第231回「星野ひな子+an弾手ジョイントコンサート!?」
 その7(本番でミス連発!の巻)
[2008.6.24]

 …という訳で。
 本番前のリハーサルはハプニング続出でそのまま時間切れ。気持ちも落ち着かないまま開場の時間、と相成ったのでした。

 まずは6時半から例会行事。これが6時55分まであり、7時から懇親会の開始、という予定表を星野ひな子さんとマネージャーさんに渡して控え室に入ってもらいます。
 ところが。
 例会はあっという間に進んで6時45分には終わってしまった!
 「では引き続いて懇親会に移ります。」
 と司会者が言ってるじゃないですか!
 やばっ。懇親会の開始時には星野ひな子さんにステージの袖に待機しておいてもらわないといけないのだ!
 ササッと会場を抜け出し、控え室へ。
 「もう例会が終わっちゃいました!すぐ待機してください!」
 星野ひな子さんをステージ裏の通路へ、マネージャーさんをPA席へとうながして、私もまた素知らぬ顔で自分の席に戻ります。ステージでは会長の挨拶が終わって乾杯に移るところ。
 乾杯が終わったらすぐにアトラクションを始めると委員長が言っていたはずだ。

 …しかし、乾杯が終わっても委員長からは合図が無く、会場はザワザワと歓談が始まりました。
 「まあ、まあ」と、隣の席の人からビールを勧められ、クーッと飲み干します。下戸の私もこんな時の最初の2杯くらいはウマッ!
 そこに委員長がやって来てささやきます。
 「あと3分で始めますから。」
 チラッと携帯の時計を確認し、ふーっと息を吐きます。

 …そして、3分。
 会場の喧騒の中、私は静かに席を立ってピアノへと歩いて行きます。
 ピアノの前に座ります。
 打ち合わせ通り、会場の照明がやや暗くなりピアノにスポットが来ました。

 静かに弾き始めます。
 ここはいつもの様にコード進行パターンで遊ぶBGM風即興ピアノ。
 最初の曲「浜辺の歌」がFなので、Key=Fの進行です。
 やがて、BGMに乗って司会者の声が入ってきます。
 「では、只今からアトラクションの時間に移らせていただきます。しばらくピアノの方にご注目ください。」
 そのままFのコード進行を続け、頃合を見てC7のアルペジオで上がって行き…
 スッと「浜辺の歌」に入ります。
 ここはまだピアノソロなので、多少テンポを揺らしながら思い入れタップリに弾いていきます。
 静かになった会場の雰囲気から、こちらに注目されている気配を感じます。

 うん、いい感じ♪ 順調に弾き進んで、さあ決めのエンディング♪ ってとこで…

 あ〜〜〜っ、何というミスっ!
 最後、V7→I(C7→F)と進む所を少し凝ってV7→IVm→I(C7→B♭m→F)にしていたのですが、何を間違ったか左手はB♭のルートを弾きながら、右手がBmのコードを弾いてしまった!
 ガーン×
 いきなり何とも言えない汚い音!
 あっ!と思いながらも次の瞬間、指はしっかりと正しいB♭mのアルペジオで弾き上がり最後はFで締めていました。
 曲が終わって一瞬の静寂。会場の皆さん、唖然として拍手しずらかったかな。司会者のパチパチパチっていう拍手にうながされるように、やっと会場からも拍手が。
 しかし、ここで落ち込んではいられないのだ!これからいよいよメインゲスト星野ひな子さんが登場するのだ!

 何事も無かったかのように「旅愁」のイントロを弾き始めます。
 打ち合わせ通り、星野ひな子さん登場!パアッとステージが明るくなります。そのまま歌に突入。こちらは大きなミスも無く1曲目の伴奏終了♪
 その後司会者が星野ひな子さんの紹介。それからマイクを星野さんに渡して自己紹介トーク。
 この間、ピアノはバックで再びコード進行の即興BGMです。ここはKey=Cでやってみます。
 この後3曲、カラオケを使ったステージ。「待宵」「おてもやん」「100年先の未来の君へ」。
 私はピアノから離れて近くの椅子で待機です。

 「では、続いて五木の子守唄を聴いて下さい。再び○○さんにピアノ伴奏をお願いします。」
 という星野ひな子さんのトークを合図に再びピアノの前へ。
 こちらはリズムがちょっと変則でやや伴奏が難しい曲。(って、私が自分でアレンジした伴奏なんですが…)
 途中一ヶ所音を抜かした所があったけど、これはミスと言うほどのこともなくピアノも歌も無難に最後まで。って思ったら…

 あ〜〜〜〜っ、最後の最後にまたも信じられない様なミスっ!
 これKeyがDmなのでエンディングの最後は単純にDmのコードをチャラランって鳴らすところでまたもグシャって汚い音!(練習でもこんなことあり得ない!?)
 一瞬自分でも何のコードを弾いたのか分からなかったけど、ここはとにかくリカバリー。続けて予定通りのDmとDm9のアルペジオを弾いて終りっ!
 ふーっ、今の、何とかジャジーなアレンジのコードに聴こえなくもなかったかなぁ、って無理やり都合のいい解釈?

 しかし、ミスはミスとして悔やまれるとしても、後で振り返ってみると自分でも不思議なくらいにミスの後の立ち直りが早かったことに気が付きました。
 自分の本にも、ミスした時はその後コンマ何秒で立ち直れるかが勝負、と書いていますが、確かにミス直後でも、もうその先の演奏のことをイメージしている自分がいて、たった今ミスったことさえあまり意識になかったような気がします。
 で、全部終わってしまってからジワジワとミスの事を思い出し、いやな気分になってきたのですが。

 五木の子守唄の後は「阿蘇の子守唄」と「千の風になって」の伴奏を、こちらはほとんどノーミスで弾き切り、なんとか「星野ひな子+an弾手ジョイントコンサート」は終了したのでした。

 伴奏は歌手とのコラボレーション。伴奏がミスって歌手に迷惑掛けたら大変ですよね。今回のミスがいずれも歌の入っていないピアノだけのところだったのが不幸中の幸いでした。それにミスした時も、素知らぬ顔のまま止まらず弾き直さずコンマ何秒かで立ち直る、っていう鉄則が案外身に付いていたらしいことを自分で発見できたのも今回一つの収穫だったかな。

