島田美術館は、新館オープン時(1982)に、ギャラリーを併設しました。主に古美術工芸や歴史資料を展観する本館と対応して、古い伝統世界と新しい創造世界とが反発も含めて相互に交流し、また研磨し響き合う場をささやかなりとも実現したいとの思いで設けられたものです。以来20年余、美術、工芸等のジャンルを問わず、県内外の作家の古典やグループ展を開催して、幸いにも好評を得てきました。ことさらに新作・近作にこだわらず、多様な作家それぞれの関心の核、仕事の根のところがうかがえる展示を心がけてきたことが、その特色のひとつといえましょう。

 8月、9月の展示について御紹介します。

 8月1日(日)から15日(日)まで、「じまんの種」展。文字通り植物の種が主役です。この種というしたたかなもの、思わず「へぇーっ」と驚き、「うーん」と唸ってしまう多彩さと造形の妙。一粒の種が生命の起源からその豊かな広がりまで想像世界を広げ、羽ばたかせてくれること請け合いです。

 8月20日(金)から29日(日)までは「オブジェ ひとがた」展。福岡市在住の画家・永武氏の、今回はひとがたをテーマにしたオブジェ尽くし。流木や廃材など身近に転がっている何でもない物を素材に、普段はこの作家の画面に登場する人のような鳥のような、喜んでいるような悲しんでいるようなユニークな人物像が、一味違った魅力を放つ立体に化けています。

 9月3日(金)から14日(火)は、「板井栄雄」展。故海老原喜之助門下の世代会の中でも特に独自の画風で知られるこの画家の、大胆不敵な造形と配色、毒性の強いメッセージにあふれる画面と向かい合っていただきたいものです。

 9月17日(金)から28日(火)まで、「働淳−花、若しくは透明な生」展。大牟田市在住の画家による花を中心とした静物画を並べます。

 ついでながら本館の方では、9月末まで「鳥獣虫魚−江戸時代の美術工芸に描かれた動物たち」展を開催。盛夏から初秋へ向かうこの季節は、生類の活動がもっとも旺盛になる時期。近世の人々が愛しみ楽しんだ動物文の世界の一端を楽しんで下されば幸いです。

(財)島田美術館
熊本市西区島崎4-5-28 096−352−4597