第551回 「森のテラスで。弾手の会ピアノ交流会のお知らせ」 [2015.6.23]
 弾ディさんからメールが届きました。
 『皆さまは森の中の散歩はお好きですか? 木漏れ日の中、そこにひろがる緑の匂い、私には最高のリラクゼーションです。そして今度の「弾手の会」は、そんな自然の中で行うこととなりました。』

 「弾手の会」とは、このコラムでも既に何度もご紹介していますが、大人のピアノ(楽器)好きの人達が、ピアノを囲んで、あるいはギターやウクレレ、ライアーなどを持ち寄って楽しく交流したり自由に音楽談義を交わしたりされている集いのこと。
 そもそもは、このan弾手コラム読者の千葉在住の男性の方(弾ディさん)が発起人になり、私がこのコラムで呼び掛けのお手伝いをさせて頂き、東京赤坂のライブハウスに集まられたのがきっかけでした。私も何度か上京の折に皆さんと楽しく交流させて頂きました。
 会、といっても何の規則もなく、ただ皆で楽しく音楽を楽しみましょう、という暗黙のルールだけです。既に人前で演奏をされている経験者から、まだ自己流で始めたばかりで〜という人まで、ただひとつ「ピアノが好き」「音楽が好き」という想いさえあれば誰でも大歓迎、みたいですよ。

 って、前置きが長くなってしまいましたが。
 以下、世話人の弾ディさんから頂いた、次の弾手の会ピアノ交流会のお知らせです。

●日時:7月12日(日)12時〜16時(4時間)
●会場:森のテラス
     〒182-0003 東京都調布市若葉町1-32-13
TEL / FAX 03-3307-1987
http://www.moritera.com/tokyo/tokyo-moritera.htm
E-mail / info@moritera.com
●集合場所:仙川駅(新宿から京王線各停で約30分)

 (弾ディさんからのコメント)
 木々に囲まれたお家の一部屋にピアノが置いてあります。テラスに座りながら演奏を聴くのもお洒落ですし、そこに小鳥のさえずりが聞こえれば、ちょっとした二重奏になって和むことでしょうね。
 費用ですが、ここは部屋代の人数割でなく参加者各自にかかるシステムで、当日は4時間使用で一人当たり総額が僅か1,500円位のお支払いで済みます。そして各自飲食持ち込み自由であることもありがたいですね。
 キッチン使用も自由でティーカップ、グラス、お皿もありました。
 ただ1つ、部屋に冷房がないため7月の蒸し暑さはこたえるかもしれませんが、テラスに出て風にあたれば涼しさも感じることでしょうか。
 こんな粋な場所もあったのですね。
 自然の中へ響き入る演奏は、都会のビルの一室での演奏とは違う雰囲気にさせてくれることでしょう。

  ご興味がおありの方は、世話役の弾ディ(中島)さんまでご連絡くださいとのことです。(an弾手コラムで見た、と書いて頂くと話が早いかと思います)
●弾ディさんのメールアドレスはこちら

fnakajim@cnc.jp



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。

 先日の日曜日は町内の一斉清掃日でした。
 このところ雨の日が続いていましたが、この日は朝からいいお天気。朝7時集合だったので、いつもより早目の6時過ぎに起きて近くの公園へ。朝日の中、既にたくさんの人がホウキやクマデ、カマなどを手にして清掃されていました。
 小一時間で公園の中も周囲の道路もみるみる綺麗になって清掃完了。
 みんなが解散した後、朝日に映る木々の影が公園の中に伸びて綺麗でした。

 
−an 弾手−


第552回 「モンゴルの草原を駆け抜ける風と共に〜馬頭琴コンサート」 [2015.6.30]
 目の前には、どこまでも果てしなく続く草原。はるか遠くの地平線を馬の群れが駆けていきます。その手前には羊の群れ。その後を追う人の影。そこに、風に乗って流れてくる馬頭琴の物悲しい調べ。

 目の前にそんな光景が浮かんでくるような一瞬でした。
 その日私がいたのは、古びた木造の2階にある小さな空間。馬頭琴コンサートの会場でした。

 馬頭琴。モンゴルの遊牧民に伝わる伝統楽器で、文字通り馬の頭の彫刻が付いた、三味線に似たスタイルの弦楽器。弦は2本。っていうか、実際は弦1本に見えるところに低い方の弦で180本、高い方の弦で120本が束になって張られている…と、その日の演奏者、内モンゴル出身のマイラスさんの解説で初めて知りました。これを膝の間に立ててヴァイオリン(チェロ?)のような弓で弾きます。

 狭いレトロな木造の部屋は、20人程の人が入るとほぼ満員。暗く照明を落とした中で、馬頭琴を弾くマイラスさんの姿だけがスポットライトを浴びてぽっかりと浮かび上がっています。
 日本に来てまだ7年程というマイラスさん、「日本語が苦手ですが…」と言われる割には、自己紹介の中で「私、草原の貴公子と呼ばれています」なんてギャグを交えて笑わせてくれます。モンゴルの地理や人々の暮らし、馬頭琴の楽器紹介、そして演奏曲の解説を交えながら演奏してくれました。

