私と県劇
平成24年、開館30周年を迎える熊本県立劇場。
節目となる30周年に向けて県劇で上演された思い出の舞台を、
熊本を拠点に活躍されている様々な舞台芸術関係の方に
振り返っていただきます。
オフィス・ムジカ代表 西嶋公一
Vol. 17
オフィス・ムジカ代表
西嶋 公一
 東京で過ごした学生時代は食費を削りバイト代を全てつぎ込んで、音楽鑑賞三昧の生活。21歳で熊本に戻ったころに県劇が誕生し、地方でもクラシックに触れられると大興奮しました。
 私は成人式の時に「25歳になったら自分で事業を立ち上げる」と決めていました。そこで25歳の時、県立劇場という素晴らしいホールで大好きな音楽を熊本の人にも聴いてほしいと、コンサートやオペラ、バレエ公演を主催する「オフィス・ムジカ」を立ち上げたのです。県劇がなければ、オフィス・ムジカは生まれる事無く、全く違う仕事をしていたでしょう。
 以来26年間、これまでに150回近く利用させてもらった県劇は、第二の職場のような感覚です。
 “一流の演奏を、一流のホールで”と、会場は県劇で無くてはと、こだわって使わせていただいて来ました。
  20世紀最高のピアニストの一人であるリヒテルの演奏や、小澤征爾、ケント・ナガノといった名指揮者の公演、シルヴィ・ギエムのステージなど、挙げたらきりがありませんが、1995年にシャルル・デュトワ率いるモントリオール交響楽団を招いた時のアンコール曲、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」はとにかく素晴らしかった。公演中は裏方で駆け回っていて、ステージを楽しむことはなかなかできませんが、この時ばかりはこの1曲を聴きたくて客席に入りました。最後方に立って、しばし主催者であることを忘れて音楽の喜びに浸りました。
 県劇が30年間、熊本の文化発信拠点として歩み続けて来られたのは、素晴らしい施設と、それを運営する財団スタッフの皆さんの両輪があったからこそ。この間、財団には意欲的な若手スタッフが育たれ、これからの更なる発展を期待しています。
 

熊本県立劇場広報誌「ほわいえ」Vol.137より

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