 なーんて、こんなミス無しで弾けるようにするのが一番なんですけどね…。

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 昨夜は、某出版社の編集の方から携帯に電話が。これまでお付き合いの無い出版社ですが、社名を聞けば誰でも知っている、某大手です。
 実は、今原稿を進めているドレミ楽譜出版社の曲集とは別に、もう一つ違う切り口の企画が進行中なんです。まだ企画の段階なので具体的に実施が決まった訳ではありません。出版に漕ぎ付くまでにはこれから乗り越えなければならない壁がいくつかありそうですが、多くの方にピアノの楽しさを広げられるような本が出来ればいいなあ、と思っています。
 
−an 弾手−


第232回「読者の方からのご質問〜コードで弾く想い出のフォークソング」 [2008.7.8]

 今回は読者の方からのご質問です。
 「お父さんのためのピアノ曲集〜コードで弾く想い出のフォークソング」の読者の方からご質問メールがありましたので、ご本人の了解を頂いてご紹介します。
 定年後にピアノを始められたという、仙台市にお住まいの67歳の男性の方です。

 昨日コードで弾く想い出のフォークソングを購入。早速左手パターン(1)の練習に入りましたが、すぐ疑問にあたりました。
 22ページ第1小節Cコード ド・ソ・ド・ソでなくてド・ソなのか
 第4小節G7コード ソ・レ・ソ・レでなくてソ・レ・ファなのか
 第8小節・12小節G7コード ソ・レ・ファ・レなのか
 教えてください。
 他のEm・Dm7・C・F・Fm6コードについては理解できました。

 申し遅れました。私は定年退職後週一回シニアピアノ教室に通っている67歳の男性です。シニア用のテキストで特に映画音楽を弾いてますが、コード奏法に興味がわき本を手にしました。
 お忙しいところ恐縮ですがよろしくお願いします。

(an弾手より返信)

 この度は拙著「コードで弾く想い出のフォークソング」をご購入いただいたとのこと、ありがとうございます。また、さっそくメールをいただいて嬉しいです。

 さて、ご質問の件ですが

 【22ページ第1小節Cコード ド・ソ・ド・ソでなくてド・ソなのか】
(本コラムの読者の方に分かりやすいようにその部分の譜面を載せてみます)


 ここは出だしのメロディーが1拍休んで2拍目から始まっていますがメロディーの出だし(ソソ)は伴奏無しで静かに始めて3拍目から左手の伴奏が入ってくるようなアレンジにしてみたものです。
 もちろん、1拍目から左手を入れて
 ド・ソ・ド(1オクターブ上)・ソと弾かれても全く問題はありません。どちらが正解ということでもありません。両方やってみてご自身のイメージに合う方を使われて良いと思います。
 このように、コード奏法ではどう弾くかは弾き手の感性やその時の気分に任されていますので、色々弾き方を変えて工夫してみてください。それがクラシックピアノと違うコード奏法の楽しみであり醍醐味でもあります。

 【 第4小節G7コード ソ・レ・ソ・レでなくてソ・レ・ファなのか】
 【第8小節・12小節G7コード ソ・レ・ファ・レなのか】
 


 

 
 これらは同じ内容のご質問ですね。
 ご質問の内容は、コードの7(セブンス)にかかわる話です。
 7(セブンス)コードとはコードに短7度の音を加えたコードのことで、コードG(ソ・シ・レ)に対してコードG7は(ソ・シ・レ・ファ)になります。
 簡易的には
 そのコードのルート(Gの場合はソ)の1音下の音(ファ)を加ると覚えておくと便利です。
 このセブンスの音はコードの響きに緊張感を与え、特にG7からCにコードが進行する時に、より進行感を強める働きをするものです。
 そこで

 【第4小節G7コード ソ・レ・ソ・レでなくてソ・レ・ファなのか】

 ですが、このファは上に書いたセブンスの音を弾いているのです。ソ・レ・ソ・レでも問題はありませんが両方やってみて響きのニュアンスの違いを感じてみてください。

 【第8小節・12小節G7コード ソ・レ・ファ・レなのか】

 これも同じ理由です。

 セブンスコードについては同書27ページの「演奏のヒント」にもちょっとだけ書いています。
 また、このコラムのバックナンバー第134回にもセブンスコードに関するご質問への返答がありますので参考にしてください。

 それから、左手パターン(1)とは
 左手で1度、5度、8度を掴んで弾く、というパターンで、そのリズムや音の長さはその時々で自由に変えて弾きます。
 例えば27ページの花のメルヘンの左手を見てください。



 これも左手パターン(1)ですが、そのリズムの取り方は色々出てきます。
 このように、曲に合わせて工夫します。
 但し、弾いている音はどれも同じ(それぞれのコードの1度、5度、8度)なのです。
 (上の例のB7は8度でなくセブンス)

 ピアノ教室に通っておられるとのこと、すでに色々な曲を弾かれていると思いますが、併せてコード奏法も覚えられるととても自由度が高くなりますから別の楽しみ方も出来るかと思います。

 また、疑問などありましたらいつでもメール下さい。
 ありがとうございました。

 an弾手

 という訳で、本では限られたスペースの中で大きな骨子に沿って話が進行していますので、どうしても細かい部分の補足説明が不足になりがちです。それを補う意味でも、このようにご質問を頂くと大変助かります。皆様もどうぞお気軽にご質問をお寄せください。

 仙台市の読者の方、ご質問ありがとうございました。
 これからもご一緒にピアノ楽しんでいきましょう!

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 一気に来ましたぁ!
 梅雨が明けたと思ったら。真夏日!熱帯夜!!
 心と身体の準備が出来てません。いや、もう1つ。我が家の寝室の準備も出来てなかったのだ!実は寝室のエアコン、去年から故障したままだったのだ!冬は温風ヒーターで何とか乗り切り、夏はまだまだ先のこと、と思っていたら。一気に来ちゃいました!寝苦しくて睡眠不足です。
 いやいや、洞爺湖サミットも始まった事だし、CO2削減は身近なところから、ですね。
 我が家の寝室も国際的になってきたものです。
 
−an 弾手−


第233回「バ〜ラが咲いた♪」 [2008.7.15]

 バラが咲いた、って歌がありましたね。もう40年以上前に大ヒットしたマイク眞木さんの曲。
 私なんかリアルタイムで聴いていた記憶がありますが、懐メロで聴かれた方も多いのでは。
 で、今回のコラムネタは「真っ赤なバラ」じゃなくて「真っ白なユリ」。
 ユリが咲いたんです。ぼくの庭に。

 先日夜、仕事から帰宅して車を降りたらどこからともなくフワッと得も言えぬ香り。
 見回すと…。闇の中にボワッと白い花が浮かんでいます。ユリの花です。仕事で一日カリカリして帰ってきた自分に、思いがけない魅惑のお出迎え。フーっと気持ちが和んでいきます。

 次の日、明るい光の中で昨夜の魅惑の主を見てみたらこれがまたなんと妖艶な。大輪の艶かしい花びらに、思わせぶりたっぷりなおしべ、めしべが大きく伸びています。
 思わず、携帯のカメラでカシャッ!早速mixi日記にアップしてみました。すると…。
 あるマイミクさんからコメントが。

 「ユリ、きれいですね
 このユリをみながら一曲お願いします」

 なるほど!ユリを見て一曲、ね!
 誰かのちょっとしたひと言で思わぬイメージが広がっていく、というのはありますね。
 って訳で、お待たせしました。今回のan弾手コラム、やっとピアノの話に近づいてまいりました!

