第461回「50歳からのヴァイオリン入門?」

[2013.8.27]

 うわっ、近っ!
 ライブやお芝居などの客席で、よく「かぶりつき」という言葉がありますが、これって「かぶりつき」どころじゃないわ!ピアノのすぐ前、このまま鍵盤に手を伸ばせば弾けそう?足だってペダルに届くかも。

 その日行ったあるお店でのライブ。実はその日の昼にピアニストの中田由美さんからメールがあったんです。
 「すぐ電話もらえませんか?」
 で、電話したら。
 「すみません、席が予約で一杯になってしまって。また次の機会にお願いします。もしどうしても、ということでしたらイスだけは用意しますが、テーブルは空きがなくてお料理もとれないので」
 そこはライブハウスではなくて古い木造の建物を改築した料理屋さん。カウンターとテーブル席に20〜30人位が入るとピアノの前まで一杯で、あとはウェイトレスさんが通るスペース位しか空いていない空間なのです。少し前にライブの案内を頂いていて、私がはっきり返事をしていなかったのがいけなかったんですが。
 「食事はして行きますので、とりあえずイスだけでも用意してもらえますか?」
 と返事してお店に行ったのでした。で、店員さんが頭をひねった末にイスを置いてくれた場所がピアノのすぐ前。ピアニストのイスとほとんど並ぶような形で私の席を用意してくれました。

 その日はピアニストの中田由美さんとカナダ在住のヴァイオリニスト・サン村田さんの初DUO CD「Rough Sketch」のリリース記念ライブツアー最終日だったのでした。
 ちなみに、中田由美さんはこのコラム第448回「an弾手、突然のホテルラウンジデビュー?」に登場されているピアニストです。

 開演前、ヴァイオリンのサン村田さんの控えのイスも私のすぐ横。と言うか、本当は村田さんが掛ける場所を私が占領しちゃってる感じなので。これまで村田さんの演奏は別の所で何度か聴いたことがありましたがお話しするのは初めてです。東京ご出身ですが長くカナダにお住まいで、本業は現地のテレビ局のアートディレクターとして美術関係のお仕事をされていたそうで今も画家としてご活躍らしい。で、びっくりしたのはヴァイオリンは50歳から始められたんだとか。今では現地トロントのジャズフェスティバルにも出演されているバリバリのジャズヴァイオリニストらしい。
 an弾手は「40歳からのピアノ入門」なんて本を書いていますが、もっと上がいた(笑)。「50歳からのヴァイオリン入門」でCDまで出されるとは素晴らしいですね。
 「来週はまたカナダに帰ります。次にこちらに来れるのは冬の頃ですかね」
 カナダと日本(熊本)を行き来しながら、絵を描き(熊本で絵画の個展もされている!)ライブツアーをこなしCDまでリリース。お洒落な人生ですね!私も新たな希望をもらったような気分です。

 で、ライブ開始!
手を伸ばせば届きそうな目の前で中田由美さんが弾く鍵盤の華麗な指の動きに目を奪われながら、サン村田さんの、時に明るく、時にささやくようなジャズヴァイオリンの音色に聴き惚れてしまった夏の宵。もちろん中田由美さんのいつものお洒落なジャズサウンドも素敵でした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 週末から昨日まで関西にいました。土曜日は大阪、日・月は京都で、昨夜遅く熊本に帰ってきました。途中ゲリラ豪雨に遭いながらも、肝心なところでは雨も上がり風も爽やかでした。
 仕事(本業)がらみの勉強会だったんですが、短時間ながら久し振りの大阪・京都も楽しみました。京都の夜は鴨川の床でお食事、と、ちょっとだけ京気分も味わってきました。
 え?勉強会は?って…。はい、勉強もしてきましたよ(笑)。数年振りに再会した懐かしい方や初対面の方など、北は北海道から南は沖縄まで、日本各地で頑張っておられる異業種の経営者の方達と、短いながらも同じ時間や思いを共有できて、また色々なパワーをもらった気がしています。

 
−an 弾手−


第462回 「もしもピアノが弾けたなら」

[2013.9.3]

 ブルルル〜〜、ブルルル〜〜、
 マナーモードにしている携帯が振動しています。出ると、
 「来週の総会の後の懇親会ですけど、ピアノ弾いてもらえますか?」
 「あぁ、いいですけど。オープニングの時とか?」
 「いえ、会場のみんなでピアノに合わせて“もしもピアノが弾けたなら”を歌おうかと思って。あれ弾けます?」
 「あー、あれですかぁ〜。あれは弾いた事ないです〜!」

 私も会員になっている『NPO法人・くまもと文化振興会』の事務局の人からでした。
 「ほら、ピアノ弾きたいなぁと思いながらも、なかなか手が出せずにいる人って多いでしょ。そんな人たちに何か刺激になれば、と思って」
 (でも、あの歌の歌詞って、結局ピアノ弾けずに終わるんじゃなかったっけ?ま、いいか←独り言)