 「荒城の月」、山口百恵の「コスモス」、坂本冬美の「また君に恋してる」、などの日本の曲も、馬頭琴で奏でると何とも切ない風情があります。モンゴルの曲では、まさに広大な草原を馬が駆ける情景が浮かんでくる「万馬走」(だったかな?)や「ふるさと」「ラクダが走る」「朝焼け」など、いずれも草原の風を感じるような世界でした。

 聴きながら、私はこれらの曲のどこからこの独特の雰囲気が出てくるんだろうと考えていました。(って、ついついan弾手理屈モードにスイッチが入ってしまいます:笑)
 一通り演奏が終わった後、マイラスさんと客席の間で質問タイムがありました。楽器の事やマイラスさんが着ている民族衣装の事などいくつか質問があった中で、私も気になっていたことを聞いてみました。
 「今聴かせていただいた曲には独特の雰囲気がありましたが、モンゴル特有の特別な音階とかあるんですか?」
 一瞬、「音階」という日本語がうまくマイラスさんに伝わらなくてちょっと話が噛み合いませんでしたが、「そうですね、ファとシの半音の音は使いません」という説明があって、「やっぱりそうか」と納得。
 演奏を聴きながら、ファとシを抜いたヨナ抜き音階(ペンタトニック・スケール)っぽいなぁ、と思っていたので。
 日本の民謡にもジャズにも使われるヨナ抜き。中央アジアのモンゴルでもあるんだ。これって、とても応用範囲が広い音階ですね。実は私も曲のイントロやエンディングのフレーズの中などでよく使います。使い方次第で変に民謡っぽくなることもなく、簡単に弾けるのにオシャレに聴こえて重宝します。私がいつも弾く「ダニー・ボーイ」にも使ってますし(笑)

 話しが少々理屈っぽくなってしまいましたが。
 気分はいつしか中央アジアの大草原に遊んでいたその夜のコンサートでした。

 ※馬頭琴の説明をするマイラスさん(→クリック)



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 あっという間に6月も今日まで! 明日からは7月ですね。全く実感がありませんが今年も半年過ぎたんですね。
 熊本はここ数日いいお天気でしたが、今日から週の後半にかけて、また雨になりそうです。もうしばらく梅雨空が続くのでしょうか。
 梅雨といえば、庭の緑も一気に茂ってきたような気がします。緑の勢いを楽しみながら、やがて来る夏に向けて気持ちを広げていけたらなぁと思います。
 
−an 弾手−


第553回 「20年振り?音楽が縁で再会」 [2015.7.6]
 「あ! 社長! 社長でしょ!?」
 その日のライブでのこと。1st stageが終わり、たくさんのお客さんがトイレの順番待ちで席を立って並んでいました。
 ひとしきり列が切れたので私も席を立ったら。通路で突然一人の男性に声を掛けられました。薄暗い中でその声のする方を見たら。そこに見覚えのある顔が。

 「わっ、久しぶり! こんな所で会うなんて!」
 「うわぁ、懐かしい!」
 そう言いながら彼は私をハグしてくれました。
 え?オジサン同士のハグ、ちょっと気持ち悪い? いやいやそんな事は言わないで(笑)
 「社長、ピアノを始められたんですって?どこかで聞いたような気がするんですけど?」

 実は私、an弾手とは別に一応本業がありまして。デザイン企画会社を経営しております。目の前にいる男性、もう20年ほども前にうちの会社にいたデザイナーの社員でした。
 彼がいた当時は私がまだコードに出会う前。ですから彼と一緒に仕事をしていた頃は、まだan弾手なんかこの世に存在していなかったのです。

 それはそうと、その日のライブと彼のことが私の中で全くつながりません。
 「今日のライブはどういうきっかけで来たの?」
 「実は私、ゴスペルの教室に入ってまして。今日はその関係で話を頂いて」
 「え〜っ、そうだったんだ!」
 全く意外でした。彼と音楽とのつながりなんてイメージもなかったので。実はその日のライブ、私はそのゴスペル教室にいる別の知人とずっと隣の席で話しながら聴いていたんだけどね。話では私も良く知っている別の音楽関係の店にもよく行っているらしい。行動範囲カブっていたのに、今までそのエリアにいることにお互い気が付いていなかった様です。

 「社長、どこかで演奏とかされてるんですか?」
 「あ〜、去年は2回、ライブの店でソロライブやったよ」
 「へぇ〜、今度される時は教えてください。行きますから!」
 「an弾手のコラムっていうのを書いているからそれを見てみて。もし何かやる時はそこに書くと思うよ」
 と言ってこのコラムの紹介もしておきました。彼がうちの会社にいた時は当然このan弾手コラムもまだ始まってなかったので、知らなかったようです。

 で、彼がこのページを開いたら、早速こんなエピソードを彼に断りもなくアップしていて、怒られないかな?
 ごめんなさい。でもとても嬉しかったので書かせて頂きました!