 その日は日曜日。久し振りにグランドピアノの屋根を開いて遊び弾きです。タラタラと、コード進行のナンチャッテ即興やらいつもの持ち曲やら分厚いコード曲集のランダム手当たり次第弾きやら…。
 ピアノの席からユリの花は見えませんが、あの妖艶なイメージをずっと想い描きながら弾いてみました。実際、イメージが音に反映されていたかどうか、は怪しいものですが、強くイメージしながら弾くと、何かしら違うように思えるのは気のせいでしょうか。ピアノという楽器は生き物ですから、弾き手の気持ちにどこかで応えてくれるんですよね。って、勝手に信じるようにしています。

 庭の真っ赤なバラは、散ってしまった後も心の中にずっと明るく咲き続けてくれたみたいですが、うちの庭の白いバラはまだ満開。つぼみが次々に開いて艶かしい競艶の真っ最中です。
 このユリの妖精達。この先散った後も、私の心に、ピアノの音に、ずっと咲き続けてくれるでしょうか。

 マイミクさんのひと言コメント。他にも素敵な絵をご紹介いただいた方もいらっしゃって、休日の一日、久し振りにいろんな空想の世界に遊ぶ事が出来たみたいです。
 皆様、ありがとうございました!

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 あつっ!!!
 いやあ、暑いです。会社では何とかエアコンの入った部屋に潜んでいますが、外出時は陽の当る駐車場に放置してある灼熱の車に乗り込むので地獄です。そして帰宅。ユリの妖精のお出迎え、は、いいのですが、前回のコラム・ちょっとひと言にも書きましたように、寝室のエアコンが故障中。で、何故か、とりあえず今のところ修理する予定がまだ無い!?
 そこで窮余の一策。冷蔵庫の冷凍室で凍らせた保冷剤をタオルに包んで首筋に当てながらの就寝です。これ、結構いいです。朝には柔らかくなっていますが何とか冷たさを保ってくれています。
 さて、しばらくは熱帯夜との我慢比べ?
 
−an 弾手−


第234回「目覚めのささやき?」 [2008.7.23]

 先日、とあるライブの店であったジャズライブ。
 たまたまネットで出演者の中に知り合いの名前を見つけました。1年前にジャズヴォーカルを習い始めたばかりという女性。サックス、ピアノ、ベース、ドラムの各アーティスト名に並んで、しっかり○○○○(Vo)と名前が書いてあるではありませんか。彼女以外のメンバーはアマチュアとはいえキャリアも長く、ここ熊本ではすっかり名前の知れたベテランです。
 これは聴きに行かなくては、という訳で。

 …行ってきました。
 実は彼女の歌を聴くのはこれが3回目。1度目はヴォーカル教室の発表会。2度目はその教室の先生が経営しているライブの店でのゲスト出演。そして今回は別の店でのライブ(しっかりチャージ料まで取って!)。
 最初の発表会初デビューから今回のライブまでわずか1ヶ月というスパンで、すでに3回目のステージ。なかなか大したものですね。

 最初の発表会で初めて彼女の歌を聴いた時、確かに感じるものがありました。私はヴォーカルに関しては(あ、もちろんピアノもですが)素人なので専門的なことはよく分かりませんが、荒削りなテクニックの中にも声の質というか、歌心というか、聴く者の心に伝わってくる何かがあるんですよ。きっと教室の先生も今回のライブのリーダーも、そこに光るものを見ておられるんでしょうね。こうして次々にステージの声が掛かるというのは。

 で、ライブ本番。インストの演奏の合間に登場して1stステージ、2ndステージそれぞれ3曲ずつのヴォーカルでしたが、今回もなかなか聴かせてくれました。
 ただ、ヴォーカルの合間の間合いやMCがなんとも素人らしさ一杯で学芸会になってしまうのですが、これは場数を踏むうちにこなれてくるでしょう。

 ライブが終ったら、狭い店内で出演者も客席に座ってワイワイと反省会(?)。私もリーダーのサックス奏者とは以前からの顔なじみなので、親しく話をさせて頂きました。
 そのうちに、いつしかサックスの話に。
 「東京にいる私のサックスの師匠は、早いフレーズが吹ける、指が動く、以前に、まずはいい音を出すことだ、って教えてくれたんですよ。」
 とリーダー。
 「なるほど、確かにリーダーのサックスの音は色気がありますよね。」
 「そうですか。僕は声では歌えないのでサックスで自分の気持ちを歌おうと思って吹いてるんです。」
 確かに、リーダーのサックスは人が自分の声で歌っているようなニュアンスがあるなぁ、って以前から思っていたので、ご本人からそんな話を聞いて納得。
 「彼女も声に存在感があるでしょ。朝からこんな声でこんな風に起こしてほしいな、って思ってしまうような。」
 う〜ん、これも納得。

 テクニック以前に、気持ちを込めること。想いを伝えること。
 それってピアノも同じですよね。確かに想いを伝えるにはそのための技術が必要かも知れないけど、技術があれば伝わるってものでもないような気がします。そう、すごいテクニックで弾いているのは分かるけど何も感じない、とか。弾き方はどことなく心もとないけど、すごく心地よく聴ける、とか。
 まずは気持ち。そして、それを伝えるために技術を磨く。
 ま、分かり切ったことかも知れませんが、そのちょっとした順番の違いがとても大きな違いのような気がします。

 さて、次回は彼女、どんな気持ちを聴く人に伝えてくれるのでしょうか。

 で、自分のピアノは?
 う〜む、目覚めのささやきに負けないように、ですね。

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 古典文学にも疎い私ですが、源氏物語の幻の写本が見つかった、というニュースには興味を惹かれました。
 源氏物語は原典が残っておらず写本によって読まれているらしいのですが、いくつもある写本のうち存在が知られながら行方不明になっていた「大沢本」と呼ばれる写本が発見されたそうです。これまでの写本には無かった内容も含まれているらしく、従来の「源氏」とは違う世界も期待されるそうです。
 「源氏」が記録に登場してから今年は千年とか。千年の時を越えて読まれ続ける世界があるんですね。暑さを忘れて、しばしそんなロマンに浸ってみるのもいいかも。

 とは言ってみたものの…。やっぱ暑っ!
 