 さて、私もあの歌は昔からよく聴いて知ってはいますが。でもピアノで弾いた事ないし。まずは楽譜探さなきゃ。手持ちのリードシート曲集「フォークソングのすべて」(全音楽譜出版社)の分厚いページをめくったら、メロディーとコード・ネームだけの楽譜がありました!
 でも、すごく音符が小さくて見にくいので、日頃使っている大き目の五線紙に手書きで書き写し。写しながらよく見たら最後のエンディングがメロディーを繰り返しながらF.O(フェードアウト)になってる。現場の生演奏中にフェードアウトで終わるのは難しいのでここはちょっとアレンジを変えましょう。歌詞の1番と2番の間に間奏があるので、エンディングもこの間奏をオクターブ奏法にするとかしてちょっと雰囲気を変えて、最後は適当にアルぺジオを混ぜてエンディングっぽくしてみましょう。

 実際の歌の雰囲気や伴奏はどんな感じなのか?
 YouTubeで「もしもピアノが弾けたなら」を検索したら、西田敏行が歌っているオリジナルバージョンやらピアノソロバージョンやらたくさん出てきました。
 聴いたら…
 ぎゃ〜!これイントロや間奏に速い3連音符が入っていたりして結構難しそうです!

 とりあえず、オリジナルの音源と同じ様な雰囲気を真似して弾いてみましたが…。こりゃ、結構難しいわ!何とかそれらしくはなりそうですが、どうしても「私、楽譜の通りに一生懸命弾いてます〜!」みたいに聴こえそうです。それって夜の街や飲み会の席で弾く時に最も避けなければならないパターンです。自分の発表会じゃないんだから。それに本番までに練習している時間はほとんどないし。という訳で、オリジナルの雰囲気に似せながらも自分で弾きやすいように適当にアレンジを変えてしまうことにしました。これだと演奏者が「自分でも楽しみながら弾いてる」って感じに聴こえるかな。
 弾いている自分と聴いている客席と、どちらを主役にするのか。「私、一生懸命弾いてますからちゃんと聴いてくださいね」なのか、「みなさん、お酒や会話を楽しんでくださいね。私も一緒に楽しみながらピアノでお手伝いしますから」なのか。この違いは大きいと思います。

 それから、あくまでも伴奏なので、本来ならメロディーを弾かずに伴奏用のアレンジにする必要があるのですが、今回は懇親会(宴会)の席で歌詞カードを配って会場の皆さんにいきなり歌ってもらうということなので、メロディーのない伴奏では歌いにくいでしょう。ということでピアノソロと同じくメロディー入りバージョンで通す事にしました。
これは正解だったようです。途中少しだけ変化を付けようと色気を出してメロディーラインを1オクターブ上げて弾いた所があったのですが、それだけでも歌っている人が一瞬戸惑っている様子が見えました。

 その本番では、まずソロピアノを2曲弾いた後に「もしもピアノが弾けたなら」。皆さんピアノに合わせて歌ってくれて何とか盛り上がったみたいです。
 事前に事務局の人から「an弾手さんの、大人になってから始めたピアノの話なども少しされたら」と言って頂いたので、そんなMCもチラッと入れてはみたのですが、宴会でお酒も入った会場の人には、まあ、耳に入らなかったでしょうね(笑)



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。

 あっという間に9月。おととい9月1日は二百十日、そして防災の日でしたね。
そんな暦を知ってか知らずか、週末は台風15号が近づいてきて大変な雨でした。また、昨日は千葉、埼玉で竜巻?被害とか。心よりお見舞い申し上げます。
 私が仕事(本業)の方で告知に関わらせて頂いているイベントも、台風接近ということで数日前に中止が決まり、バタバタと中止告知の手配などをしていました。今週もまだまだ荒れ模様の天気が続きそうです。
 ひところの猛暑はさすがに少し落ち着いたような気がしますが、爽やかな秋空が広がるのはもう少し先になるのでしょうか。

 
−an 弾手−


第463回 「くまモンとan弾手のコラボ、誕生!」

[2013.9.10]

 皆さまにお知らせです!
 今や日本中に(海外にも?)有名になった『くまモン』ですが。その『くまモン』とan弾手のコラボが誕生しました!
 …と言っても、私の本にくまモンの帯が付いただけなんですけど。
 今年3月に発売になった拙著「パパも弾きたいピアノ入門」(ドリーム・ミュージック・ファクトリー・刊)に、この度『くまモン』入りの帯が付くことになりました。

 6月頃に出版社から「くまモンの帯を付けたいと思いますが、どうでしょうか?」とご相談がありました。自分では全く思いもしなかった話でしたが、まあ、熊本県民のan弾手としてはくまモンが全国的に活躍しているのは嬉しくもあり誇らしくもあり、そんなくまモンとコラボ出来るのは嬉しいことですからね。すぐに「いいですね!」とお返事したのでした。
 でも、単にくまモン人気に乗っかった便乗商売?というのも軽薄そう?
 いえいえ、出版社の人もおっしゃってましたが、ベースはあくまでもan弾手が熊本県民だということ。そのan弾手が熊本から全国に大人ピアノの情報を発信していく、ということは、熊本生れのくまモンが全国に情報を発信していくのと重なるのではないかと…。
 まあ、こじ付けっぽいような気もしますが(笑)。でも激しく納得っ!