 音楽って、音を楽しむ、って書きますよね。当然、音楽をやっていると自分も楽しいのですが、同時に、音楽をやっていく中で自分の周りの時間、空間にいろんな出会いやつながりが広がっていくというのも、とても楽しいなぁと思います。
 自分の音楽を聴いてくれて誰かが笑顔になる。誰かが「自分もやってみよう」と思ってくれる。前々回のこのコラムでご紹介した「弾手の会」もそうだし、このコラムを読んで頂いている、まだお会いしたこともないたくさんの人たちと、何らかの形で気持ちがつながっていく。本当にワクワクするし、ありがたいことです。

 20年振りに「音楽」が縁で再会した元社員さんとも、「音楽」を通してまた新たなつながりが広がっていったら嬉しいなぁと思います。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録が決定したようですね。色々あったみたいですが、まずはよかったです。
 この「明治日本の産業革命遺産」の一つが熊本県の宇土半島の突端にある「三角西港」です。ここは私も天草旅行の行き帰りなどによく立ち寄る所で、レトロで落ち着いた雰囲気が好きです。だいぶ前になりますが、このコラムでもそこのカフェレストランでちょこっとピアノを弾かせてもらったエピソードを書いたことがありました。

 →バックナンバー第59回「ここで弾くべきか?弾かざるべきか?」
   バックナンバー第60回「ハマリ過ぎ?」

 またそのうちに足を運んでみたいと思います。
 
−an 弾手−


第554回 「ライブ席で盗んじゃった?ペンタトニックアドリブネタ」 [2015.7.14]
 「おっ、店内の様子が随分変わってる!」
 久しぶりに足を運んだそのお店、「ライブ席がリニューアルされたらしいですよ」という話は聞いていたんですが。ステージ上の左3分の1位までテーブルとイスが並んでいて、一瞬、「どこに掛けたらいいんだろう?」と思ってしまいました。
 そのステージ上の席に今日出演のピアニストとそのマネージャー、そしてヴォーカリストさん。目が合います。
 「こんばんは! …えっと〜、どこに掛けたらいいんですかね?」
 私が一瞬戸惑っていると
 「こっちに掛けてくださいよ。近くがいいでしょ」とマネージャーさんが言ってくれました。

 その店、ライブハウスとクラブの中間位の感じ? ステージの側(店内の3分の1程)がライブ席、その後ろがソファーの並んだラウンジ席で、そちらは女性(ホステスさん)が隣に座って接客をしてくれます。通常のラウンジやクラブでもピアノがあって生演奏をやったりしていますが、ここはそれにもう少しライブハウスっぽい要素を加えた感じでしょうか。
 もっとも、ライブ席と、女性が付くラウンジ席ではチャージ料金がかなり違うので、私はライブ席にしか掛けたことはないですが(笑)。

 やがて、ジャズピアノのソロからステージが始まりました。いつもながら、オシャレなジャズサウンドが流れていきます。実は掛けている席はステージの左側で、以前はグランドピアノがあったあたり。ピアノはステージの中央付近に移動しているので、ピアニストのすぐ斜め後ろの位置からピアノの鍵盤やピアニストの手の動きがよく見えます。ピアノの演奏そのものに関心がある人間にとってはベストポジションですね。私もついつい目はピアニストの指の動きにくぎ付けです。「何か盗めないものか」って。
 ま、本格的なプロのジャズ演奏を傍から眺めてすぐに何か盗めるほど甘くはないですけどね。

 ところが、です。一曲目の最後、「あっ、これってマネできそう!」というのがあったんですよ! ま、自分でもよく使っているペンタトニックだったので分かったのでしょうが。
 ペンタトニックとは、前々回、第552回「モンゴルの草原を駆け抜ける風と共に〜馬頭琴コンサート」の中でも触れましたが、いわゆる「ドレミファソラシド」の「ファ」と「シ」を抜いた音階(スケール)。ジャズでもよく使われる音階です。その中でも、ピアノならではの簡単に使えるテクニックとして「黒鍵だけを弾く」というのがあります。黒鍵だけを弾くと、自動的にKey=F♯(又はG♭)のペンタトニック・スケールになって、左手右手、どんなに適当に弾いても勝手に何かオシャレなフレーズに聴こえてしまうんですよね。その日私が目撃(?)したそのピアニストの演奏では、曲のエンディングの最後によくある、パラパラパラ〜ッと上がっていって終り、という所。ここで右手の親指と小指をオクターブに開いて微妙にずらしたタイミングで、チャラッ、チャラッ、チャラッと黒鍵だけを順番に弾き上がっていくという演奏でした。
 なるほど、黒鍵だけのペンタトニックは知っていても、自分は曲のこういう所でこういう使い方をしてなかったなぁ、と気付かされたのでした。