−an 弾手−


第235回「蓼科高原のペンションから広がるピアノの楽しみ」 [2008.7.30]

 うれしい出会いがありました!
 先日届いたメール。蓼科高原でペンションひまじを経営されている黒田さんからの久し振りのメールです。
 黒田さんは2007年9月のan弾手コラム連載200回感謝特別号にもメッセージをお寄せいただいていますが、ご自分のペンションでグランドピアノを気ままに弾きながら、また最近ではフルートにも手を染めながら、訪れたお客さんと音楽談義を楽しまれているとか。そして、去年の夏にこのペンションでそんなピアノ談義を交わしたお客さんから久々にメールがあったそうです。1年前、黒田さんから教えてもらったピアノのコード奏法を早速試して、今ではご自分でもビックリするくらい色々な曲を楽しまれているとか。
 そんなうれしいメールを私にも転送していただいたのです。

(以下、ご本人から黒田さんへのメールです)

 メールしたいと思いながらつい忙しくてようようメールできます。
 今年の夏は8月はじめ開田高原に行くことになり御嶽山を拝みたいと計画しています。親兄弟張り切っており、蓼科方面へは行けそうにありません。
 ところで以前お邪魔したときに教えてもらったコード奏法にすっかりはまっております。去年8月からコードを覚え始め、覚えるのは1ヶ月程度でしたが、指が自然に行くようになるのに半年かかりました。
 dimなども含めてほぼ弾けるようになり、このピアノ発表会ではコードを主体に「慕情」を間違いなく弾くことができました。
 教えてもらったときの[an弾手」のフォークの本も買ってその良さと自分でもどんどん弾けるという快感ですっかりとりこです。
 何せ、クラシックから歌謡曲までどんな曲でも何調でもコードさえふってあれば弾けるのはいいですね。気に入った曲はコピーで抜き出して毎日のように弾きます。ちょっとしたファイルができてきました。これからはさらに気に入った曲は暗譜していつでも弾けるようにしたいと思っています。
 今チゴイネルワイゼンをほぼ弾けるようになり、あと間違わずに弾けるよう毎日の練習のメニューに入れています。この曲が弾けるようになるとは正直思いませんでした。
 もうまともな楽譜で弾くのが面倒になってきて、楽譜の本を買うのはコードのものばかりです。ヘ音記号がいらないので1冊に300曲とかたくさんあるのがいいですね。
 ピアノが弾けるのは例えばあと10年と考えると(今年古希の祝いでした)、コードでたくさん曲をおぼえて弾ければ、まともな曲の何倍もレパートリーがふえることになり、それだけ楽しみもふえるというものです。毎日の練習も楽しみながらでき、やればやるほどコードも自然に指がいくようになります。
 ちょっと長くなりましたが、教えていただいたおかげでいえば人生が変わったような気がします。これからもいろいろ教えてください。ありがとうございました。

 大阪 中村 典男

 という訳で、今年古希の中村さん。
 わずか1年ですっかりコード奏法をモノにされたようで、たいしたものですね。
 私もすっかりうれしくなって早速黒田さんと中村さんにCC(同報)メールでお返事しました。

(以下、an弾手から黒田さん、中村さんへのメールです)

黒田 寛 様
CC:中村 典男 様

 黒田様、お久し振りです。そして、中村様、はじめまして。
 この度は、大変うれしいメールをいただき喜んでいます。
 黒田様が蓼科高原のペンションでピアノを弾きながら暮らしておられる(って、もちろんそればっかりじゃないでしょうけど)ことをお聞きして大変うらやましく思いながら、私の本をペンションのお客様にもご紹介いただいているとのことで嬉しく思っていましたが、こんな形で話がつながっていくとは実に楽しいことですね。

 それにしても、中村様はわずか1年でコード奏法をご自分のものにされたようで、感心してしまいました。おっしゃるように、コードさえあればたいていの曲はそれなりに弾けてしまうのがいいですよね。
 今年古希とのこと、おめでとうございます。
 かく言う不肖私は今年還暦の若造でごさいます。あと20年はピアノ弾けるかな、と思っております。
 これからもご一緒に楽しんでいければ嬉しいです。

 蓼科高原に行く機会もなかなかありませんが、いつか爽やかな高原の空気の中で黒田様の即興演奏やフルートをお聴きできるのを夢見ております。

 これからも何卒よろしくお願い申し上げます。
 ありがとうございました。

 an弾手

早速、中村さんから返信のメールがありました。

(以下、中村さんからan弾手へのメールです。)

 an弾手さんから直接メールをいただくとは大変光栄です。
 おかげさまでコード奏法を毎日楽しんで弾いております。
 昨年黒田さんから聞いて早速インターネットで見ると、an弾手さんの面白い体験談が飛び込んできてそういう世界があるのかと感心したものでした。
 コードの基本を書いた本を買ってきて読むと、むつかしそうだけど理路整然としてとっつきやすいと感じました。アマゾンの一覧にan弾手さんのフォークの本がありすぐ注文したのが始まりでした。好きなフォークが次々間違いながらも弾けるようになってきてすっかりはまったということです。精霊流しや四季の歌など何ともきれいに弾けて陶酔しました。
 もっとも、an弾手さんのようにアルペジオ風に弾くのは苦手で今のところはもっぱら和音で弾いております。それでもフォーク独特の美しい和音が展開していくのでまことにうれしいものです。
 まだ間違えてばかりですが、ポピュラー全集でセプテンバーソングや枯葉など、昔はとても弾けないと思っていた曲がこの腕で弾くことができるようになり感激しています。「もしもピアノが弾けたなら」の曲もきれいな旋律ですね。
 これから展開していこうと張り切っておりまして、クラシック、ポピュラー、アニメソング、フォーク、歌謡曲、童謡など歌集をそろえていくつもりです。