 「熊本から全国の大人ピアノ愛好者の皆さまに、鼻歌でも歌うようにピアノと遊ぶ楽しさを広く発信していくのがan弾手の使命なのだ〜(キリッ!)」(^ ^ V  何のコッチャ

 くまモンの使用許諾を管理している熊本県のくまもとブランド推進課に出版社から許諾申請を出して頂くことになりましたが、今や全国から申請が殺到しているらしく、審査が通って許諾番号が発行されるまで2ヵ月待ちというウワサ。実際、申請後に県庁に確認したら、何とその時点では3ヵ月待ちという状況でした!県庁も急遽許諾事務の担当職員を増やして対応している、と新聞記事にも出ていました。
 でも、実際は約2ヵ月で許諾番号を頂くことが出来、晴れて『くまモンとan弾手のコラボ』が実現することになりました!

 →その帯付きの画像がこちら

 現時点で既に店頭に並んでいる本には帯は付いていませんが、今後出荷する分から順次帯を付けていくそうです。
 もしよろしければ、
「くまモンの帯付きの、『パパも弾きたいピアノ入門』という本、ありますか?」
と、書店、楽器店の店頭で聞いて頂けると嬉しいです。くまモン帯付が届くと思います。



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ちょっと、ひと言。

 2020年のオリンピック、パラリンピック開催地が東京に決まって、テレビでは連日そのニュースが流れていますね。ただ、喜びの声が飛び交っている反面、震災の復興や放射能汚染問題の解決はどうなるのか、という声も聞かれるようではありますが。
 それはそうとして、私が別の意味で感心したエピソードは、最後まで東京と招致を競ったトルコの人たちの反応。東京に決まった直後からネット上には東京決定を祝うトルコの人たちの書き込みがたくさんあったそうです。それは、まるで激しく競い合ったスポーツで勝負が付いた瞬間、お互いの健闘を称えてハグしたり握手したりする光景のようでもありますね。
 トルコが親日国家とは言え、まさにスポーツマンシップを見たような気がしました。

 
−an 弾手−


第464回 「強く思えば実現する」

[2013.9.17]

 「自分でも信じられません!」
 最近頂いたメールです。たまたま図書館で私・an弾手のピアノ教本『お父さんのためのピアノ教室』を目にして読み始められたというその60代の男性の方から最初のメールがあったのがひと月ちょっと前。その時は「これから挑戦してみます」との事だったのですが、それから約1ヵ月後の先日、「涙そうそうを何とか両手で弾けてます!自分でも信じられません!」と2回目の喜びのメールが。
 嬉しい限りです!私自身、コード奏法に出会って間もない頃、メロディーとコードだけのリードシートで、いつの間にか自分で曲が弾けていることに気付いた時の驚きと感動を思い出してしまいました。

 そしてこちらも最近頂いた別の女性の方からのお電話。
 「40歳の頃からもう20年も先生についてクラシックピアノのレッスンをしてきましたが両手で弾くのがなかなか苦痛でした。ところが3年ほど前に楽器店の人からan弾手さんの本を紹介され、始めてみたら両手で弾くのがウソのように楽になりました!」
 NTTの104で我が家の電話番号を調べてわざわざ電話してきて下さったようです。
 「実は今練習しているan弾手さんの曲集がそろそろ終わりそうなので」
 と、次に挑戦する曲集を探しておられるとのこと。
 「an弾手さんの本は解説が丁寧でとても分かりやすいです」
 と言って下さいました。

 私も40歳の頃から我流でピアノを始め、二段のピアノ楽譜の壁に挫折しかかっていた時にたまたまコード奏法に出会い、それまで思いもしなかった全く新しいピアノの世界が開けたのでした。そしてこの連載コラム「an弾手のピアノ奮戦記」やコード奏法の入門書を書かせて頂くようになってから、私と同じ様に大人になってピアノを楽しみたいと思っているたくさんの人とのつながりを実感する事が出来る様になりました。
 もちろん、その多くはネットやメール上のつながりだけで、まだお会いした事もない方が多いのですが、知らない人がご自身のブログに「an弾手さんのお陰でピアノが弾けるようになりました」と書いておられるのをたまたま見掛けたり、上記の様な近況報告やお問い合わせを頂いたりすると、一緒にピアノを楽しんでいる仲間が世の中にたくさんいらっしゃる事を実感して、本当に心強いものです。
 また、東京の「弾手の会」の様に、このコラムや私の本がきっかけで読者の方同士が横につながり、リアルにライブハウスやピアノサロン等に集まって交流されているのも嬉しいですね。
 ピアノを楽しみたいと思いながらもなかなかきっかけが掴めないでいるたくさんの人たちのために、これからも引き続き同じ思いの仲間としてお手伝いが出来たらいいなぁと思っています。