 翌日、自宅でさっそく試してみました。どんなKeyでも合うという訳ではありませんが、大抵の曲では最後のその部分が一瞬転調した感じになって、ちょっとオシャレにまとまりそうです。これから、ちょっとしたアドリブネタのひとつとして自分の演奏にも応用していけそうかな、と思いました。

 そんな収穫もあった、その日のライブ席でした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 まだまだ梅雨空が続く毎日ですが、たまに雨が上がると真っ青な空に入道雲が出ていることがあって、夏が近いなぁ、という気になります。そんな夏空に似合う花、といったら「ひまわり」でしょうか。照り付ける太陽を思わせるような姿が真夏の青空にピッタリな気がします。
 ところで今日7月14日は「ひまわりの日」だそうですね。1977年7月14日、日本初の静止気象衛星ひまわり1号が打ち上げられたのを記念して制定されたらしい。 つい先日、その最新型ひまわり8号の運用が開始されて台風の雲の動きも更にリアルに観測できるようになったそうです。そんな中、台風11号が今週後半に日本に接近するようで、ひまわり8号からの映像がよくテレビで流れてますね。
 日本への影響が少ないことを願っています。
 
−an 弾手−


第555回 「木漏れ日のささやき」 [2015.7.21]
 その日、私は森の中を歩いていました。目の前の地面に、木漏れ日がたくさんの模様を描いています。見上げると、梢からキラキラとこぼれてくる光。シルエットのように続く木立の向こうには、もう一つの明るい世界が開けて見えます。

 ここは私が時々足を運ぶ熊本市近郊の小さな里山。外から見ると何ともない森ですが、一歩中に入るとメルヘンの世界が広がっています。休日の午後、時間がある時はちょくちょくここに来るのが楽しみです。

 そこでの楽しみの一つが、光が創り出す世界、というか光と影のコントラスト。森の中の木々の暗い影が、明るい光に照らされた木の葉や地面や遠くの風景をことさら輝くように見せてくれるんですよね。

 で、ここで突然こじつけピアノネタに飛びますが(笑)。
 これ、音楽(自分の場合はピアノ)でもおんなじかなぁと思うんです。延々とバリバリ弾き続けてもうるさいし、ずっと暗くても重苦しいし。響きにしろ大きさにしろ、やっぱり「コントラスト」が大切だよね〜と。
 プロのジャズピアニストの演奏を聴く機会がよくあるのですが、一口にジャズと言っても(むしろクラシックより)ピアニストによって演奏スタイルが非常に違うような気がします。もちろんプロですからどの人もそれぞれに凄い技術と個性があって尊敬するのですが、ただ、聴いていてどうしても私の個人的な好みも出てきます。

 先日、ライブを聴いていて「いいなぁ」と改めて思ったピアニストがいました。どんなところが「いいなぁ」と思ったのかというと、まさに「絶妙なコントラスト」です。特にジャズの場合、アドリブフレーズなどを延々と同じような雰囲気で弾き続ける人が多い気がするのですが、そのピアニストはコントラストが絶妙でした。わずか数小節の中でもグワッと弾くところと微妙に息を潜めるところとキラキラっと輝くところがあって、ピアノという機械を使って音を出しているのではなく、まさに肉声で語り掛けてくるような空気感があり、ゾクッとしました。
 ああ、細かいテクニックはマネできなくても、この空気感は何とかマネしてみたいなぁ、と思ったものです。それ以来、自分で弾いてみる時も、いつもその空気感、絶妙なコントラストを意識するようになりました。

 そして、その絶妙なコントラストを意識する時、イメージに浮かんでくるのが、あの木漏れ日の森です。光と影が織りなすメルヘンの世界。暗いシルエットの向こうに一段と輝いて見える光の国。そんな空間を歩いていると、どこからともなく聴こえてくるピアノの調べ。

 なかなか難しいですが、そんな妄想に浸ってみたいと思います。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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ちょっと、ひと言。
 ふと気が付いたら、今回のコラム、第555回でした! 5のゾロ目? Go!Go!Go!って、やけに威勢がいいですね(笑)
 思えば、第1回が2002年8月でしたので、あとひと月で満13年になるんですね。長かったような、あっという間だったような。これもひとえに、いつも読んで下さっている皆さまのお蔭です。心から感謝申し上げます。
 以前は掲示板があってそこに全国の方から書き込みを頂いていましたが、スパム書き込みがあまりにも多くなったので、このところ掲示板は閉じています。それでもan弾手のメルアドには全国の読者の方からよくメールを頂いて、交流させて頂いています。そんな皆さまからの声が、これまでこのコラムを続けてこれた大きなエネルギーになっているような気がします。
 これからもボチボチ続けていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 
−an 弾手−