 今回はわざわざメールをいただけてうれしいかぎりです。今後もいろいろお願いいたします。

 大阪 中村 典男

 私が体験し、そして拙い体験談や本で伝えたかったコード奏法の楽しさ。
 そんなピアノの楽しみ方を中村さんは体現されているような気がして、とてもうれしいです。
 中村さんは人生の大先輩ですが、ピアノの世界ではご一緒に楽しみを広げていけたらと思います。
 今回、より多くの方にそんな中村さんのピアノの楽しみ方をご紹介したいという私からの依頼に、快くご承諾いただいた中村さん、ありがとうございました。
 そして、こんな思いがけない出会いを広げていただいた蓼科高原ペンションひまじ・黒田さん、ありがとうございました。
 (黒田さんのHPは「ペンションひまじ」で検索してみてください。美しい蓼科高原の四季の風景を見ることが出来ます。スライドショーのBGMで黒田さんの素敵なピアノも聴けますよ♪)

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 仕事で清和高原まで行ってきました。
 少しは涼しいかな、と期待していましたがさすがにこのところの暑さ。日なたはやっぱり暑かったです!(とは言っても下界の熊本市内とは雲泥の差、でしたが)
 で、ここに来たら仕事の合間に高原のピアノをちょこっと弾かせてもらおう、と密かに企んでいたのですが、な、なんと、ピアノのある郷土料理館のホールで絵本カーニバルの真っ最中。で、ピアノの前もディスプレイがしてあってピアノに触ることが出来ませんでした。
 ちょっと残念。なーんて、実際は本来の仕事をまっとうするのにバタバタで、ピアノなんかで遊んでいる余裕は無かったんですけどね。
 仕事の後は手作りの郷土料理をおご馳走になりました。
 いつもながら、ここの料理はとても美味しいです。ありがとうございました!
 
−an 弾手−


第236回「オノボリサン計画」」 [2008.8.6]

 さてさて、久し振りのオノボリサン計画。この連日の猛暑の中、密かに東京行きを企んでおります。(って、ここに書いちゃったら密かに、もないか^^)
 何しに行くのか?仕事の用件だったらあえてこのコラムに書くことも無いので、ここに書いている以上、つまりはan弾手としてのピアノがらみの上京なのであります。
 な〜んて言っても、もちろん演奏しに行くのではありませんよ。(そんな大それたことありえない?!)
 出版がらみの用件なのです。

 ひとつはドレミ楽譜出版社さん。これまでの編集担当の方が代わられたので、ご挨拶と次の企画の再調整を兼ねて。
 毎年1冊ずつ出す予定だった私の中での出版計画ですが、今年は色々なハプニングが重なって遅れ気味。当初の計画では今頃は新しい本のゲラをチェックしている時期なのに、5月のゴールデンウィークの集中作業のタイミングを逃してしまったばっかりに予定が大幅に遅れてしまいました。選曲とリードシート書きはほぼ終っているのですが、まだまだアレンジ譜の大仕事が残っています。新しい編集担当の方と今後の予定を詰めてきたいと思います。

 もうひとつの企みは、私にとって新しい出版社の方との顔合わせ。某大手総合出版社の編集の方とお会いする予定です。
 出版社名や打合せの内容は…。すみません、まだここで発表出来る段階ではありません。でも、聞けば誰でも知っている大手出版社です。話の内容も編集者の方がとても前向きに関心を持っていただいているのですが、まだどうなりますか。私としては新しい世界に挑戦するつもりで頑張ってきます!

 その他の企み。上記以外にふたつの会社を訪問する予定です。
 どちらも音楽関係の企画・編集、楽譜制作、出版に関係する会社。ひょんなことから私もこれまでにピアノがらみの教本や曲集、エッセイ本などを出版する機会を頂いたので、せっかく上京する機会にそんな業界の色々な現場を覗かせてもらったり、関係する人にお会いしたり出来ないかなぁ、とアプローチしてみたら、すんなりOK!
 楽しみです。

 他にはオノボリサンらしく、最近の東京名所めぐりでも、って思ってます。以前オノボリした時は当時話題になっていたメイドカフェのハシゴ(!)とか、オープンして間もない表参道ヒルズとか(そうそう、表参道ではカワイのショールームにフラッと入ってシゲルカワイのグランドピアノを試弾させてもらったっけ)、夜は新宿のライブハウスを覗きに行ったりとか。

 さてさて、今回はどうなりますことやら。
 しっかしこの猛暑。バテて動けなくならないか、それが心配だぁ。

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 このところ、このan弾手コラム、水曜日アップになってしまってる!
 本当は原則火曜日アップだったのですが…。すみません、原則を変えたわけではありませんが偶然が重なってしまいました。今回も水曜日になっちゃいましたね。
 で、来週、再来週はもっと変則になりそうな予感がしてます。変則になっても連載はまだ続く予定(の、つもり)ですので、どうかよろしくお願いしますね〜!
 
−an 弾手−


第237回「君の心にどんな風に届いているのだろう?」 [2008.8.26]

 「でも、私のピアノを聴いて泣き出したらどうしましょ?ま、その時はすぐ止めますかぁ。」

 我が家にかわいい女の子がやって来ました。甥の子供・生後9ヶ月です。
 で、甥夫婦と一緒について来た私の姉が
 「後でこの子にピアノ弾いて聴かせてよ。」
 って!
 うーん、大丈夫かなぁ。いきなり泣いたりしないかなぁ。

 …その日、曾婆ちゃんにあたる私の母に、甥夫婦が曾孫の顔を見せに来たのでした。
 「よその家に行くとすぐ泣くのでちょっと心配。」
 という甥夫婦の言葉をよそに、若いパパの胸に抱かれて彼女まあまあのご機嫌です。
 しかし、ほんとに小さな手。2〜3ミリ(?)しかないようなかわいらしい爪。このところ、こんな小さな子どもとじっくり接する機会も無かったので、なかなか新鮮です。
 でも、私が抱き寄せようとすると、とたんに
 「ウェーン!」
 ごめんごめん、この見知らぬおじさん、やっぱり怖いかな。再びパパの胸に戻ってまた笑顔。
 しかし、一時もじっとしていませんね〜。目の前の食卓の上の物をつかもうとしたり、食卓の縁をかじったり、座布団の縁の房をしゃぶったり。

 周りの大人の視線も話題も一身に集めながら主役の座を務めて2時間経過。
 「じゃ、そろそろピアノ弾くね?」
 そんな姉の言葉にうながされるようにつぶやいた私のセリフ。