 実はこれまで何度も色々な方から「次の曲集はまだですか?」という言葉を頂いてきました。ただ、私も複数の出版社から教本や曲集などを出して頂きながら、次の構想をまとめて原稿を仕上げる自分のペースや出版社のご都合などとの兼ね合いもあり、最近は2年に1冊の新刊がやっとのペースになっています。でもまた今回頂いたメールやお電話で「もっとたくさんの人に、もっと多くの曲を楽しんで頂ける選択肢を広げられるよう何とかしなくては」という思いが改めて強くなったのも事実です。
 物事は、まずは心の中で思わなくては始まりませんからね。
 「強く思えば実現する」
 これまでも、ただそんな思いだけで何とかここまでやって来た(妄想いのち?の)an弾手でございます(笑)。

 次のアクションに向けて強く思ってみましょう。あ、もちろん、「ワクワク・ドキドキ・トキメキ」ながら、ですね!



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 前回、第463回のコラムで「くまモンとan弾手のコラボ」のお知らせをさせていただきました。これまでももちろん、くまモンは熊本のキャラクターとして親しみを持ってはいたのですが、これで「親しみ」以上に「身内」みたいな気分になってきました(笑)
 これからどんな展開になっていくのか、私自身もワクワク・ドキドキ、トキメイテおります〜。世の中にアピールする前に、まずは自分自身のモチベーション効果の方が大きいのかも?しっかり楽しんでいきたいと思います!

 
−an 弾手−


第465回 「お彼岸のピアノ」 [2013.9.24]

 お寺の本堂。その中で椅子に掛けている30人程の人たち。周りには不思議な抽象彫刻の数々。
 そこにピアノの調べが流れてきます。本堂の奥に置かれたグランドピアノを一人の女性が奏でています。
 9月23日、秋分の日。私はあるお寺の秋季彼岸会に参加したのでした。

 それにしてもお寺でピアノ?
 いえいえ、お彼岸の法要は厳粛に行われたんですよ。これは法要が終った後の時間です。
 まず住職様からご紹介があったのは境内や本堂のあちこちに置かれた彫刻の数々。地元の芸術大学院生の作品だそうです。写実的な裸婦像の他、乳幼児虐待をテーマにした抽象的な母子像や、作者の心の奥の儚さや心情などをテーマとした作品など、制作の意図やテーマを作者ご本人が解説されました。

 そして、引き続きピアノの演奏。その大学院生のお母様でピアノの先生だというご紹介でした。
 秋にちなんだ優しい曲が本堂の中に流れていきます。「赤とんぼ」、「故郷」…、私もレパートリーにしている曲ですが(笑)、ピアノの先生の軽やかな演奏にジーンとしながら聴き入ってしまいました。
 そして最後は参会者みんなでピアノに合わせて合唱。「ちいさい秋みつけた」、「紅葉」。

 これで終わりかと思ったら…。何と何と!住職さん自らが楽器を手にしてご登場です!
 「実は私、クラリネットを練習していまして」
 先生のピアノ伴奏でシューベルトのセレナーデを演奏されました。

 お彼岸のお寺で思いがけない美術と音楽のひと時。日常の喧騒を離れ先祖代々の悠久の時の流れを感じながら佇む空間。
 きっと昔の人は折に触れこうして村の中のお寺に集まり、心を静め、地域の人と触れ合い語り合い、時には歌や踊り、笛・太鼓で心を通わし喜び悲しみを共有していたのでしょうね。

 お寺とピアノ、住職様のクラリネット。えっ、と思う組み合わせも、そう考えると何だかしっくり感じてきます。
 暮らしの中に溶け込んだ音楽、ピアノのある人生?そんな思いを改めて強くしたお彼岸の日。
 秋晴れの空でした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。

 このところ同窓生と会う機会が多いです。つい先日は高校同期生で作っている芸術部で開催された「第8回熊本高校42会芸術祭」。ギャラリーを借りて日本画、油絵、写真、切絵、デザインなど個性豊かな作品が並びました。少し前は大学時代の同期生5人と。こちらは飲み会ですが。
 会うと必ず話しが出るのが親の介護、自分の体調、そして頭の毛(笑)。
 同級生を見て、あ、自分もそんな歳なのか!?と思うことしきり。自分の事は自分でなかなか分からないもので。同級生という鏡に映る自分の姿を見ながら自分を振り返るのも、時には必要なのでしょうかね。

