Vol.6 食[2005.5.10]
ゴールデンウイーク、皆様、いかがお過ごしでしたか? 大阪では「2005年食博覧会」が開催され、私も行ってきました。この食博は「愛・地球博」に賛同してでも対抗してでもなく、1985年より4年に一度開催されており、今年は第6回目。全国や世界の食が集まったり、伝統や未来の食を紹介したり、と食道楽の大阪らしいイベントです。私のお目当ては、熊本県ブースの「太平燕(タイピーエン)」でした。食博の詳細はhttp://www.shokuhaku.gr.jp

今年になってから私がテレビの情報番組で見かけた熊本の食として、馬刺しや辛子レンコンはもちろんのこと、復活した世界最大級の鶏「天草大王」、直截的なネーミングが大阪的な「いきなり団子」、そして、ちゃんぽんのような春雨料理「太平燕」があります。実は私、太平燕は知らなかったので興味津々でした。お店によって材料なども少し違うようですが、私が食べたのは緑豆春雨とゆで卵を素揚げした虎皮蛋(フーヒータン)の歯ごたえが印象的で、さっぱりした塩味なのに深みがある具沢山スープ。本当に美味しかったです。

太平燕は中国福建省の華僑たちが100余年前に長崎と熊本に伝えたもので、それが熊本だけに残ったそうですね。今も同省に残る太平燕は肉団子スープで、団子の皮まで肉で作るという凝ったお祝い料理。熊本の太平燕は華僑たちが故郷を懐かしみ手近な材料でアレンジしたのでしょうが、名前の由来には諸説あるよう。“太平”は食べると安泰を招くとされる太平卵(タイピーノン=ウズラの卵)、“燕”はワンタンのような肉燕皮(ニクエンピ)に由来するとか、平和を意味する太平と、故郷に戻ってくる燕(ツバメ)を合わせとても縁起の良い食べ物だとか、春秋戦国時代に燕(エン)の国があり、燕が太平であるようにとの願いが込められているとか。

ところで、この燕の国は今の北京あたりのことで、北京はもともと燕京と呼ばれ、燕とは北京や北京地域を示す雅名だそうです。そこで思い出したのが、4月22日に行われた四天王寺の「聖霊会(しょうりょうえ)舞楽大法要」。四天王寺については2月のこのコラムでも少し触れましたが、この行事は聖徳太子の命日に、法要と舞楽が渾然一体となって太子の霊を慰めるもの。石舞台の四隅に巨大な曼珠沙華の仏花が立てられますが、その舞台装置の華に紙でつくられたツバメが結び付けられ風に舞っていたのです。春から夏にかけてやってくる渡り鳥なので季節感の演出かな、と思って見ていたのですが、この大法要では、大陸伝来とされるお餅を揚げた独特のお供えもあり、ツバメはひょっとしたら大陸を通じた仏教伝来の象徴的なものだったのかもしれませんね。

ということで、大陸と日本とのつながりの深さに思いが至ります。そういえば、熊本には加藤清正の朝鮮出兵ともゆかりあるとされる名物「朝鮮飴」もありますね。大阪には四天王寺を中心に古来の大陸との国際交流を時代行列などで再現する祭「四天王寺ワッソ」があります。

今、中国・韓国・北朝鮮など大陸とは色々な問題が生じています。日本がひとつの国になる前、武将が群雄割拠して戦を繰り返していたし、江戸時代の各藩だって異国に近かったというではありませんか。それが、先人たちの英知と長い時間によって一国となったわけだから、アジアだって、地球だって、いずれひとつにまとまることも無理ではないのでは。SFの世界ですが「スタートレック」が描く未来の地球には、世界中から戦争や人種差別をなくした地球連合政府ができていたことですし…。

大滝秀治と岸部一徳が演じる殺虫剤CM父子の隣人のおばさんに「キレイゴト言ってんじゃないよ」と突かれるかもしれませんが、政治・外交の難しさや、右や左の国民感情が錯綜する現実にちょっとだけ目をつぶって一人の人間として素直に考えると、そう願っています。
食博の会場は、敷地面積13万m2・展示面積7万m2という日本最大級の国際展示場「インテックス大阪」。このエントランス広場の左右や奥に300にも及ぶブースがあり、ショーもいっぱい。
熊本県ブースでは太平燕のほかにもお馴染みの名産がいろいろ。私は、10名近く並んだ行列に加わり、500円也の太平燕を一杯。私の後にもすぐ行列。別コーナーの馬刺しも商売繁盛でしたよ。