 「でも、私のピアノを聴いて泣き出したらどうしましょ?ま、その時はすぐ止めますかぁ!」

 みんなでピアノのある部屋へ移動です。
 「最初は遠くのほうで聴かせようかね。」
 と姉。
 うん、確かに。グランドピアノの音って結構響くし、いきなり近くで音出したらびっくりするかも。
 彼女、ママに抱っこされてピアノから離れた向こうの隅に掛けます。
 「静かに弾いてみて。」
 はい、そうします。私だって、自分のピアノでいきなり子供に泣かれたらショックですもん。
 大人はお世辞言えるけど、9ヶ月の子供は感情のままに正直に反応するに違いないから。普通の「人前ピアノ」とはまた違ったプレッシャーです。うっ、なんだか試されてるみたいだなぁ。

 …さて、いよいよ、音出しの瞬間。
 ここはもちろんコード進行のタラタラ弾きから始めよう。顔色をうかがいながら雰囲気も音量も自由にコントロールできるから。
 まずは出来るだけ軽く静かに弾き始めます。弾きながらそっと顔色をうかがいます。
 ん?何?この表情?
 部屋の向こうの隅から、じっと真剣に私の方を見つめている。何か、初めての珍しいものを見るような目。確かに、君の9ヶ月の人生でピアノの生音を間近で聴くのは初めてなんだろうけど。でも、心配した泣き出しそうな気配とは違う。さっきまでの一時も落ち着かない仕草は消えて、真剣な目でじっとこちらを見つめている。
 少し安心した私は、そのままKeyを変えながらしばらくコード進行を弾く。そして定番の(?)ダニー・ボーイ。君はママに抱かれたまま部屋の向こうからピアノのすぐ横までやって来る。真剣な表情でじっとピアノを見つめている。音に気持ちを集中しているのが分かる。音はもちろん聴こえているはず。
 で、音楽は?君の心にどんな風に届いているのだろう。

 数曲弾き終わります。部屋が静かになります。
 ん?じっとしたまま遠くを見つめるような目。そのまぶたが少しずつ下がって…。大人たちがかたずを飲んで見守る中、彼女は薄目を漂わせ始めます。パパがイタズラっぽく可愛い足をくすぐっても反応なし。

 …主賓はおやすみの様です。

 よかった!子守唄代わりになって。いや、それまで2時間も散々動き回ったので、いい加減に疲れておやすみのタイミングだったのでしょうけどね。
 ま、理由はともかく。
 泣かれなくてホッとした私でしたぁ!

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 オリンピックが終りましたね。
 始まる前から色々ありました。始まった後も色々ありました。蒸し暑い熱帯夜の部屋でふとんにゴロゴロしながらテレビを視てました。連日の深夜テレビのせいか、暑さのせいか、何だか体調を崩しそうな2週間でした。ところが今朝は薄いふとんでもかぶらないと寒く感じる朝でした。
 熊本では9月中旬の藤崎宮の隋兵のお祭の後、急に涼しくなるのを昔から「隋兵寒合(ずいびょうがんや)」と呼んでいます。でも今年はオリンピックが終ったら急に涼しくなった。「オリンピック寒合(?)」。
 これまでがあまりにも暑過ぎたからそう感じるんでしょうかね。
 
−an 弾手−


第238回「弾手の会@表参道&ミッドタウン」(その1) [2008.9.9]

 六本木のホテルの窓から外を覗くと、どんよりした低い雲に東京タワーのてっぺんが飲み込まれて見えます。
 朝から東京ミッドタウンでギャラリー巡りをして一度ホテルに戻ってきました。汗ビッショリの体にシャワーを浴びて、さて、そろそろ表参道へ向う時間。

 実は、今回のオノボリ旅行。このコラムに予告を書いたら、早速「弾手の会」の皆さんが私の予定に合わせて表参道KAWAIでオフ会の段取りをしてくださったのです。
 ちなみに「弾手の会」についてはこのコラム第217回、第222回でもご紹介していますが、ここでも改めてご紹介しましょう。

 それは、千葉にお住まいの一人の男性の「人前ピアノ」から始まりました。私のコラムや本を読まれて一念発起、ピアノに挑戦。そして更に私の「人前ピアノのすすめ」に動かされて、なんと赤坂のライブハウスのフリー演奏の日に人前演奏を実践!そのうち一人では物足りない、と、私のコラムを通じて仲間の募集をされたのです。その呼び掛けに東京近郊や北京在住のコラム読者の方が手を挙げられて第一回の集まりが実現したのが今年の2月。それから不定期ですが1〜2ヶ月に一回くらいの割合でそのライブハウスに集まってはピアノ弾きっこや即興のセッションを楽しまれているらしいのです。
 更に、その会の名前をどうしよう、という話になった時、私の名前「an弾手」から「弾手の会」ではどうだろう、ということになったらしく、わざわざ私に伺いのメールを頂きました。良いも悪いもありません。不肖an弾手の名前を使っていただけるなんて光栄の至りではありませんか!
 まだ一度もお会いしたこともない方々が東京の地で「弾手の会」という名前でピアノを楽しんでおられる。その様子はメールに加え最近ではmixiの日記やメッセージでも逐一ご連絡いただくようになり、私もいつの間にか皆さんと一緒にオフ会を楽しんでいるような気分になっていたのでした。

 皆さんと一緒の(ヴァーチャル)気分。それがいよいよ数時間後には(リアル)になる。そんな、なんとも不思議な気持ちに包まれながら地下鉄に向います。
地下鉄六本木から恵比寿に出てJR山手線に乗り換え原宿へ。さっきまでの六本木の街とは明らかに年齢層が違う人の波に流されながら、いつの間にかまた降り出した雨の中を傘を差して歩きます。左手に表参道ヒルズを見ながら少し進むと、見えてきました!KAWAIの看板。ここがいよいよバーチャルからリアルの世界へワープする入口なのか!

 中に入ると1階は楽譜売り場。会場はここの3階と聞いているのですが、はやる気持ちを抑えながらちょっと楽譜棚の前をウロウロ。何してるのか、って?そう、このところ書店や楽器店に来た時の習慣になってしまった自分の本のチェック!はい、しっかり並んでましたぁ!ってちょっと安心したところで3階に向います。
 エレベータのドアが開くと、目の前のフロアにはグランドピアノがずらり。しかし見渡してもそれらしい人影はありません。店員さんを見つけて弾手の会の幹事さんの名前を言ってみたら
 「はい、お待ちしておりました。皆様お揃いですよ。」
 と言いながら案内してくれました。

 会場のサロンはまだ前の予約の方が使用中で、その手前の小部屋に皆さん待機していらっしゃるらしい。
 ジャーン、いよいよご対面の瞬間です!