 
−an 弾手−


第466回 「人生のピアニストを目指して・その1」 [2013.10.1]

 実は、もう1年前からになりますが…。
 ある本(季刊誌)の創刊号から原稿(ピアノネタ)を書かせていただいています。
 NPO法人くまもと文化振興会が発行している総合文化誌「KUMAMOTO」という季刊誌です。先月第4号が発行されました。
 今回はその第4号に掲載されたan弾手の原稿を発行者の了解を得てご紹介させていただくことにしました。少し長いので今回から2〜3回に分けてご紹介しますね。
 題して「人生のピアニストを目指して」。

 

 地下鉄六本木から恵比寿に出てJR山手線に乗り換え原宿へ。さっきまでの六本木の街とは明らかに世代が違う人の波に流されながら、左手に表参道ヒルズを見て少し進むと、見えてきました!KAWAIの看板。ここが、いよいよバーチャルからリアルの世界へワープする入口か!?

 40代から始めた私のピアノ。そんな自分のドタバタピアノ体験談「an弾手のピアノ奮戦記」をネットに週一連載で書き始めたのがもう11年程前。その体験談から私の最初の本が全国出版されたのが9年前。そして、そんな私の本やネット読者の人たちが横につながって、東京に「弾手の会」というピアノ(音楽)愛好家の人たちの会が誕生したのが2008年の2月。以後、1〜2ヵ月に一回くらいの割合で皆さん赤坂のライブハウスに集まってはピアノの弾きっこや交流を楽しまれていたようです。
 私はなかなかその都度上京することもかなわず、皆さんとはネットやメールで交流をするだけでした。ところがたまたま私が仕事で上京する用事が出来てご連絡したら、何と私の予定に合わせて弾手の会の皆さんが表参道KAWAIのピアノサロンに集まっていただくことになったのでした。
 バーチャルの出会いからリアルのつながりへ。その日は集まった弾手の会の皆さんとピアノを囲んで楽しい時を過ごし、夜は六本木ミッドタウンに移動して食事会となりました。

 自分のプライベートな楽しみで始めたピアノ。初めの頃は何とか自分の中で曲が弾けるようになるのが目標でした。やがて、少し弾けるようになると今度は恥をかきながらの人前ピアノ。人前でそれなりに弾く楽しみに変りました。そして、本を書くようになってからは、今度は自分と同じ大人ピアノの人達と、同じ思いや体験を共有できる喜びが加わったのです。
 内に向かう思いから、やがて外につながる世界へ。その変化の意味は自分にとって大きかったと思います。

 この弾手の会以外でも、全国からたくさん届く読者メールには…(次回へ続く)




(続く→原則毎週火曜日更新)

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 今回転載させていただいた総合文化誌「KUMAMOTO」ですが、熊本在住の50名以上の様々なジャンルの執筆者が、文学、美術、工芸、芸能はもちろん、地域の歴史、文化、伝統などに関わる様々な記事を寄せています。第4号の特集は「25年を経たくまもとアートポリス」と「日中韓の民間交流」です。
 主に熊本県内の書店で販売されている様ですが、定期購読者も募集されていますので、ご興味がおありの方は下記へお問合せください。

 NPO法人くまもと文化振興会
 熊本市中央区北千反畑町5-13 さろん・ど・漱雲内
 TEL.FAX 096-343-8806

 
−an 弾手−


第467回 「人生のピアニストを目指して・その2」 [2013.10.8]

 前回、第466回より、総合文化誌「KUMAMOTO」第4号掲載のan弾手の記事から転載でご紹介しています。今回はその2回目です。前回のバックナンバー(このページの下の方にバックナンバーリストがあります)からお読みいただくと話がつながります。

 

 (前回から続く)…内に向かう思いから、やがて外につながる世界へ。その変化の意味は自分にとって大きかったと思います。

 この「弾手の会」以外でも、全国からたくさん届く読者メールには、それぞれの方のピアノへの思いや日常の生活感が溢れています。退職後にピアノを始めてボチボチ、でも着実に楽しまれている男性。70代からピアノのレッスンを始めて、やっぱり無理かと一度はあきらめかけたのに、たまたま私のコード奏法の本と出会ってまたピアノを続ける気になったという80代のおじいさん、幼稚園児のお子さんの面倒を見ながら、いつかその幼稚園のイベントで自分もピアノを弾いてみたいと張り切るお母さん、そんな様々なメールを拝見していると、暮らしの中での百人百様のピアノとの付き合い方がうかがえて楽しくなります。
 ピアノって、何も上手に弾くだけが目標でなくてもいいんだ。発表会やリサイタルでかしこまって弾くだけがピアノじゃないんだ。そんな気がしてきます。