第556回 「夜の絵本カーニバル・朗読と音楽の夕べ」その@ [2015.7.28]
 実はここ、ちょっとした思い出の場所なんです。
 床から天井まで全面ガラス張りの向こうに広がる緑。室内は大きな丸太の柱兼梁が伸びていて大空間を作っています。その日、熊本市内から車で約1時間半、クネクネした山道を走って清和高原の清和物産館四季のふるさとにやって来たのでした。
 思い出、というのは、この空間でこれまで何度かan弾手のピアノ演奏をさせて頂いたことがあったので。

 その日は自分の演奏ではなく、私が尊敬する音楽家・ピアニストの志娥慶香(しがけいこ)さんのピアノと矢部絹子さんの朗読による、夜の絵本カーニバル「朗読と音楽の夕べ」を聴きに来たのでした。
 矢部絹子さんは元テレビ局のアナウンサーで現在は朗読活動を続けておられ、これまで私もラジオ番組や朗読会などで何度も聴かせて頂いたことがあります。志娥慶香さんはこのコラムでも既に何度もご紹介していますが、バークリー音楽大学の映画音楽科卒業で、映画音楽の制作をはじめ、様々な舞台パフォーマンスなどで自らも演奏活動を続けておられます。その日も東京で現在制作中の映画のスタッフ試写会に参加して昼の飛行機で熊本空港に飛び、そのままここ清和高原に駆けつけて来られたようでした。

 前置きが長くなってしまいましたが。
 矢部絹子さんの短いエッセーの朗読に続いて、その日のメイン、宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」が始まりました。矢部絹子さんの朗読に志娥慶香さんのピアノが重なって、目の前に情景が浮かんできます。
 情景と言えば、朗読が始まる前に志娥慶香さんからこんな話がありました。
 「朗読にあわせてピアノを弾くというのは、映画音楽の制作と似ている所があります。でも、似ている所があるということは、違う所もあるということです。映画は映像がありますが朗読には映像がありません。声と音楽、全て耳から入ってくる情報です。そこからどんな映像を作っていくか、ということです」
 みたいなこと、だったかな?
 耳に入ってくる情報から広がる映像の世界。私はいつの間にか、主人公のゴーシュが、夜な夜な部屋にやって来る猫や鳥やネズミや様々な動物達とバトルを繰り返しながら、セロ(チェロ)の演奏技術を高めていく宮沢賢治の世界に入り込んでいました。

 私は聴きながら、ふと自分のライブの事も考えていました。まだ試行を始めたばかりですが、自分のライブではピアノの演奏を聴いてもらうだけでなく、そこに語りを入れながらひとつの物語を作っていけたらなぁ、という夢を持っているんです。
 そんな気持ちで聴いていたら。構成のためのヒント、いっぱいありました! 話の中に出てくる具体的な音のイメージ(例えばチェロの演奏シーン)の部分での演奏、そして具体的な音の話ではないが、その場面や場面転換の雰囲気を際立たせるための音の使い分けとか。
 それともう一つ、聴きながらふと思ったことがありました。それは朗読とピアノの組み合わせに限ったことではないんですが。朗読や演奏における手段と目的?みたいなこと、かな?

 ちょっと話が長くなりそうなので、この続きはまた次回(来週)に!



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ちょっと、ひと言。
 今週で7月も終わりだなんて!信じられませんが。それに熊本(九州北部地方)は確かまだ梅雨明けしてないんですよね?
 それでも朝からセミの大合唱が聞こえています。セミと言えば、近年は夏の初めからツクツクボウシが鳴いているのが不思議です。子どもの頃は8月のお盆も過ぎてツクツクボウシの声が聞こえ始めると「ああ、もう夏休みもあと少しだなぁ」と、暑い中にも秋の足音を感じたものですが。皆さまのところではいかがでしょうか?
 まだこれからやっと梅雨が明けて夏本番。既に猛暑が続いていますが、皆さまどうか熱中症にはお気を付け下さい。
 
−an 弾手−


第557回 「夜の絵本カーニバル・朗読と音楽の夕べ」そのA [2015.8.4]
 清和高原の「四季のふるさと」。全面ガラス張りの向こうに広がる緑に包まれながら、「夜の絵本カーニバル・朗読と音楽の夕べ」が始まりました。
 矢部絹子さんの朗読と志娥慶香(しがけいこ)さんのピアノで綴る宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」の世界。
 今回のコラムは前回(第556回)からの続きです。

 聴きながら、自分の語りライブのヒントになりそうな気付きもたくさんありました。
 例えば、話の中に出てくる具体的な音のイメージ(例えばチェロの演奏シーン)の部分での演奏とか、あるいは具体的な音の話ではないが、その場面や場面転換の雰囲気を際立たせるための音の使い分けとか。
 それともう一つ、聴きながらふと思ったこと。それは朗読とピアノの組み合わせに限ったことではないんですが。朗読や演奏における手段と目的?みたいなこと、かな?