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 我が家の隣りは畑です。それも家庭菜園ではなく耕す時はコンバインが入る本格的な畑です。
 夏の間、一面に緑の葉が茂っていました。でも今はすっかり獲り入れが済んで、土の上に点々とイモのツルがまとめて置かれた静かな光景が広がっています。まだ日中の日差しは強いのですが、この何にもなくなった畑を見ているとしみじみと秋を感じます。
 そう言えばここにうねが作られ、ひょろっと植えられた頼りない芽を2階の窓から眺めていたのはまだ春先。あれから半年、あっという間に季節は過ぎて行きましたね。
 隣りの畑。
 時の移ろいと命の営みを見せてくれる、素敵な風景です。
 
−an 弾手−


第239回「弾手の会@表参道&ミッドタウン」(その2) [2008.9.17]

 表参道カワイショールーム3階。
 店員さんにピアノサロン前の待機室まで案内してもらいます。ここも小部屋の貸レッスン室らしく、ドアの小窓からグランドピアノがチラッと見えます。
 「皆様、こちらでお待ちです。」
 ジャーン、いよいよご対面!

 私の上京に合わせて東京の「弾手の会」の皆さんが段取りしてくださった臨時オフ会。これまでメールでは何度もお話してすっかり打ち解けた気分になっているのですが、リアルでお会いするのは初めて。ちょっとドキドキの瞬間です。

 ドアの小窓の向こうに男性の顔が…。目が合います。あ、弾ディさん!
 日頃の「弾手の会」例会場・カーサクラシカのホームページで写真を見ていた私は弾ディさんのお顔はすぐ分かりました。

 ドアが開きます。
 「こんにちは。an弾手です!」
 「こんにちは。中島(弾ディさんの本名)です!」
 中島さんはこの弾手の会を立ち上げられた張本人!今や事務局としてすっかりお世話いただいています。ご挨拶しながら中に入ると、他に男性が3名。お1人ずつ挨拶を交わします。
 清水さん。私より少しだけご年配で、伝え聞く所によると素敵なジャズピアノを弾かれるらしい。後で聴かせてもらうのが楽しみです。
 森宅さん。以前、an弾手コラムを見てご質問を頂いた方でした。
 もう1人、オシャレなベレー帽を被った若いイケメンの男性。
 「あ、白と黒の夫です。」
 えっ、あの白と黒さんのご主人なんですね!
 「はい、今日は手伝いで来ました。」
 (そう言えば事前のmixi日記コメントで、白と黒さんが「旦那ちゃんも借り出して伺いますのでよろしくー」って書かれてましたっけ。)
 グランドピアノで窮屈な部屋に立ったまま挨拶していると、再びドアが開いて女性がお二人。
 「白と黒です!」
 「こあらです!」
 「あ、白と黒さん!」(こちらも日頃からカーサクラシカのホームページで写真を拝見しているのでお顔はすぐ分かりました!)
 こあらさんは初めて。私のマイミクさんでメッセージやコメントのやり取りは何度もしているんですが、カーサクラシカの写真でも決して顔を出されない謎の女性なんです。
 うわぁ、きれいな方!(すみません、表現がまずかったら失礼お許しください。でも、内心、率直な感想。本当にふんわり優しいオーラが。)ピアノのほかにハープのような楽器を弾かれるらしい。こちらも後で聴かせていただくのが楽しみです。

 と、白と黒さんが早くもカメラを取り出します。
 「記念写真撮りましょー!」
 皆でグランドピアノが並んだショールームの中に入り記念撮影。
 「はい、ピアノの前に座って!」
 って、白と黒さんの掛け声でピアノの前に座ります。
 「じゃan弾手さんと連弾してるとこね!」
 という訳で、みなさん、1人ずつ交代で私の横に並んで掛けていただいてピアノ弾く振りしながらカメラ目線で「ハイ、チーズ!」
 途中、もう1人、坂井さんという男性が到着されて本日の参加者が全員勢ぞろい。坂井さんはとうがらしさんと言うハンドルネームで私のマイミクさんでもあります。

 遊んでいるうちに、いよいよピアノサロンのスタート時間です。中に入ると、ちょっとしたミニコンサートが開けそうな部屋に、ドーンとシゲルカワイのフルコンサートピアノ。
 おや、白と黒さんと旦那さんが何やら機械を持ち込んでセッティングが始まりました。どうやら録音機材らしい。しかしかなり大きい機械で、これは本格的!そうか、旦那さんは機械運搬とセッティング要員!?
 「後で皆さんには今日の模様をCDに焼いてお渡ししま〜す!」
 と、白と黒さん。
 (うわぁ、しっかり証拠音源が残るのかぁ!う〜む、微妙だ…)

 いよいよ会のスタートです!
 ご説明いただいた進行予定によると、最初に私が15〜20分程頂いてご挨拶と演奏。その後、皆さんが1人ずつ10分程度の時間で演奏披露。最後にまた私が15〜20分程度演奏して終わる、とのこと。
 うわぁ、前後合わせて30分以上持つかなぁ。このところずっとピアノに触る時間も無かったし。大丈夫かなぁ。

 まず、弾ディさんのご挨拶に続いて…
 「では、an弾手さん、お願いします!」
 いよいよ始まりました!

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
●お知らせ●人前素人演奏を一緒に楽しめる仲間募集!!
「弾手の会」幹事の中島さんから、このコラムの読者の方にご案内です。
このコラムでご紹介しています「弾手の会」では、ただいま広く仲間を募集されています。ご興味がおありの方は中島さんまでお問い合わせ下さい。
 以下、中島さんからのメールをそのままご紹介します。

 an弾手様

 こんにちは、「弾手の会」の中島です。
 今回は本当にan弾手様の演奏を聴けるなど、思い出いっぱいの楽しい時間をありがとうございました。

 ところで、ふと思いついたのですが、ピアノ奮戦記に今回の「弾手の会」集まりを近々ご紹介いただく時に、『ピアノ等の人前演奏を楽しむ仲間募集!!』ということで呼びかけをしていただければ、と考えてしまいました。

