インタビュー
 今、輝いている熊本ゆかりの舞台芸術家の素顔に迫ります。
 
写真(出田りあ) クラシック楽器の中に、マリンバをソロ楽器として確立させたい
マリンバ奏者 出田りあ
 
 「なぜ、マリンバを選んだの?」とよく聞かれるんですよ。父に勧められて、6歳でピアノとマリンバを始めたのですが、じっと座って弾くピアノよりも、2メートル半の幅を動き回るマリンバの方が自分に合っていたんですね。プロになろうと意識したのは、高校生になって海外の演奏家とも交流が増えてからです。15歳のとき、日本で行われた「世界マリンバフェスティバル」で、フランスのマリンバ奏者の公開レッスンを受け、その指導法に惹かれてフランス留学を決めました。
 もともとフランス音楽が好きで、ドビュッシーやラベルなど印象派の曲を好んで演奏してきましたが、今はドイツに近いストラスブールで暮らしていますので、最近はドイツ音楽にも興味が湧いてきました。作曲家が生まれ育った国の文化を感じ、その国の言葉の響きに浸りながら学ぶのは、とても大事なことだと思います。ストラスブール音楽学院は今年で卒業しますが、これからも拠点はヨーロッパに置いて活動していくつもりです。
 マリンバは、比較的新しい楽器で、日本に入ってきてまだ5〜60年なんです。歴史が浅い分、いろんな可能性のある楽器だと思います。ヨーロッパではソロ楽器しての認知度がまだ低いので、マリンバの魅力をもっと知ってもらうためにも、聴きなじみのあるクラシック音楽のレパートリーを増やして、「マリンバで聴いてもいい曲だね」と言われるようになりたいです。そのために編曲も手がけています。
 マリンバは打楽器と捉えられていますが、私はメロディーを奏でる楽器だと思っています。だから「叩く」ものではなく「弾く」ものなんです。材質は木ですから、絶えず呼吸をしていて湿度で音が変わる繊細な楽器です。コンサートのリハーサルと本番で、音の感じが微妙に違ってくることもあるんですよ。
 演奏の技術はもちろん大切ですが、美しい音を出すという基本を心掛けています。叩けば誰でも音が出せる楽器だからこそ、自分にしか出せない音を追求していきたいと思っています。

プロフィール(出田りあ)
1982年、オーストリア・ウィーン生まれ。平成音楽大学学長、出田敬三氏の長女。九州女学院高校(現ルーテル学院高校)を卒業後、フランスへ留学。2003年「第1回パリ国際マリンバコンクール」でグランプリを受賞。パリ高等音楽学院を審査員全員一致の一席および審査員特別賞を得て卒業後、現在はストラスブール高等音楽学院に在学。2005年5月、熊本と東京でデビューリサイタルを開き、6月には米国バークリー音楽大学でコンサートを開き講師を務めるなど、海外でも活躍中。
 
熊本県立劇場広報誌「ほわいえ」Vol.52より

ほわいえVol.51のインタビューへ ほわいえVol.53のインタビューへ