも、あの曲を弾きたい、と思って楽器店などに楽譜を探しに行くと、並んでいるピアノの楽譜はみんな二段のアレンジ譜ですよね。そんなアレンジ譜を手にした人が、本書で学んだコード奏法をうまく応用しながら弾けたらいいですね」

なるほど。私自身は二段のアレンジ譜を見ても、ほとんどメロディーとコードだけを見て自分流のコード奏法で弾いてしまうのが当たり前になっているので全く違和感はなかったのですが、確かに、ピアノ経験の浅い多くの人はアレンジ譜のたくさんの音符に目が行って、「難し〜っ!」ってなってしまうかも知れませんね。

そこで、今回、出版社から思わぬご提案が。
「いつもこちらでお願いしている専門のアレンジャーの方に今回の本のためにアレンジ譜を起こしてもらおうかと思います。それを使ってan弾手さん流コード奏法を応用したらこうなる、という弾き方の解説をしてもらえませんか?」
(えっ?プロのアレンジャーの人が起こしたアレンジ譜を、私が勝手にいじっていいんですか?)
「アレンジャーの方にはご快諾をいただきましたので」

という訳で!
曲目等を何回かやり取りをしながら、専門のアレンジャーの人が本書のために新たに書き起こした二段のピアノ・アレンジ譜の最後の1曲が送ってきたのが1週間前。私はそれを見ながら、本書のコード奏法を勉強したピアノ初心者の人が、そのアレンジ譜を見て何をどう解釈し、どこをどう変えて読めばうまく自分流に弾けるか、という解説を考えていたのでした。
実際の本には、専門のアレンジャーの人が書いた二段譜と、それを基に私an弾手がコード奏法的に演奏したらこうなる、というコード奏法演奏例の二段譜が並んで載ることになります(ほら、プロ・アレンジャーとan弾手のコラボでしょ!)。
書いてみると、両方の楽譜で似たような音使いになるところと、全く違うところと出てきました。中にはコード進行を変えてしまったところも。

原稿を書きながら一番苦労したのは紙面の制限です。解説を書き出すと書きたい事が山ほど出てきて、解説のためのページ(1曲あたり1ページ)がとても足りない!でも紙数をオーバーする事は出来ないので何とか切り詰めたのですが、それでも若干原稿が多くなってしまったところがあって、今度はこれを編集でレイアウトする人が苦労されるかもです。

という訳で、今日中にはこれらを全て出版社に送れるかな。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

  関東方面を中心に昨日から雪で大変なようですね。該当地域の皆様、そして交通機関の影響で足止めになっている皆様、どうかお気を付けください。

ところで、今日1月15日は小正月(こしょうがつ)。古くはこの日までが松の内だったそうです。関東地方では1月7日に松飾を外すらしいですが、熊本では今でも15日まで飾るようです。で、我が家のしめ縄も今日までです。仕事始めからもう1週間。そろそろ正月気分から抜けてペースを戻さなくっちゃですね。
と言いながら。あ〜っ!明日も明後日もまだまだ新年会が続くのだぁ〜

 
−an 弾手−
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