 今は私を含めて9人で、ある意味ではちょうどよい人数かもしれませんが、1つの輪が盛り上がってきたところですので、この辺で特に、私のような初心者がもう少しメンバーになってくれたら嬉しく思いながら、人前素人演奏を一緒に楽しめる方を募集!!ということで、コラムにお書き添えくだされば本当に助かります。
 (赤坂といえども会場のカーサ・クラシカは敷居の高くない気軽に素人が集まれるライブハウスです、ということを強調いただいて)。
 ほんとに簡単な呼びかけで充分かと思います。

 ●連絡先は以前と同じように、私の勤務会社でよろしいかと思います。
 中島富士夫
 千葉市在住 年齢50代
 某外資系証券会社決済部門勤務
 直通 03-3512-7810
 勤務先メールアドレス
 fujio.nakajima@macquarie.com

 ということで、弾手の会のメンバーは現在男性5人女性4人、下は20代から上は60代まで平均年齢40代から50代位?(←これは私an弾手の勝手な推測ですが)。楽器はピアノだけでなくウクレレや民族楽器などを持参される方もいらっしゃるようです。特に決まりごともなく「参加したい!」と言えば楽器を始めたばかりの初心者の方もすぐに仲間になれる気軽な集まりのようですので、どうぞお気軽に上記の中島さんまでお問い合わせ下さい。
 
−an 弾手−


第240回「弾手の会@表参道&ミッドタウン」(その3) [2008.9.24]

 まず、弾ディさんのご挨拶に続いて
 「では、an弾手さん、お願いします!」
 いよいよ始まりました!

 表参道カワイのピアノサロン。私の上京に合わせて東京「弾手の会」の皆さんが企画してくれたオフ会は、ピアノ展示フロアでの皆さんとの記念撮影に続いていよいよ本番。私の持ち時間20分のプログラムからスタートしました。
 「えー、本日はこのような会を開いていただいて、本当にありがとうございます。」
 って、なんか面白くない型どおりの挨拶をしている自分。
 「コード奏法に出会って、こんなに簡単にピアノが弾ける!っていう驚きと感動。子供が何かひとつ出来るようになったとき、ほらほら見てって周りの人に言いたくなるような、そんな気持ちで始めたホームページのコラムが、いつの間にか本になりいつのまにかこのような皆さんとの出会いになって、今こうして皆さんと一緒にここにいれることが大変うれしいです。本当にありがとうございます。」
 人前で話すのが苦手な私のぼそぼそした挨拶にも、皆さん笑顔で温かく見守っていただいているのが分かります。ありがたいことですね。

 さて、ご挨拶もそこそこにピアノの前に座ります。
 まずはコード進行のパラパラ即興弾き。初めて触るシゲルカワイのフルコンサートピアノの鍵盤の感触をしばらく確かめてから「ダニーボーイ」に入ります。
 あれ、なんかリズムがおかしい? あれ、いまなんか違う鍵盤押しちゃったかな?
 何となく落ち着かないまま1曲終り。
 で、皆さんの温かい拍手〜。
 さすがに指は震えないものの、気持ちが浮ついてるなぁ〜
 続いて「浜辺の歌」。
 そして、海つながりで「誰もいない海」「ひき潮」。
 曲の途中で、私の緊張をなごませるかのように皆さんが軽く話し掛けたり質問したりして下さいます。
 「そうですね〜、左手パターン3でしたら例えば1−6−2−5をこんな感じで弾けばいいですよ。」
 なんて言いながら左手のアルペジオを披露。
 「難しい調の曲は自分で弾きやすいように移調してもいいんですか?」
 「はい、私の本ではほとんどの曲をシャープやフラットが1つの調に変えて載せてますよね。ただ、移調すると元の調の雰囲気が変わってしまうこともありますけど。」
 などと、言葉を交わしながら曲をつないでいけたので、あまりガチガチにならずに大助かりでした。
 皆さんのお気遣いに感謝です。

 しっかし…。 後日、白と黒さんが送ってくれたライブ録音のCD聴いてみて愕然!なんじゃこの演奏!緊張しまくりのボロボロ演奏。音は外すは、テンポは走るは。よくこれで皆さん怒らずに聴いて下さったと、1人で冷や汗をぬぐってしまいました。

 さて、私に続いて皆さんの出番。
 清水さん、森宅さん、坂井さんは、それぞれご自分のレパートリーの曲や、数ヵ月後のご自分の発表会のために準備している曲などを披露して下さいました。
 弾ディさんはまず白と黒さんと連弾。私の本の「いちご白書をもう一度」のリードシートを使い、白と黒さんがコード伴奏、弾ディさんがメロディーで息の合った演奏。そのあとそれぞれにソロ演奏。噂に聞いていた白と黒さんの冗談音楽(?)メドレーや、豪華客船飛鳥のラウンジピアノ乗っ取り伝説(?)の曲も生で聴かせてもらいました。
 こあらさんは竪琴で数曲。指先でつま弾く優しい音色がしっとりと流れます。最後は竪琴の調べに合わせて白と黒さんの澄んだ歌声が響いて、うっとりと聞き惚れてしまいました。

 「では、もう一度an弾手さん、お願いします〜!」
 の声に、再び立ち上がってピアノの前へ。
 私のドレミ楽譜の3冊の本の中からそれぞれ一曲ずつ選んで弾いてみる事にします。
 「虹の彼方に」
 「冬の星座」
 「小さな日記」
 途中、聴いている皆さんの方を見たら、女性のお二人が両手でハートの形を作って空中にフワフワと飛ばす仕草。私の拙い演奏を盛り立てていただいて感激です!

 かくして東京原宿・表参道カワイでの「弾手の会」は、なごやかなうちにも夢のような2時間が過ぎていました。
 「ではこれから、ミッドタウンに移動します〜!」
 引き続き場所を変えて、皆さんとの楽しい食事会です。

(続く→随時更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏者超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 9月23日・秋分の日。
 会社は一応休みでしたが、私はある広報誌の取材でライター、カメラマンと同行して祝日の街に出掛けてきました。テーマは「街が人を動かす・人が街を元気にする」。
 色々な分野で熊本の街の元気づくりにご活躍中の、ご年配の方2人と20代前半の若者2人にお会いしました。年齢は違っても、皆さんに共通していたのは一様に目が輝いておられたこと。ご自分の仕事や取り組みについてお話をされる時の顔は、本当に生き生きと楽しそうでした。
 午前中から夕方まで立ちっぱなし歩きっぱなしで足は疲れましたが、それ以上に元気を頂いた一日でした。
 
−an 弾手−


バックナンバーリストに戻る   ピアノ奮戦記に戻る