 私はちゃんとしたジャズセッションの技術も知識も乏しくて、自分ではなかなかやれないんですが、それでも聴く機会はよくあります。そんな時、すごい超絶技巧で演奏するピアニストを見て「凄いなぁ!」と感心するのですが、何となく違和感を感じることもあります。ま、もちろん自分が出来ないから、という根本的な理由はとりあえず横に置いておくとして。

 どうしてもアドリブを回していくパフォーマンスに目が奪われて、その演奏、音楽で伝えようとしている中身がよく見えないことがあるというか。同じことは朗読でも。プロの朗読を聞く機会もよくあるんですが、いかにも朗読っぽい?語り口に何となく違和感を感じることもあったんです。それがその日、矢部絹子さんの朗読と志娥慶香さんのピアノを聴いていて「そうか、こういうのを聴きたかったんだ!」と腑に落ちるところがありました。

 矢部絹子さんの朗読の自然なこと!「私、朗読やってます!」というパフォーマンスじゃなくて、自然にスーッと物語の世界が心に入ってきました。志娥慶香さんのピアノも、パラパラパラッという超絶技巧(?)的な部分も全くパフォーマンス臭がなく、ごく自然にストーリーや曲の世界を語る表現として聴こえてきました。最初に書きました「手段と目的」。「朗読」も「演奏」も手段であってそれ自体が目的ではないはず。「読むの上手でしょ」「弾くの上手でしょ」ではなく、聴き手の中にいかに物語や音楽の世界そのものを伝え広げることが出来るか。「技」を「技」と感じさせない「技」。それがやっぱり「プロの技」なんだなぁと、改めて気付かされたのでした。

 だから?って言われそうですが(笑)
 そんなプロの技をすぐマネすることは出来なくても、そういうことなんだ、と意識するだけでも自分の演奏の何かのヒントになればいいなぁと思います。

 気が付くと、さっきまで一面の緑だったガラスの外は真っ暗な闇。室内に灯された温かな間接照明の光が、優しくあたりを包んでいました。



(続く→原則毎週火曜日更新)

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ちょっと、ひと言。
 いやぁ、毎日暑いのなんの! 夏ってこんなに暑かったでしたっけ?
 それに8月に入ったかと思ったら、もう来週はお盆なんですね。早っ!
 という訳で、私、来週はちょっと早目の夏休みを頂きます〜。という訳で、来週11日(火)はこのコラム更新はお休みです。次回は18日、8月もいきなり後半って感じになりそうです。
 皆さま、この後も熱中症に気を付けながら暑い夏を乗り切っていきましょう!
 
−an 弾手−


第558回 「an弾手の本、改訂新刊発売!」 [2015.8.18]
 皆さま、今月an弾手の新刊が発売になります〜! と言っても、以前の本の改訂新刊ですが。

 an弾手の最初の本が初めて世に出たのは2004年10月、「お父さんのためのピアノ教室・目からウロコのピアノ速習法」(ドレミ楽譜出版社)でした。それから足掛け11年、お陰さまで国内はもとより海外在住の方からもたくさんの反響を頂き、これまでに17刷を重ねるロングセラーとなりました。心から感謝申し上げます。

 私自身が大人になってから我流でピアノを始め、最初はクラシックの楽譜丸暗記奏法に挑戦するも挫折。その後コード奏法に出会って、拙いながらも「自分の気持ちでピアノが鳴ってくれる喜び」に目覚めた「目からウロコ」の体験から、このコラムを書き始めたのが2002年8月でした。今月でちょうど13年になるんですね。「お父さんのためのピアノ教室・目からウロコのピアノ速習法」は、そんな自分の思いや体験、ノウハウが一杯詰まった初心者大人向けのピアノ教則本です。
 あ、「お父さんのための〜」ってなっていますが、お母さんでもお姉さんでもお兄さんでも、もちろんおじいさん、おばあさんでも大丈夫ですよ! 実際、60代70代でピアノを始めてすっかりはまってしまった、という読者の方もいらっしゃいます。
 そんな記念すべき私のデビュー本(?)も初版から11年経ち、多少、時代に合わない表現等も出てきたかなという事で、この度ドレミ楽譜出版社さまから改訂新刊の発売というお話を頂いたのでした。

 内容は、言葉の言い回しや表現等を多少改筆したものの、基本的にはほとんど変わりありませんが、表紙のデザインは従来のイメージを残しつつも色使いが多少変わっています。そして奥付には「発行日:2015年8月30日初版発行」と書かれており、気分一新、また新たに生まれ変わった気分です。
 そして今日、8月18日にはお店への配本が始まり、20日には全国の楽器店、大型書店などの楽譜コーナーに並ぶ予定だそうです。

 皆さま、店頭で見掛けられましたら、ぜひ手に取ってご覧ください! 8月20日を過ぎてもお近くの店頭に見当たらなかったら、お店の人に「ドレミ楽譜のお父さんのためのピアノ教室っていう新刊、入ってませんか?」とひと声掛けて頂けたら超嬉しゅうございます〜(笑)
 また、お知り合いや身近な方にも口コミ広げてもらえたら光栄です〜!