 私の母は95歳になります。頭はしっかりしていますが、数年前に自宅でころんで骨折して以来、寝たきりで移動は車椅子。そのため今では老人ホームのお世話になっています。昔から歌が好きだった母は、私が小さい頃からよく歌を聴かせてくれました。歳をとってからも自宅に同居していた時は私がピアノを弾いているとよく自分の部屋から出てきてピアノの近くに掛けていたものです。そんな時、私もなるべく母が知っていそうな昔の歌を弾くと、横でピアノに合わせて歌ってくれました。
 老人ホームに入ってから、私はその部屋に小さなキーボードを持ち込んでみました。毎週部屋を訪ねて、世間話がひとしきり済んだらそのキーボードで昔の唱歌や流行歌などを弾いてみます。するとびっくりするくらい、二番、三番まで覚えていて一緒に歌ってくれます。
 もう、これといった親孝行もできませんが、私(と母)のせめてもの楽しみの時間です。
 そして、そんなことが出来るのも、多少なりともピアノが弾ける効能かも知れません。

 ピアノが弾ける、とはどういうことでしょうか。ピアノの先生に言わせれば…(次回へ続く)




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 私のピアノ関連本がこれまで7冊出版されていますが、そのうち2冊について出版社から連絡がありましたのでお知らせします。
 一つは講談社の「40歳からのピアノ入門」(講談社+α新書)です。2005年7月初版でこれまで第5刷まで版を重ねていますが、昨年あたりから講談社内部でも電子化の動きが進み、いよいよ本格的に電子出版への移行となったそうです。
 もう一つはドレミ楽譜出版社の「お父さんのためのピアノ曲集〜コードで弾く想い出のフォークソング」です。少し前から出版社にも在庫切れで、たくさんの読者の方から書店はもちろん私の方にも「どこかで手に入りませんか?」というお問合せを数多く頂いていたのですが、この度、改訂新刊として今年12月に新たに発売されることになったそうです。
 いずれも本サイト「くまもと文化の風」のTOPページバナーから開く各書籍のページに詳細を載せていますのでご覧ください。

 
−an 弾手−


468「人生のピアニストを目指して・その3」 [2013.10.15]

 前々回(第466回)、前回(第467回)と、総合文化誌「KUMAMOTO」第4号掲載のan弾手の記事から転載でご紹介しています。今回はその3回目(最終)です。前々回、前回のバックナンバー(このページの下の方にバックナンバーリストがあります)からお読みいただくと話がつながります。

 

 (前回より続く)…ピアノが弾ける、とはどういうことでしょうか。
 ピアノの先生に言わせれば、指の使い方、ペダルの踏み方、読譜力、解釈力、表現力…、たくさんのクリアすべき要素があるかも知れません。もちろんそれらは重要な条件かも知れませんが、大人になってから楽しみでピアノを弾いてみたい、という人にとっては、もうひとつ違う世界もあるような気がするのです。
 今さらショパンコンクールを目指すわけでもないし、リサイタルを開くわけでもないし、プロピアニストになるわけでもないし。それより自分にとってもっと大切なこと、それは生活の様々なシーンの中で自分の気持ちのままに、思いを語るようにピアノを奏でること、そして、そんな時間、空間を周りの人と心から共有できること。
 そんなピアノ人を、私は「人生のピアニスト」と呼びたいと思います。

 暮らしの中に音楽がある。心の中に表現したい音がある。朝起きて歯を磨くように、休日の昼下がりにフッとお茶でも飲むように、手を伸ばすとそこに鍵盤があり、何気なく今の気分が音になって気持ちに届く。家族の笑顔があり、友人の気取らない話し声があり、見知らぬ人との共感の出会いがあり、たまには夜の街での思い掛けないトキメキ?もある(笑)
 まあ、夢のような話ですが、そんな「人生のピアニスト」に憧れます。
 幾つになっても、夢は追い続けていきたいものです。(完)

 

 私が参加している異業種交流会の例会でいつも顔を会わせる男性(60歳過ぎ?)。少し前にan弾手の最新刊「パパも弾きたいピアノ入門」の新聞記事をご覧になり、早速買いに行くとおっしゃっていたのですが、先日お会いしたら目下練習中とのこと。
 「いやぁ、指は動かないし、鍵盤はどこも同じに見えるし。なかなかコードが覚えられなくて〜。でもね、息子が音を聴きつけてきて『へぇ〜!ピアノ始めたの?急にどうしたの?まあ、家族としては騒音はとりあえず我慢して応援するから頑張ってね!』と言ってくれました。それに、孫が寄ってきてジーッと見上げながら私のピアノを聴いているんですよ。まだまだですが頑張ってみます!」
 と、嬉しそうにおっしゃっていました。
 ここにもお一人、人生のピアニストを目指す仲間がいる(笑)。嬉しい限りです。



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ちょっと、ひと言。

 先週の土・日(10月12,13日)は熊本市の熊本城周辺で恒例の「みずあかり」が開かれました。市民手作りの祭りとして始められ今年で10周年だとか。竹の筒に様々な模様をくり抜いて中にロウソクを灯した竹灯篭が、熊本城長塀前の坪井川やライトアップのお城を見上げる歩行者天国の通りを数万個の灯りで埋め尽くし、まさに幽玄。
 竹灯篭の製作、設置からロウソクの点火、そして最後の撤去まで数千人の市民ボランティアの手で実施されているというのもスゴイです。地域のコミュニティー再生を願って始められたというこの「熊本くらし人祭り みずあかり」。
 私はまだ何のお手伝いも出来ていませんが、すっかり秋の気配が深まった夜風の中、たくさんの人波と見渡す限りの灯りに、たくさんの「熊本くらし人(くらしびと)」の存在を感じながら歩いた夜でした。

 
−an 弾手−


469「テラス江津湖、ピアノの夜・その1」 [2013.10.22]

 「すみません、ちょっと早く着いてしまったんですけど。近くで食事ができる所はありませんか?」
 その日は志娥慶香(しがけいこ)さんのピアノソロライブでした。熊本市の南東部に広がる江津湖。その畔に佇むお洒落な洋館・テラス江津湖が会場。普段はそこでディナーメニューもあるようなのですが、その日はライブということでドリンクだけらしい。
 「この江津湖沿いの道をずーっと行くと公園があります。そこを抜けた左側にイタリアンレストランがありますよ。歩いて10分位でしょうか」
 会場の人にそう教えてもらって行ってみることにします。7時の開演まで、まだ1時間半ほどもあるし。

 江津湖は時々来るのですが、この道を通るのは初めてです。ブラブラと湖畔の遊歩道を行くと、右手に広々とした湖が広がります。何しろ「水の都」と言われる熊本市。街なかに八景水谷、水前寺など幾つも湧水がありますが、この江津湖もとても広い湧水湖です。やがて湖の横に広がる公園に出ました。犬を連れた家族、鬼ごっこをしている子供達、ウォーキングに励む熟年のご夫婦。秋の夕暮れ、湖を背景にのどかな風景です。
 やがて目指すレストランに到着。まだ時間が早いのかお客さんは誰もいません。湖が見えるテラス席に掛けてパスタを注文。

 食べているうちに、やがて気がつくと店内はいつの間にか満席になっていました。日も沈んで、あっという間に夕闇が湖を包んでいます。
 「あー、さっき来た道、帰りは暗そうだなぁ」
 そう思いながら店を出て、会場のテラス江津湖を目指します。公園を抜け湖畔の遊歩道を辿ると、さっき来る時に見た江津湖とはまた全く違う光景が広がります。遠く湖の向こう岸に茂る木々が黒いシルエットとなって、かすかに残照の残る空をバックにこんもりと続いています。そしてその木々の間を通る車のライトが、湖面にキラキラと幾筋も反射しながら流れていきます。湖の上には、大きく広がる空。
 「お〜、空ってこんなに広かったんだ!」
 いつも住宅やビルの間からしか見ていない空ですが。ここでは水平の視界から上はグルッと何のさえぎる物もない空!そして湖面を渡ってくる涼しい秋の夜風。もう気分はすっかりお洒落なピアノモード?舞台装置出来過ぎっ(笑)

 その日のライブタイトルがこれ。
 「志娥慶香ピアノライブ〜秋の夜風に想いをのせて〜」

 会場にたどり着いた時にはすっかり「秋の夜風に想いをのせて」しまっていたan弾手。そんな私に、やがて始まった慶香ワールドが畳み掛けるように不思議な世界を広げてくれたのでした(詳しくは次回に)。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 先日夕方、私の携帯が鳴りました。着信の表示を見ると、いつもお世話になっている講談社の編集者の方です。
 「もしもし、講談社の○○ですが。ご高著の『2週間速習ピアノ講座』がまた増刷になります」
 ありがとうございます!2011年7月に初版が出てから2年ちょっとで5刷になりました。これもひとえに、これまでお買い上げ頂いた全国の沢山の読者の皆さまのお陰です。ありがとうございます。そして引き続きこれからも、まだお会いした事もない大人ピアノの愛好家の皆さまとの輪が広がっていったら嬉しいです。
 その編集者の方から同じ電話で
 「次の新しい本の企画も進めたいですね」
 とも言って頂きました。いつも新しい目標を持つ事が出来て幸せです。

 
−an 弾手−


470 「テラス江津湖、ピアノの夜・その2」 [2013.10.29]