 ●書名:お父さんのためのピアノ教室
 ●編著者:an弾手
 ●版型:菊倍版(228×303)
 ●ページ数:96P
 ●ISBNコード:978-4-285-14351-5
 ●出版社:ドレミ楽譜出版社
 ●発行日:2015年8月30日初版発行
 ●定価:¥1,728(税込)

 最後に、ドレミ楽譜出版社HPの本書の紹介ページから、紹介文を引用してみます。

 【40代でピアノを始めた著者自らの体験と同じように、大人になってピアノを始めたい“おじさんピアニスト”のためのコード奏法の教本です。著者によるWEBサイト連載コラムや著者へのメール質問などで、間接的に購入者同士の情報交換も可能な、従来のピアノ教本とは一味違った内容です】

※「お父さんのためのピアノ教室」新刊表紙イメージはこちら(→クリック)



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ちょっと、ひと言。
 残暑お見舞い申し上げます。お盆も過ぎましたが、まだまだ暑い日が続いているようですね。皆さま、体調管理にはお気を付け下さい。
 私は、母の初盆を済ませてから阿蘇まで家族旅行に行ってきました。途中、最近話題になっている「天空の道」(ラピュタの道?)とやらに寄ってみました。阿蘇北外輪山の一角、阿蘇谷に突き出る切り立った狭い尾根の上を小さな道がうねるように続いているのが、確かに天空に続く道の様にも見えます。阿蘇谷が雲海で埋まる時は、まさに雲の上の道にも見えるでしょうね(私が行った時は雲海はなかったですが)。
 お盆ということもあり、天空に続く道は何か象徴的な感じもしました。
 
−an 弾手−


第559回 「『秋から冬へ。遠い記憶の旅』an弾手ライブのお知らせ」 [2015.8.26]
 残暑厳しき今日この頃、「秋」とか「冬」とか言われてもまだピンとこないよね〜、ってお思いでしょうが(笑)。
 はい、まだまだ実感が湧きませんが、an弾手ライブの予定が決まりましたのでお知らせします〜!
 an弾手ピアノライブ Sweet Piano Night 「秋から冬へ。遠い記憶の旅」、開催します〜。

 an弾手Sweet Piano Nightシリーズ、今度で3回目となります。an弾手セルフプロデュースライブとしての第1回は去年の3月27日、「癒しのピアノサウンドでSweetな夜を」というテーマで春の叙情歌と洋楽スタンダードを中心にお送りしました。第2回目は去年の7月31日、この時は夏の抒情歌や洋楽スタンダードを中心に、多少ストーリー性を持たせた構成にチャレンジして都浩子さんの語りを織り交ぜてみました。
 そして第3回目となる今回は、そのストーリー性をもう少し深化させてみようかと思っています。テーマは「秋から冬へ。遠い記憶の旅」。自分自身の若い頃や幼い頃の記憶を辿りながら、語りとピアノサウンドで皆さまと一緒に「秋」「冬」の懐かしい物語の世界へ旅できれば、と思います。

 今回は、新しい試みとして都浩子さんによる夏目漱石「夢十夜」の朗読とan弾手即興ピアノとのコラボ、さらに福田満美さんのオカリナも登場します。オカリナとピアノのDUOは、以前から私がずっと思い描いていたことでした。今回、やっとそれが実現しそうです。

 セルフプロデュースライブって、そうなかなか計画出来る訳でもありませんが、毎回、少しずつでも深化させていければなぁと思います。

 シナリオの構成や演奏曲の選曲等、やっと大枠が見えてきた段階で、これから具体的に詰めていきます。曲のアレンジや肝心の自分自身のピアノ練習もまだまだこれからです〜(笑)
ちょうどあと3ヵ月、頑張ります!

 熊本近隣の皆さま(あるいは丁度その頃熊本に行くついでがあるよ、という皆さま:笑)、ご都合付くようでしたら、予定表にチェック入れておいていただけたら嬉しいです。

●タイトル an弾手ライブ「Sweet Piano Night」
「秋から冬へ。遠い記憶の旅」
●日  時 2015年11月27日(金)
19:30開場 20:30開演
●会  場 LIVE&DINING BAR「酔ing」(Swing)
熊本市中央区花畑町10−10 中山ビル2F(銀杏北通り・喫茶アロー隣り)
TEL 096−356−2052
●出  演 an弾手(ピアノ)
スペシャルゲスト・都浩子(朗読)、福田満美(オカリナ)
●Charge 700円(要ワンドリンクオーダー、軽食も出来ます)

予約チケット等はありません。当日お店へ直接おいで下さい。
  ただ、ご来場人数把握のため、ご来場予定の方は事前に私宛にご連絡頂けると助かります。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

■Q&Aコーナーのご質問を募集しています。
 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 本来はこのコラム毎週火曜日更新なのですが、昨日8月25日(火)は台風15号の直撃で会社お休み。おかげでこのコラムのアップも一日遅れの今日になってしまいました。
 皆さまの所は台風の影響はどうでしたか?被害に遭われた方には心からお見舞い申し上げます。
 私の所(熊本市)は、25日未明(朝6時前後)が最も激しく、激しい音と共に時々家が揺れて怖かったです。幸い大した被害は無かったですが、夜が明けてから庭に出てみると、隣の畑一面に育っている大豆の緑色の葉が風にあおられてすっかり北の方に首をかしげていました。
 
−an 弾手−


第560回 「王侯貴族風の空間で聴くボサノバのひと時。晩夏のアフタヌーン」 [2015.9.1]
 「えっと……。住所ではこの辺りなんだけどなぁ。まわりは住宅ばっかりでライブやるような施設なんて見当たらないんだけど……」

 その日、お昼の2時からのライブの案内を頂いて住所を頼りに来てみたのですが。辺りは閑静な住宅地。どこだろう。まわりを見回しながら車をノロノロ走らせていたら……。
 ありました! 『Dolce駐車場』って、住宅地の中の小さな空き地に標識が。
 あ、今車を停めようとしている男性は夜のライブの店でよく会う人だ。うん、ここで間違いなさそう。
 自分もやっと車を停めてドアから出たら、別の車から降りてきた女性二人連れ。「あら、こんにちは!」こちらも顔見知りだった。
 「ところで、会場はどこなんですか?」
 「ああ、こっちですよ」
 って訳で、住宅の角を一つ曲がった所へ案内してくれました。
 え〜っ? 何だか超高級マンションの入口って感じ。シックでオシャレな建物にゴージャスな門。中庭風の通路の先から2階へ上がっていきます。廊下の先の入り口に受付の人が立っていました。
 入った部屋は数十畳?ありそうな木のフローリング。濃いエンジ色のカーテン。正面にはスポットライトに照らされた大きな静物のレリーフの額が掛かっています。
 そしてそこに鎮座しているマホガニーの木目のグランドピアノ。譜面立ての裏には装飾が施され、足は猫脚。
 中世ヨーロッパ貴族のパーティー会場?って感じでしょうか。

 椅子に掛けてウェルカムドリンクを飲みながら、さっきの知り合いの男性と話をしていたら、もう一人知り合いの男性が入って来て、同じテーブルに3人掛け。
 「ここって一体何なんですか?マンションの一室?」って私が聞いたら、
 「いえ、マンションじゃなくてこの建物全部がある会社の社長さんの住まいだったらしいですよ」
 「ひぇ〜! この建物全部が個人宅!?」と驚いてしまいました。

 すみません、今回のコラム、豪華住宅の話がテーマじゃないんですが(笑)。
 イベントホールとして貸し出されているらしいこのオシャレな空間、たまにはこんな場所でのライブもいいなぁ。そんなことを思っていたら、隣の男性から
 「どうですか?an弾手さんもここでライブとか?」
 な〜んて言われてしまった。
 その日のライブは、(Gt) (Vo) 島田ッ宏、(Pf) 渡久山ヒロシ、(Vo) 松本けい子による「アフタヌーンボサノバライブ」。
 『夏の終わりに涼し気で楽しい音楽の空間をお届けできればと思っていますので、ご都合よろしければ遊びにいらして下さいませ』というご案内を頂いたのでした。

 3ヵ月後に自分のライブの予定も控えているので、他の人のライブの中身は気になります。音楽演奏そのものより全体の構成やMCの内容が。今回は主にVoの松本けい子さんが、ボサノバが生まれたブラジルの風土や曲の意味、背景などを語りながらライブは進んでいきます。フムフム……、とても参考になりました。自分のライブのテーマは「秋から冬へ。遠い記憶の旅」。構成、シナリオ、しっかり詰めていかなければ。

 それにしても、この王侯貴族風の空間で聴くボサノバのひと時。なんとも贅沢な晩夏のアフタヌーンでした。



(続く→原則毎週火曜日更新)

an弾手(andante)

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 随時、このコラムの中で取り上げてみようと思います。このコラムはコード奏法超初心者から中級の入口位の方を想定していますので、その範囲ならどんな内容でも結構です。メールお待ちしています!
piano-roman@kumamoto-bunkanokaze.com

ちょっと、ひと言。
 あっという間にもう9月。今日1日は二百十日で防災の日、ですね。
 防災といえば、ちょうど1週間前は西日本を台風15号が直撃でした。被害を受けられた方には心よりお見舞い申し上げます。
 我が家は大した被害は無かったのですが、その後あちこちで大きな木が倒れたりしている話が入ってきます。先日、久し振りに自宅近くの飯高山に行ってみたら、森の中は至る所に倒木や折れた枝が散乱して惨憺たる状況でした。既に遊歩道の清掃や一部の倒木の片づけ作業が始まっている様でしたが、自然の再生力も信じつつ、一刻も早く元のような美しい森に生まれ変わるのを祈っています。
 
−an 弾手−
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