 (前回、第469回から続き)
 とっぷりと日が暮れた江津湖。その湖面を渡る秋の夜風に浸りながら湖畔を歩いてやって来ました。
 そこは、その日の志娥慶香(しがけいこ)さんのライブ会場「テラス江津湖」。室内に入ると、薄暗く照明が落とされた中に、40〜50人程の人が椅子に掛けて静かに開演を待っています。部屋の隅に置かれたテーブルにアンティークな照明。その柔らかな光が傍らのピアノを優しく照らしています。

 やがて、白く柔らかなドレスをまとった志娥慶香さんの登場です。最初の曲は「晩夏の少女」。慶香さんのオリジナル曲です(その日のライブは途中の2曲を除いてすべてオリジナル作品でした)。
 薄闇の向こうからささやくように響いてくるイントロ。キラキラした音の中にも可憐でどこか物悲しいテーマのメロディー。夏の終わりに一人佇む少女のつぶやきのようなピアノの音が、薄暗い会場に流れていきます。

 以前もこのコラムで書いたことがありますが、慶香さんの作品は多くが自然の恵みや命の尊さをテーマにしたものです。それも自然の情景を写実的に写し取るだけではなく、自然と対話しながら体の奥から湧き出して来る様な、どこか哲学的な彼女の思いが込められているような気がします。って、音楽評論家でもない私の勝手な感想に過ぎませんが。でも、そんな慶香さんの曲の雰囲気に、無性に惹かれる私です。

 2曲目は「みずのうた」。この曲はもうラジオやテレビの番組、CM、イベント会場、コンサートホール、その他でこれまで何回聴いたことでしょうか。「水の都」熊本に生まれ育った慶香さんが、米国バークリー音楽院に留学中、ふるさとの水の素晴らしさと尊さに改めて気付き、帰国後に水と命の尊さをテーマに書いたという曲です。作詞も彼女で、これまで歌バージョン、コーラスバージョン、オーケストラバージョンなど、様々な彼女のアレンジで演奏されています。もちろん、その日のライブはピアノソロで。
 「私は歌うのは苦手なので〜」
 と言いながら、自作の歌詞を朗読しながらのピアノ演奏(語り弾き?)でした。

 ところで、開演の前から気になっていたのですが、その日はライブ会場にテレビカメラの撮影クルーが?ニュースの取材とはちょっと違う雰囲気だと思っていたら。演奏の合間で、慶香さんから説明がありました。
 「実は私、熊本県が進めている“水の民”のキャンペーンで7人の水の民の一人に選ばれています。音楽家として“水を奏でる民”という肩書きを頂いて。今日はそのプロモーションビデオの撮影で来られています」
 後日ネットで調べたら、あと6人の「水の民」は、水を聴く民、水を撮る民、水を想う民、水で焼く民、水を継ぐ民、水を育てる民、という名前で様々な分野の人が認定されていました。
 水の民のページはこちら→http://www.mizunotami.com/detail.html
 リンク先の上段右端の志娥慶香さんの写真をクリックしてみてください。この日のテラス江津湖でのライブの様子も出てきます。7人の水の民の映像のバックに流れる音楽は全て慶香さんのオリジナル曲らしいです。

 すみません!ちょっと話しがそれてしまいました。その日のライブ、その後の演奏曲は「凪(なぎ)」、「木漏れ日」、「蘇峰」、休憩を挟んで秋にちなんだ童謡や慶香さんが手掛けてオンエア中のTVCMソングで遊んだ後、「穀雨」、「波間に」、「雪白の輪舞」、「フレグランス」、「エバーグリーン」と続きました。

 あっという間の2時間。秋の夜風が心地よい江津湖の畔という素晴らしい雰囲気の中で、すっかり慶香ワールドに浸ってしまったan弾手。
 実は、聴きながら自分の中にジワッ〜っと湧き上がって来るものがありました(…何だろう?この気持ち)。
 日頃色々な既存の曲を自分なりにアレンジしながら楽しんでいる私ですが、自分の想いを込めたオリジナルの曲を自分も弾いてみたいという思い。もう随分前に作った「そよ風の微笑(ほほえみ)」という曲があるのですが、最近弾いてないなぁ。よし、弾いてみよう!そしてまた自分の想いを込めた新しい曲作りにも挑戦してみようかなぁ。

 私の胸にそんな想いを届けてくれたその日のライブ。
 外に出ると、ひんやりとした湖畔の夜風が心地いい余韻を残しながら流れていきました。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
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ちょっと、ひと言。

 先週末は「オハイエくまもと」の今年度の総会でした。5年前に始まったオハイエくまもとの活動も、今年からNPO法人となって新しいステージに入ったようです。私は一応実行委員及び音楽指導者、ということになっていますが、今年3月の音楽祭が終ってから活動らしい活動にも参加していなくて申し訳なく思っています。
 来年3月開催の第5回音楽祭に向けて、隔週日曜日のオハイエ音楽隊の音楽指導や実行委員会の活動など、もう少し本気で取り組まねばと思っているところです。

 
−an 弾手−
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